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2010年7月18日

1541 汗腺由来嚢胞治療のアトロピン軟膏による散瞳に御注意

eccrine hidrocystoma 
汗腺由来嚢胞治療のアトロピン軟膏による散瞳に御注意

汗腺由来嚢胞(顔の湿疹様の病気)に付けた軟膏が原因で瞳孔が散大し手近くの文字が見難いと言って患者さんがやってきました。

 調べてみますと、これは薬剤の間違いではなくて、エクリン腺の疾患にアトロピンを処方するという皮膚科の治療が有るようです。それがうっかり眼にも入ってアトロピンに特有な調節麻痺と縮瞳の障害を来たしたものの様です。

ーーー引用(出典)ーーー
Eccrine hidrocystomaの1%硫酸アトロピン眼軟膏外用の試み

村田 朋子 ※1
神田 憲子 ※1
石黒 直子 ※1
川島 眞 ※1

※1 東京女子医科大学皮膚科学教室
【キーワード】 eccrine hidrocystoma,抗コリン作用薬,アトロピン,発汗

Eccrine hidrocystomaの3例に1%硫酸アトロピン眼軟膏の外用を試みたところ,良好な結果を得た.症例は60歳,57歳,79歳のいずれも女性.数年前より両眼囲,頬部,口囲に夏季,発汗時に隆起し,寒冷時に軽快する多発性の小結節を認めるようになった.病理組織学的に真皮浅層から中層に嚢腫を認めた.嚢腫壁は2層から数層のへん平ないし立方形の上皮細胞から構成されていた.以上よりeccrine hidrocystomaと診断し,片側顔面の結節部に1%硫酸アトロピン眼軟膏の1日2回の外用を開始したところ,外用側のみ3~4日後には縮小,へん平化を認め,外用の継続により軽快した状態を維持でき,患者の高い満足度を得た.1例で誤って眼内に軟膏が入り散瞳を認めたが,外用中止のみで2~3日で軽快した.眼科受診でも眼圧の上昇はなかった.そのほか,特に問題なく,患者の外観に対する心理的ストレスの緩和という点で今後考慮すべき治療法と考えた.
ーーー引用終了ーーーー

汗腺由来嚢胞(hidrocystoma)はapocrine hidrocystoma と eccrine hidrocystoma に分類されるが、いずれも水様成分(時に油状)を含み、透明感のあるときに淡青色から褐色の腫瘤を形成する。大きさは1~3mmのものが多い。中年女性の顔面に好発しやすく特に眼囲が多い。発汗しやすい環境下で働く人に多発しやすく、冬期に軽快し夏期に悪化しやすい傾向がある。エクリン汗管末梢部が先天的もしくは後天的に閉塞性しこれに多汗が加わって発生するretention cyst(停滞嚢胞)である。

清澤のコメント:
アトロピンは良く知られたアセチルコリンの拮抗薬。
アトロピンは遠視の子供に眼鏡を処方する場合にも、本当の遠視の程度を調べるために1-2度敢えてつけさせて屈折を調べる検査に使います。この処方をすると、涙小感から吸収されますと全身に効果が表れて風邪を引いたような発熱をしたり、眼に対する直接の効果で当然眼が見えないという訴えをする場合が有りますので、使用が必要な場合にも十分な警告が必要です。

 ぶどう膜炎では毛様体の緊張を止めるために使う事が有りますが、この場合も散瞳と調節麻痺が起きることの警告が必要です。

 結膜に入れば当然散瞳と調節の麻痺が起きますから、眼の周りに付けるのが目的ならば、結膜には入らないような注意を与えることも必要でしょう。今回の様にもし入ってしまったら、軟膏の使用を中止してもらい数日毎にみて、その回復を確認して、患者さんを励ませばよいでしょう。後遺症は基本的には起きないはずです。

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