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2010年9月5日

1646 アッラーの花嫁たち を読みました。

アッラーの花嫁たち
アッラーの花嫁たち を読みました

タイトル: アッラーの花嫁たち
著者: ユリヤ・ユージック (山咲 華・訳)
出版社: WAVE出版

清澤のコメント:  
イスラム圏では女性による自爆テロリズムがしばしば報じられていますが、ロシアの女性ジャーナリストがこのような女性テロリストの跡を訪ね、彼女らはどのような経緯でそのテロ行為をしたのか?を聞きだしてゆきます。

著者は少なくもチェチェンやイスラム側ではなく、ロシア側の女性ジャーナリストです。しかし、ロシアではこの本も出版を差し止められたということです。
 
この本の中核をなすのは2002年モスクワで劇場が占拠され1000人近い市民が人質とされたノルド・オスト事件です。バーブ教(注)と呼ばれるイスラム教の急進派が、不幸な過去を持つチェチェンの少女や未亡人をとりこんでゆき、逃げられないようにしながらテロ行為に送り込むという、目的のためには手段を選ばないやり方で、自分と他人の死へと突入させられてゆく様の謎を解き明かしてゆきます。

このテロリストと特殊部隊の激突は、ロシアのチェチェンへの内政干渉に抗議した行為を発端としたものでは有るのですが、ロシア政府の鎮圧はいかにも強圧的で、犯人ばかりではなく人質の市民からも多数の死者を出します。

著者は、事件後に犯人の女性たちを知る人々を元の住所に次々と訪ねるのですが、明らかになったのは、アッラーの名で劇場の占拠をした女シャヒード(女戦士)たちは、意外にもあそこで死ぬつもりではなかったという驚くべき事実でした。彼女らはリスクはあるが、帰りのバスの切符も渡されて10日後には親の待つ家に帰れるとだまされていたのでした。テロリスト集団は、夫や兄弟などの家族をロシア軍に殺されるなどの不幸な経験をした女性を狙って、帰属できる宗教的集団に加え、逃れられないようにパートナーを与えたりもします。また、貧しい親たちには、支払われることのない代償としての金を約束するという事も行われていました。

だまされて実行犯にされてしまうというのは、類似の事件でリモコン操作による爆弾を捨てて現場を脱出し、生き残ってしまった不幸な少女の話を聞いてわかる話です。この生きてしまった彼女は、”わたしは彼を愛したのに彼はわたしを死に追いやろうとした。”と著者に話します。著者も、この女性には売春婦になるしか残った人生を生きてゆく術はないということを知っています。

   「ノルド・オスト」=北の海。

ショックが強くて、皆さんにお勧めとは言い難い本ですが、一緒に読んだ小学生の娘もそれなりに咀嚼できたようでした。心の強い方はお試しください。

注)
バーブ教 (上の説明との整合は負傷ですがバーブ教の説明も調べてみました)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

バーブ教(بابی ها)は、イランなどに分布したイスラーム教の流れを組む一神教である。1840年代にバーブ(ミールザー・アリー・モハンマド)によりイランで十二イマーム派シーア派の一派シャイヒー派から起こったが、のちにシャリーア(イスラーム法)の廃止を宣言するなどしたため、一般にはイスラームの枠外とされて1850年代末には徹底的弾圧を受けた。これを逃れた教徒の一部はバハーイー教へと発展する。一方、現在バーブ教を称する一派はアザリー派とも呼ばれ今もイランに残るという。

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