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2010年1月5日

1208 緑内障で抗悪性腫瘍薬を使う訳とは

マイトマイシンマイトマイシン2

緑内障は高い眼圧を契機に視野が失われてゆく疾患です。(あまり眼圧が高くはない正常眼圧緑内障のお話はここではお忘れ下さい。)
正常といわれる眼圧は10~20ミリ水銀柱ということになっていて、緑内障治療の要点は、いかに眼圧を最も望ましい眼圧である15以下に下げてやるかということになります。それには点眼などの薬剤を使う方法と、手術を加えて眼圧を下げる方法があります。
最近では点眼薬によいものが多数できたので、手術までが必要な症例は少なくなっています。
しかし、眼圧コントロールが困難な症例というものが存在し、そのような症例では今でも線維柱帯切除術という濾過手術が行われます。
その手術の概要を理解するには眼内の水(これを房水と呼びますが)の流れをまず理解しなくてはなりません。
房水は、虹彩の後ろにある毛様体と呼ばれる筋の表面の細胞層から分泌され、レンズの側面から瞳孔を経て前房と呼ばれる角膜の後面に接する部屋に入って、これが虹彩の周辺部ないし角膜後面の最周辺部にあるシュレム管と呼ばれるリンパ管に吸収されてゆきます。
糖尿病などに見られる血管新生緑内障のような、コントロールの困難な緑内障では、先に述べた房水をシュレム管に吸収させる代わりに直接に眼球の外で結膜の下の間隙に導き出す流出路を手術によって作ってやるという操作が行われます。
この結果、眼内の水(房水)は結膜の下に水溜りを作るように仕立てられます。これが線維柱帯切除術と呼ばれる手術です。
しかし、人間の体というものは、このような水の流出路を塞ごうとする傾向があって、しばらくするとせっかく作った水溜り(このことをブレッブと呼ぶのですが)は消失したがります。それはせっかく作った流出路が結合組織の増殖によって修復されようとするからです。
さてこの組織の修復機転を抑えて、眼圧を手術直後の低い値にしておくにはどうしたらよいのでしょうか?そこで登場するのが抗悪性腫瘍薬である5FU(ファイブ エフ ユー)やマイトマイシンと言った抗悪性腫瘍薬なのです。
これらの薬剤は手術の時に水溜りまでの経路になる胸膜弁の上で結膜の裏に相当する部分にスポンジに湿した形で塗りつけられ、多すぎる量がその部分には残らないように1分ほどたってから多量の水で洗い流されます。それでもごくわずかな量の抗悪性腫瘍薬がその部分に残って組織の修復を送らせて、水の流出路の再閉鎖を止めてくれるのです。
というところが、なぜ緑内障に抗悪性腫瘍薬を使うのか?という質問に対するおおよそのお答えです。大体ご理解いただけたでしょうか?決して緑内障のある部分に癌が発生しているからではありません。
こうして説明しますと、緑内障の濾過手術にマイトマイシンCを使うのには良いことばかりのように聞こえてしまうのですが、実はこの抗悪性腫瘍薬は水の溜まった結膜の袋の壁をも弱くしますから、ごく稀ではありますが、薄い皮のブレッブに感染を起こしてしまうことが有るのです。
私は以前、この濾過泡に感染を起こしてしまった症例を見たことがって、それをブログに記載しています。
それが、2006年05月09日の
92 緑内障手術後眼の濾過胞感染です。(⇒この記事にリンク)

今もこの記事は残っているのですが、しかし古くなったので検索にはかからなくなってしまったようです。

ここに再度復活ということで貼り付けておきましょう。
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マイトマイシンマイトマイシン2

マイトマイシンCはDNAとの複合体を作り細胞の増殖を抑えるので、抗癌剤としても緑内障の手術でも用いられます。(複合体のイメージ図:出典)はじめから病気の眼の図では苦しいのでこの図からはじめましょう。

緑内障手術後の眼における濾過胞の感染(図の出典)
について

burebitis

trabeculectomy
緑内障の治療にはまず点眼薬が用いられ、次には内服薬を加えて、最後に繊維柱帯切除術という手術が行われてきました。
トラベクレクトミー(線維柱帯切除術の概念図:出典にリンク)

最近は、緑内障点眼薬の進歩が著しく、手術にいたる例は比較的少なくなっています。

その手術法は、緑内障が眼球の中の水圧が期待値よりも高くなるものでありますから、眼球の中の水(房水:ぼうすい:と呼びます)を眼球の外の結膜の下に導き出す道を作る手術が行われます。

この中でも、もっとも典型的なものが線維柱帯切除術と呼ばれるものです。

この手術では、出来た水の出口が自然に塞がらないために、ファイブエフユー(5FU)やマイトマイシンC (MMC)などの抗癌剤をしばらく傷口につけて、(この後はよく洗って抗癌剤の残留は最小限にするのですが)、組織の再生を抑えることで、眼圧の再上昇を防ぐ処置が行われています。

この操作の結果、緑内障手術での眼圧降下作用の達成率は大いに上がりましたが、傷口の周りが弱くなるので、手術後の眼にばい菌が入って、眼球に感染が起きる(もっとも分かりやすくいえば“眼球が腐る“)と言う事態が起こる可能性も増してしまいました。

千寿製薬の担当者が、本日、この治療法を述べた日本緑内障学会のセミナーをまとめたパンフレットを持ってきてくださいました。

演者の望月清文先生によると手術後相当期間(5年くらい)たってからの感染が2115眼の線維柱帯切除術に対して53眼におきたそうですので約2.5%に起きていたことになります。

この数字は、世界中のほかの施設でも似たような数字で、驚くべき高い比率です。

(私も大学時代に自分で外来を見て居た患者さんの濾過胞に感染を起こしてしまい、入院してもらって、やっと治療した思い出があります。)

s epi

原因になる細菌は、濾過胞の炎症では表皮ぶどう球菌(図の出典)(45%)、黄色ブドウ球菌(25%)あたりが多く、これが虹彩毛様体の炎症を経て硝子体の炎症になるとこれらの表皮ぶどう球菌(30%)、黄色ブドウ球菌(10%)は比較的少なくなって、連鎖球菌30%や嫌気性菌(30%)あたりが増えてくるということのようです。

硝子体streptococcus

連鎖球菌(図の出典

この発表で注目されるのは予防的な抗菌薬の投与は有害無益だとしている点です。

(私は先の患者さんを経験したあと、予防的な抗菌剤を出してなかったことを一時期悩みましたが、感染予防の目的ならば難しい細菌の感染を作るから抗菌剤は処方しないでおくというのが正解と言うことのようです。)

それではどうするかと言うと、感染の初期を捉えて強い抗菌剤(フルオロキノロン第四世代の抗菌剤:たとえばガチフロ)を十分に集中して使えと言うのが結論でした。

もう一人の講演者の桑山泰明先生は感染の広がりと薬剤投与の手段を簡明にまとめています。

濾過胞の炎症(blebitisブレビティス)ではフルオロキノロン(すなわちガチフロやクラビット)とセフメノキシム(すなわちベストロン)の点眼、夜間のオフロキサシン軟膏に加えてバンコマイシン(すなわち塩酸バンコマイシン)とセフタジジム(すなわちモダシン)の結膜下注射、

ketumakuka

結膜下注射(図の出典、これは別の手術の時の図ですが)
虹彩毛様体の炎症(iridicyclitisイリドサイクライティス)に広がれば、上記点眼や軟膏に加えて、バンコマイシン(すなわち塩酸バンコマイシン)とセフタジジム(すなわちモダシン)の前房内注射

硝子体
硝子体炎の硝子体手術(図の出典

硝子体の炎症(vitritisビトライティス)になると点眼と軟膏に加えてバンコマイシン(すなわち塩酸バンコマイシン)とセフタジジム(すなわちモダシン)の硝子体注射か硝子体切除を勧めています。

(感想:商業が入り込まないようにしたいのは分かりますが、それにしても薬剤名を一般名で記載されると本当に理解しにくいです。緑内障関連の薬の話ではいつもそう感じていますが、一般名から商品名への読み替えが不自由な(不勉強な)人にも分かるように(併記など)してはもらえないものでしょうか?

これは、決して演者への批判ではありません。)

セフタジジムと言われてもぴんと来ず、モダシンといいなおしてみると知識量は何も変わらないのに判ったような気になる私です。)
少し分かりにくい話になってしまいすみません。

緑内障手術後の眼にばい菌が入ったと言う患者さんの関係者が見てくれることもあろうかと思って、この記事をまとめてみました。

参考:第16回日本緑内障学会ランチョンセミナー、濾過胞炎(平成17年9月)パンフレット

今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。

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