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2010年4月13日

1371 脳動脈瘤とクモ膜下出血の神経眼科学的側面

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プロ野球巨人軍の木村卓也コーチがクモ膜下出血で他界されました。御存じの方も多いでしょうが、このクモ膜下出血というものはそのほとんどが脳の動脈瘤の破裂を原因としておきます。この動脈瘤というものは意外と厄介なものです。なぜかと言いますと、正常な中年以上の人の脳を調べると5%もの頻度で動脈瘤が見つかってしまうという話があるのです。(記事の詳細を読む)

神経眼科に関連するものとしては視覚路と眼球運動に関連する脳神経が拡張した脳動脈瘤によって障害を受けることが有ります。その場合、神経眼科学的な症状がその唯一の動脈瘤破裂の前兆で有る場合もあります。

動脈瘤の破裂につながる急性或いは慢性の視力低下が見られることが有りますが、この急性または慢性の視力喪失は眼動脈の内頸動脈からの分岐部の動脈瘤、鞍結節上の動脈瘤、内頸動脈の分岐部の動脈瘤、そして前交通動脈あたりの動脈瘤などで起きることもあります。

さらに複視と眼窩深部の痛みは、後交通動脈や脳底動脈それに海綿静脈洞部の動脈瘤の発見につながることが有ります。

ここで一般的な脳動脈瘤に関する記載をおさらいしてみましょう。
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もっともふつうに脳動脈瘤ができる場所は脳底部であり、ウイリス動脈輪と呼ばれる部分です。脳動脈瘤の85%はこの動脈輪の前半部分に発生します。そして内頸動脈とその主要な分枝で有る前大脳動脈か中大脳動脈を巻き込んでいます。

動脈瘤発生の原因:
動脈瘤は先天的な壁の弱さを原因として発生するかもしれません。前からあった高血圧やアテローマ性の動脈硬化(動脈壁に脂肪が沈着したもの)、外傷が関係しているかもしれません。脳動脈瘤は成人では小児よりも頻繁に見られますが、どんな年齢にも見られるものです。女性には男性の倍くらいの頻度で見られます。血圧の上下に伴って、Y字型になった血管の分岐部で股の部分が伸縮を繰り返し、血管壁の弾性線維が損傷されて、そこが膨隆するという説もあります。

症状:
小さくて変化していない動脈瘤はほとんど症状がありません。もしあったとしても、わずかな症状です。大きな動脈瘤が破裂する前には、突発性で非常に強い頭痛を自覚する場合があります。吐き気、視力障害、嘔吐、意識の喪失などを示す場合もありますが、全く無症状のこともあります。

その発症は突然で、何の予告もありません。脳動脈瘤の破裂は危険なものであって、脳の髄膜や脳自体の中への出血を起こします。その結果クモ膜下出血や頭蓋内血腫が起きます。そして、それらが脳卒中の原因となります。

再出血、水頭症 (脳脊髄液の過剰蓄積)、血管攣縮(痙攣ないし機能的に血管が収縮して細くなること)、そして複数の動脈瘤が見られることもあります。

未破裂の動脈瘤が破裂に至る確率は動脈瘤の大きさによって様々ですが、大きいほどその危険は高まります。

すでに存在する動脈瘤が破綻する頻度は全体として年に1.3%とされています。毎年脳の画像診断を行ってスクリーニングをすることは可能ですが、そのコストに見合うかどうかは疑問です。

短期間に動脈瘤が再破裂する確率は最初の3日ほどで急激に減少し、6週でその危険は破裂前の危険率に戻ります。

血管攣縮
脳動脈瘤によるクモ膜下出血の合併症の一つは血管の攣縮です。最初の出血の1から2週間後に脳血管が攣縮を起こすことがります。その結果卒中を起こすことがあります。クモ膜下出血による血管の炎症がその原因であると考えられています。

治療法
クリップを置くことが普通はおこなわれます。破裂した脳動脈瘤への緊急の治療法は弱った呼吸を助けて更新した脳圧を下げることです。現在脳動脈瘤に対する治療法は2つがあります。: 外科的なクリッピングと血管内でコイルを入れる方法があります。破裂の発生後最初の24時間のうちに、再出血を防ぐ意味でこのクリッピングか血管内コイルの設置がおこなわれます。
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清澤のコメント
いくつかの眼科の論文や、米国の信頼できそうなネット情報を渉猟するうちに、木村コーチの悲劇から時間が経ってしまいました。
この小文をまとめてみての感想としては、症状らしきものがあれば、早く医療の場に係るべきである。しかし、脳ドックも結構であるが、全く無症状ならば小さな動脈瘤が偶然に見つかってしまうことも少なからぬひんどで起きますから、不要な心配を残す可能性もあるだろということです。
複視や視力の低下を自覚されましたら早いうちの眼科をご受診下さい。眼科医は必要に応じて脳の画像診断もオーダーするでしょう。しかし、それらの多くは動脈瘤以外の原因によることが多いだろうと思います。

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