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2010年1月7日

1214 臨床ERG、運・鈍・根 の書評(神経眼科26巻4号480-481p)

神経眼科誌に寄稿した私の書いた”臨床ERG、運・鈍・根”への書評です
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臨床ERG、運・鈍・根

臨床ERG、運・鈍・根はmy menories of 40 years ERGsを副題とし、中心に三宅養三先生を、大出尚郎、藤田啓、角田和繁、木村至の各先生を配した勉強会の記録といった体裁で作られた本です。三宅養三先生は名古屋大学を退官する2年前から準備し、退官の5か月後にElectrodiagnosis of Retinal Diseasesを出版されたのだそうです。

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それは三宅教授とその門下の諸先生の40年にわたる臨床電気生理学研究の流れを描き出したエッセイのような本であったということです。その翻訳書ではなく、裏話や学問に対する価値観や人生観などを交えて、座談会形式で本にまとめたのがこの“臨床ERG、運・鈍・根”である、という事がこの本の緒言には記載されています。

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ただ漫然と臨床をこなしていても、興奮を味わう事は出来ないともおっしゃっていますが、それは蓋し名言というべきでしょう。学者としての一生の中に三宅先生はこのような道を見出しています。その謦咳に触れることができた先生方をうらやましく思います。

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さて、本文の原理と方法にはガンツフェルド(全視野)刺激などという網膜電気生理学ならではの言葉の説明がいっぱいです。ISCEV protocolというものが作られる前からの網膜電図の話はとても面白いです。見たいものを見るために測定の方法も各研究者が工夫してデータを出す時代だったのではないでしょうか。

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しかし、共通のリング上で議論をしようとして作られた基準だったのでしょうが、私にはISCEV protocolができてから視覚電気生理は方法論としての自由さを失って、急に生彩を欠くことになったような気もするのですが。

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各論(疾患編)では、網膜色素変性、コロイデレミア、X染色体劣性網膜分離症、ネトルシップファルス X染色体劣性眼白子症などの興味深い疾患が次々に登場します。

完全型および不完全型先天停止性夜盲は三宅先生が最も得意とする疾患ですが、その中に現れるon型とoff型の反応を示す双極細胞の話は何度説かれても難解です。学会でも三宅先生の講演を聞いた瞬間はなんだかわかったような気がするのですが、また分からなくなります。解るべきことを解るように説明されているはずなのに、その話について行き切れない能力の不足に自分が嫌になります。

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白点状網膜炎は私が育った頃の医局の症例検討会では常連だった疾患ですが、最近はあまり話題になることが多くはない疾患になってしまったのではないでしょうか。まずこの話の中で、三宅先生は日本語の病名をころころと変えてはいけないという事をおっしゃっています。

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英語ではfundus albipunctatusでずっと来ているのだそうです。初心者がある疾患や概念を理解しようとする場合、同じものが別の名前で論じられた複数の文献がありますと、どうしても頭が混乱してしまいます。この本のような優れた総説の価値は、全体の流れを単一の文脈の中で論じて理解を可能にすると言うところにあるのでしょう。

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 最近は言葉狩りが進んで、差別的であるとして色盲とか色弱といった言葉は余り見られなくなってしまいましたが、色覚異常を示す各疾患は今も臨床上で非常に重要なテーマです。Blue cone monochromasyや先天第三色盲などにもこの本は多くのページを割いています。

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 スターガルト病についてもこの本はフレック、ダークコロイド、それに黄斑変性の3つが大きな特徴である常染色体劣性の遺伝病であり、hundus flavimaculatusと同一の疾患であると的確な説明を与えています。この辺りを読んでから準備すれば昨年の臨床眼科学会での私の不明愁訴不定愁訴の講演はもっとわかりやすくできただろうにと悔やまれます。

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私たちが医局で育ち始めた1970年代の末には、網膜電気生理とか視覚誘発電位というのは生化学と並ぶ眼科のまさに花形でした。しかし、あの頃あこがれた網膜電気生理の検査が今もきちんと伝えられている教室はいったい幾つくらいあるのでしょうか?

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シングルフラッシュERGでさえも行われたり行われなかったりというのが現状ではないでしょうか?網膜の疾患を診断し、その遺伝子変異を論ずるのは大変結構なのですが、その異同を論ずる手段は網膜の電気生理学的な検査を措いては無いはずなのですが。もちろんそれはこの本の著者達の責任ではないのですが。

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 もしかしたら、網膜の電気生理をあまりよく知らない若い先生が何らかの事情で網膜電気生理のデータを含む発表をしなくてはいけない立場に立たされた時には、一旦この本に戻ってみるとよいのかもしれません。

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もしロッド、コーン、30Hzフリッカーそしてブライトの各タイプのERGがそれなりにとれる環境が大学の外来や研究室にまだ残っていてくれるとよいのですが。
ーーーー引用終了ーーー

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清澤のコメント:雑誌に自分が記載した記事をそのままペーストしてしまいました。
この書評、実は結構苦労して書いたのです。元の本がなかなか難しく、かといって全体を読み通さずに書評は書けずで、何のかんのと半年も遅くなってしまいました。書評の提出を促してくださった神経眼科誌の編集部スタッフに感謝します。2009年の神経眼科誌への私の投稿は4件でした。開業しても学術からはなるべく今後も引退しないでゆきたいと思います。

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今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。

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