お問い合わせ

03-5677-3930初診受付

ブログ

2009年11月11日

1128 タイゲソン表層点状角膜炎 Thygeson’s Superficial Punctate Keratitis

thygeson
隆起性の病変であるためにフルオレッセイン蛍光色素で軽く染まる、多数のやや隆起して不整形の白斑が両眼の角膜表面に散在するという、珍しい形のやや激しい角膜の炎症を見ました。主訴は数日来の両眼の異物感です。どうもこれはタイゲソン表層点状角膜炎と呼ばれるものの様ですので、その解説の要約を記載してみます。参考にしたのはeMedicineのページです。(参考ページ)

spk
これとは別に、点状表層角膜炎(SPK)と言いますと、以前はKSD(keratitis superficialis diffusa)と呼ばれていたもので、コンタクトレンズの使用やドライアイなどに伴って見られる角膜の点状の上皮欠損であって、ヒアレインでも点眼させておけば数日で改善するような最も軽い角膜の障害です。蛍光色素のフルオレッセインで染めるとこのように染まりますが、普通のカラー写真では透明で見えない点がタイゲソンとは違います。タイゲソン表層点状角膜炎と単なる表層点状角膜炎(この文で説明する病変)とは違うものです。

99
ーーーー抄訳ーーーーー
Thygeson Superficial Punctate Keratitis
Author: Robert S Duszak, OD,
Philadelphia Veterans Affairs Medical Center;*1
Jun 17, 2008

背景1
1950年に Phillips Thygeson(*2)が一過性、両眼、荒い角膜表面の混濁を伴い、角膜実質の変化は伴わない表層点状角膜炎の症例報告をしている。今日これがThygeson superficial punctate keratitis (TSPK)と呼ばれている。この疾患は慢性であって、数年から10年も持続する、多発性で、灰白色の角膜上皮内の病変で、実質には変化がありません。 TSPKはHLA-DR3組織抗原に関連があるとされますが、反論もあります。

人工涙液、ステロイド点眼、シクロスポリン点眼、それにソフトコンタクトレンズ装用が、その代表的な治療法ですが、その効果は症例の重篤度により異なります。病気の活性期には軽い視力低下がみられることが有りますが、長期予後はよいです。

100

病態生理学
文献を見てもタイゲソン表層点状角膜炎(TSPK)の原因は不明です。しかしウイルス感染や免疫機序が関与しているようです。

頻度:不明
好発年齢: タイゲソン表層点状角膜炎(TSPK)はあらゆる年齢層に起き、2歳半から70年までの年代に及びます。その平均年齢は29歳でした。

101
タイゲソン表層点状角膜炎(TSPK)の臨床像
病歴

タイゲソン表層点状角膜炎は両眼の流涙を訴えます。灼熱感、羞明、異物感覚、および眼球の刺激感を訴えます。しかしこの病気が不活発な間は、患者に訴えはないかもしれません。

102
身体的特徴
タイゲソン表層点状角膜炎(TSPK)は、両眼性で、繰り返し発生する、局所的な表層角膜炎です。結膜や、角膜実質の細胞浸潤はほとんどありません。
タイゲソン表層点状角膜炎の古典的な角膜病変はフルオレセインでわずかに染まる粗くて楕円形でわずかに隆起した白っぽく暗い色の点状の病変です。その病巣は角膜の中央に蓄積し、1-50個であって、平均20個の病変が見えます。
98
角膜の知覚感度は、通常は正常ですがわずかに減弱少している事があります。それは単純ヘルペス性角膜炎のときのように完全になくなることはありません。
結膜の炎症性応答は通常見られませんが、結膜の充血を含むわずかな反応は見られることがあります。

103
原因
タイゲソン表層点状角膜炎(TSPK)の正確な病因は不明です。
アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルスを含むウイルスとの共存例が報告されています。
1953年にBraleyとAlexanderは、不完全ながらウイルスがタイゲソン表層点状角膜炎の原因ではないかという報告をしています。1974年にはLempらは、10歳のタイゲソン表層点状角膜炎の少年の角膜表面から水痘帯状疱疹ウイルスを分離しました。より最近になって行われたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して行われた研究では、水痘帯状疱疹ウイルスはタイゲソン表層点状角膜炎がある目からは検出されず、このウイルスが原因としては疑わしいという議論を提起しました。

免疫応答遺伝子と複数の自己免疫異状に関連している抗原であるHLA-DR3にも、タイゲソン表層点状角膜炎(TSPK)が関連しているという説があります。この抗原がタイゲソン表層点状角膜炎(TSPK)になる個人の免疫反応に変化を起こして、この病気の長引いている状態やその急激な悪化という顕著な特徴をもたらしているかもしれないという説があります。
ーーー引用終了ーーーー

102
参考ぺージは:http://emedicine.medscape.com/article/1197335-overviewです。
原著は:First described: Phillips Thygeson. “Superficial Punctate Keratitis”. Journal of the American Medical Association, 1950; 144:1544-1549.

*1:清澤注:ペンシルバニア大学医学部のキャンパスの北外れにある退役軍人病院ですね。恐らく著者はペンシルバニア大学眼科(シェイ研究所)とも関係のあるひとでしょう。
*2:Phillips L. Thygesonはアイオワでレジデントを務め、Director of the Proctor Foundation at the University of California, San Franciscoになった人らしいです。アイオワ大学は現在に至るまで著名な眼科医を輩出しているところで、神経眼科では瞳孔の研究で知られるスタンレー・トンプソン博士や虚血性視神経症で知られるソーハン・へーレー博士なども活躍しています。
103
清澤の感想:私の最近見た患者さんは、角膜の専門家によると白い点の数が角膜全体にたくさんあって典型例よりも多いかもしれないということでした。しかし最初の報告の写真とはとてもよく似ています。一例の症例を見ただけですが、角膜擦過物を取っておき、医科歯科大学に頼んでウイルスのPCRを出しておけばよかったと残念に思いました。

Categorised in: 未分類