お問い合わせ

03-5677-3930初診受付

ブログ

2009年10月4日

1061 過矯正眼鏡 (4 鞭打ち症が疑われたが、眼鏡の過矯正で有った症例)

663
3)鞭打ち症が疑われた過矯正眼鏡装用の症例

眼の疲れや頭痛はむち打ち症においてみられる代表的な目の症状ですが、追突事故に有ったという既往歴があったとしてもその症状を鞭打ち症と決めつけることは間違いの原因となります。実はその眼の不具合の原因が、眼鏡の過矯正で有ったという症例の提示です。鞭打ち症による眼精疲労を考える際には、眼鏡が過矯正()強すぎる近視のメガネになっていること)の可能性もぜひご検討ください。

(末尾にまとめ部分もつけてあります。図の添付など未完成工事中ですが、原著が出版されたのでひとまず公開します)

689
ーーーーーー引用開始ーーーー
3)鞭打ち症が疑われた症例

症例は34歳女性で、職業は看護士。主訴は両眼が焼け付くように痛い、目を抉られるような痛みがあるといい、目が重いとか目がだるいとも訴えた。現病歴は、6年前に車の追突事故にあい、頸髄損傷と頸部のC5/6およびC6/7のヘルニアを診断されている。心的外傷後ストレス障害(post-traumatic stress disorder: PTSD)とも診断された。眼痛と頭痛があり、時々目がかすむと訴えて何件もの眼科を回ったが改善が得られず、インターネットのホームページを見て神経眼科的な診察と、改善しない目の症状の治療を求めて当院を受診した。

690
初診時所見は、視力が右0.08(1.2X-2.00=-0.75A5)、左0.1(1.2X-2.00=-1.5A165)。近見視力は右が0.5(1.0X-2.00=-0.75A5)、左は0.5(1.2X-2.00=-1.5A165)。細隙灯所見は正常で、眼底も正常。シルマーテストは右も左も15mmと正常範囲であった。脳画像診断も行ったが特に異常はなし。-2.5Dの屈折であるのに、近見裸眼視力が1.0ないことから鞭打ち症による調節力の低下がこの訴えの原因であろうかと考えた(図13)。(図13挿入部位)
図13
鞭打ち症では、側方からのX線写真で 前方屈曲の消失が認められるという。上部頸椎と第5-6頸椎の傷害が多い。外傷は頸椎の過伸展と、次に過屈曲が続き、頸部靭帯や頸髄、神経根も損傷される。さらに神経の血流障害や交感神経の過緊張が加わって自覚症状は増強する。その結果、一部の症例では、鞭打ち症の症状が年余にわたることも稀ではない。心理的な不安で、頚部の筋緊張も高まるとされる。この疾患では、補償問題も絡み合うので解決は困難であって、交通事故の被害者であるのに詐病とされてしまう場合もあるようである6。

705
鞭打ち症の目に関連する訴えには多くのものがあるが、最初に患者の言葉でそれを述べ、次に括弧内にその学術語を示す。
“目の疲れ”(眼精疲労)、
“目のぼやけ”(霧視)、
“ごみが入った感じ”(異物感)、
“目の痛み”(眼痛)、
“なみだ目”(流涙)、
“ひとつのものが二重に見える”(複視)、
“まぶしさ、まぶしい” (羞明)、
“ピントが合わない” (調節障害)“、
“目が赤い” (充血)などというように実に多岐にわたる。

706
さて、眼科として異常が検出できる目の検査にはどのようなものがあるのだろうか。それを列挙してみると、次のようになる。
1. 調節障害:これは、石原式近点計や赤外線オプトメーター(トライイリスⓇ)で測定できる。瞳孔の異常は赤外線瞳孔計で記録することができるが、どこにでも有る装置ではない。通常の肉眼的観察で調節障害に伴う瞳孔の異常はわからないであろう。

2. 輻輳障害:これは、両眼球の内寄せが上手にできず、目の前の物が二重に見えるというものである。

3. 視力障害:これは、輻輳機能が低下してこれを補うため近視化が表れるものと説明されている。この場合、矯正視力は良好なはずである。

4. 斜視:鞭打ち症では潜在した外斜視の顕在化が見られるという。

5. 視野障害:鞭打ち症では、通常は視野検査は正常である。心因性の要素があるケースでは、「らせん」などの視野異常も見られることがある。

707
さらに、鞭打ち症の代表的な全身症状を挙げると次のようなものが含まれる。

1. 頸部の筋肉の疼痛と二次的な筋緊張型頭痛。これは、よく見られる症状であるが、非特異的な原因でも起きうるものである。

2. 疼痛や感覚異常(しびれ感)、腕、手指の神経根に関する症状。これも頚部の神経根の障害の症状である。

3. めまい、視機能の障害、平衡感覚の障害。

4. 上下肢の運動麻痺および感覚障害などの脊髄障害。

5. 流涙、顔面紅潮、唾液分泌や発汗の異常、瞼裂と瞳孔の左右差などの交感神経系症状もしばしば報告されている。

6. バレー・ルー症候群、これは簡単に述べると鞭打ち症の強いものである。この状態では特に目や耳の症状、心臓の動悸、手足のしびれ、発汗、顔面紅潮などの自律神経症状があらわれる。特に目の症状として、目のかすみ、複視、目の疲れなどを強く訴えるという。

7. 眼症状に対する治療に関連した個別の事項には次のようなものがある。

8. 調節障害:近見用眼鏡の処方が可能である。発症の前とは違う眼鏡度数への変更が必要である。調節緊張には0.004-0.025 %のシクロペントレートを就寝前に点眼するとよいという説もある。

9. 輻輳不全:これには輻輳訓練が勧められるがその効果は不明である。

10. 視力障害:視力障害が屈折値の変化によるのであれば、症状に応じた眼鏡処方が有効である。

11. 眼位異常:鞭打ち症の患者の眼位は測定のたびに変動するが、もっとも安定する眼位に合わせてプリズム処方を試みることが行われる。

708
これらを組み合わせて、鞭打ち症では各症状に対して治療が進められる。

さて、この症例には驚くべき結論があった。鞭打ち症の存在を考えて、私が治療を試みても良い変化が見られぬので、早いうちに屈折や調節を得意とするK先生に、この患者さんを紹介した。その先生は、まず調節麻痺剤を使ってこの患者の屈折を調べた。そうしたら、なんとこの患者には持参した眼鏡ほどの近視はなく、その眼鏡が過矯正であることがわかった。眼鏡は外傷の後で作成されたものであって、自動屈折計の値を見ても、また本人の答えるままに視力を測っても、この屈折度数になってしまったものであった。

710
K先生に眼鏡を処方しなおしてもらって目の症状は消失したといって、紹介をしたお礼のお菓子まで持ってこの患者が明るい顔で訪ねてくれたのには大変驚いた。

この教訓として、屈折や調節の異常を考えるのであれば、まず患者の目を散瞳して、本来の屈折値を確かめること。この基本を踏んだ診療をすることの大切さを教えられた症例であった。

711
終わりに
今回の話では、眼瞼痙攣、海綿静脈洞部脳硬膜動静脈奇形、そして、鞭打ち症もどきの3症例を取り上げた。

眼瞼痙攣は“目をつむっていたい”とか“眩しい”とか目がぴくぴくするというのとはいささか違った訴えをする場合が少なくない。治療はボツリヌストキシンである。

血流量の少ないタイプの脳硬膜動静脈奇形が海綿静脈洞部にできると、強膜上の血管が拡張するので、結膜の炎症と紛らわしい。脳外科に早めに紹介する必要がある。

鞭打ち症は調節の不具合などを訴え、普通の眼科医には近寄り難いものであるが、時には診断書の発行などを迫られて苦しい立場に立たされることもある。冷静な観察が必要な疾患である。
図13

何れも実際の症例を見たことがないと、早期に正確な診断をつけ、正しい治療を行うことが困難な疾患である。

724
ーーー引用終了ーーーー
さていかがでしょうか。通読していただくというよりは、サーチエンジンでそれぞれの症例にたどり着居ていただくことが多いと思います。ご参考になればと思います。

best doctors logo vertical (ベストドクターズとは)

今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。

管理頁
清澤眼科医院通信最新ページへ(リンク)します

相互リンクページ,相互リンクstation) 眼科眼科医フォーチュンクッキー日記&ブログ
眼医者さんのリンク集 | Ganka Links

Categorised in: 未分類