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2010年9月19日

1669 糖尿病網膜症の硝子体手術前に透析のへパリンをフサンに変えるとは?

新潟の先生のメーリングリストで、秋の臨床眼科学会の準備のアンケートが送られてきました。その中に、透析医に糖尿病の人工透析に使っている凝固阻害剤のフサンをへパリンに戻してよいか?と問われたらどう答える?という質問が含まれていました。

医科歯科大学にいたころ、網膜硝子体の専門医が凝固阻止剤をフサンに変えてもらって、手術に臨むという話をしていたのは覚えているのですが、半減期がなんだかと言っていたような気もするのですが、さてこれはどういうお話なのでしょうか?(本文最後に安藤先生のお答えが有ります。)

まずフサンはプロテアーゼの働きを抑制する薬であり、この働きでへパリンとは別のステップで凝血を抑えるということのようです。

このフサンはヘパリンと違い、半減期が非常に短いため体内の凝固環境にほとんど影響しない。このため透析患者でも出血の合併症がより少なくてすむ可能性がある、との記載が有りました。(値段はへパリンよりは少し高いか?)

 としますと、以前大学で聞いた話は眼内に出血しやすい状態の糖尿病網膜症では手術の前後にへパリンをフサンに変えておいてもらうというのが理解できました。さて、手術時期にこだわらずに、糖尿病網膜症では人工透析の凝固阻害剤に恒常的にフサンを使うことが有るのでしょうか?

 この答えはまだ私にも解りませんので、また大学に行ったときに網膜硝子体専門の医師に現在のコンセプトを聞いてみて、あるいは安藤先生に伺って近日中にこの記事を改定したいと思います。

ーーフサンの解りやすい説明の引用ーーー
フサン
(メシル酸ナファモスタット)

 体の中では酵素というタンパク質が、いろいろな場面で活躍しています。酵素は、体の中での化学反応を手助けして、すみやかに目的の物質を生成させます。また、酵素によっては、他のタンパク質の形を変えたり壊したりすることもあります。このような酵素の代表が、プロテアーゼです。

プロテアーゼとは、「タンパク質を切断する酵素」のことです。タンパク質を切断するというのはイメージしにくいかもしれないので説明します。タンパク質の構造は、沢山のアミノ酸が1列につながったひものように考えることが出来ます。そして、プロテアーゼは、タンパク質の中にある特定のアミノ酸のところでタンパク質のひもを切断します。

 タンパク質を切断することは、生きていくために重要な反応です。しかし、一つ間違えると、体にとって非常に危険なものにもなりえます。

今回紹介するフサン(鳥居薬品、主成分メシル酸ナファモスタット、薬価10mg1瓶 = 1573円)は、プロテアーゼの働きを抑制する薬です。
それでは、薬を使ってプロテアーゼの活性の働きを抑えなければならないのはどういう状況なのでしょうか?

ひとつは、膵臓(すいぞう)の炎症、膵炎の場合です。
膵臓からは、トリプシンなどのプロテアーゼが分泌されます。もともとのトリプシンの働きは、胃を通り抜けたタンパク質を切断して、消化管から吸収されやすくすることです。
しかし、原因は不明なのですが、トリプシンが膵臓自身や消化管を構成するタンパク質を消化してしまうことがあります。この状態を膵炎といいます。急性膵炎は、非常に危険な病態で、臓器の消化が進み、適切な処置がされないと死亡に至ることもあります。

そこで、トリプシンの作用を抑制するために、フサンの投与を行う必要があります。

もう一つは、血管の中の血液が急激に固まってしまう場合です。
血液は、体外にでると自然に固まりますが(血液凝固)、この働きには血液凝固因子というプロテアーゼが大きく関与しています。血液が凝固するためには、さまざまなタンパク質の反応が関与しますが、その反応のスイッチとなっているのが、血液凝固因子です。プロテアーゼの働きにより、血液凝固因子が他の血液凝固因子を切断すると、それがきっかけとなって、つぎのプロセスに進んでいくのです。

出血をした時には、血を止めなくてはいけないので、血液凝固が非常に大事になります。しかし、原因がよくわからないのですが、出血がなくてもプロテアーゼのスイッチが入ることがあります。この状態では、血液が固まってしまうことがあります。全身の血管内に固まりが出来て詰まると、そこからに血液がいきわたらず、非常に危険な状態となります。

そこで、血液凝固因子の働きを抑え、血液凝固のプロセスを止めるためにフサンの投与を行うことになります。

フサンは膵炎と血液凝固という一見全く異なる病気に使用されますが、その理由は病気にプロテアーゼと言う共通の酵素が関与しているからです。もしかすると、他にもプロテアーゼが関係する病気がでてきて、フサンがまた違う使われ方がされるかもしれませんね
ーーー引用終了ーーーー
次に、
ーーへパリンとフサンの話の引用開始ーー
5.2 フサンを用いた抗凝固
フサンはヘパリンと違い、半減期が非常に短いためローディングドースがいらず、また体内の凝固環境にほとんど影響しない。このため出血の合併症がより少なくてすむ可能性がある。

これを用いる場合は、体外循環開始と同時にメシル酸ナファモスタットを1時間あたり20 mg~40 mgの速度で持続注入する。

具体的には5%のグルコース溶液20 mlにメシル酸ナファモスタット120 mgを溶解し、これを体外循環開始と同時に、脱血カテーテルの側管からから3.5 ml~6.5 ml/hの速度(通常1時間あたり5.0 ml)で持続注入する。

実際に使う場合は、V-V ECMOの返血ラインから採血し、ACTで180~200秒前後を目標にフサンの投与量を調節する。

フサンは生食と混合すると凝固するので注意。
ーーー引用終了ーー
というようなことのようです。

早速安藤先生から正解をご返事で戴きました。
ーーーーーー
清澤源弘先生

 安藤@新潟です

 透析患者の手術時にへパリンをフサンに変更するのは、
 ご指摘の通り、術中術後の出血を防止するためです。
 ただし術後、フサンをへパリンに代えるのは、経済的理由が一番のようです。
 
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 透析時には、動静脈をシャントして体外循環を利用します。
 この時に怖い合併症は、体外循環回路内で血液凝固による閉塞が生じることです。
 それを防止する目的で、透析時には抗血液凝固薬が用いられます。
 通常は、安価であるためヘパリンがよく用いられます。
 ただし、出血傾向ある方や手術時などでは、半減期の短いフサンが用いられます。
 フサンを用いると体外循環回路内での血液凝固を抑え、
 かつ体内循環に戻ってきた時には、出血に対処することが可能になります。
 ただしフサンは高価であるため、特にDPCを採用している病院では採算的に不都合となります。
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なるほどね。キーワードはDPCですか。

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