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2009年9月17日

1028 両眼のうっ血乳頭を示す真性多血症という珍しい症例の報告がありました

眼底にある視神経乳頭がはれ上がる疾患には代表的なものとして1)うっ血乳頭と2)視神経炎があります。

その両者を見分けるのには、1)うっ血乳頭ならば視力が下がらず、2)視神経炎ならば中心暗点ができて視力が下がると言う神経眼科の大原則が有ります。

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しかし、その視力が下がりにくいうっ血乳頭でも長期にわたって続き、腫れが激しいと視神経がその腫れに耐えられず委縮してしまい、やがて視力も下がってしまいます。しかも、この形の視力障害はなかなか回復が難しいのです。

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うっ血乳頭は、脳圧の亢進が原因で起きます。脳圧というのは、脳を包んでいる液体の水圧で、正常値は水の柱で20センチメートルくらいのものです。

そこに、脳腫瘍ができたり、脳脊髄液の吸収が阻害されたりしますと脳脊髄圧が急激に上昇してしまいます。その結果、患者さんは吐き気を催したり、実際に吐いたり、激しい頭痛を訴えたりします。

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うっ血乳頭では通常はMRIやCTで脳腫瘍が見つかるものなのですが、まれにそのような腫瘍が見つからないことがあります。その代表的なものが上矢状静脈洞血栓症と呼ばれるものです。
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脳の周りにある水、つまり脳脊髄液はこの上矢状静脈洞で吸収されていくのですがここに血栓ができますと脳圧が上がるばかりでなく静脈の還流も悪くなって出血性脳梗塞を起こしたりもしますので大変危険なのです。

上矢状静脈洞血栓症の多くは、血液を介して細菌が入ったりして起きる感染性のものなのですが、そのほかに非感染性のものがあります。頭部外傷、脳腫瘍、経口避妊薬の使用者、妊婦、そのほかに血液の凝固能が強まったもの、たとえば真性多血症であったりします。

そして、静脈洞の中でも上矢状静脈洞は位置が高くて内圧が低く、その中の血流もゆっくりなので脳の静脈洞血栓の71%と他の静脈洞よりも血栓の出来る頻度が高いと説明されています。

上矢状静脈洞血栓症の治療としては血液凝固を抑えるワルファリンの使用、脳圧を下げる利尿剤や脳浮腫を抑えるステロイドの使用などが行われます。そして、もっとも強力な脳圧を下げる方法は脳室腹腔シャントなどの外科的な方法です。

両眼のうっ血乳頭

このような症例の報告を探していましたら、誂えたようにインドから両眼のうっ血乳頭を示した真性多血症の一例という報告が出ていました。その出典は
Indian J Ophthalmol. 2008 56(4): 327–329.
Polycythemia vera presenting with bilateral papilledema: A rare case report
S Parija, MS, M M Mohapatra, MS, and B K Pattnaik, MBBS
です。⇒リンク
です。

この文献によれば、上矢状静脈洞血栓症の治療指針は次ののようになっています。

”抗てんかん薬、感染性血栓章を考えた抗生物質、代謝の乱れの補正、脳浮腫の軽減、脳脊髄圧のコントロールなどが行われる。非感染性上矢状静脈洞血栓症では出血防止目的で凝固阻害剤が使われ、場合によっては長期のワルファリンが必要

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視野欠損が進行性であったり、急速に視力が失われてゆく場合には視神経開窓術が考慮される。場合によっては上矢状静脈洞の血栓摘出術も行われる。これらの治療でも良くないなら、脳室腹腔シャントなども試みられる。”

しかし、私の印象としては、視神経開窓術はかつて私もこの手術を米国で学び自らも手がけましたが、その難易度の高さと危険性を伴うといわれた事から、現在はほとんど行われない手術となっていますので、あえて行うことは勧めしません。また、上矢状静脈洞の血栓摘出術も脳外科医が行うのでしょうが、私の知る限り実際に行われるのを見たことがありません。やはり、緊急かつ確実に脳圧を下げるにはシャントがよさそうだと思います。

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というようなわけで、そこに書いてある治療法の選択順位は現在の標準的な治療選択の順位とは多少違うようにも感じますので、状況に応じた再度の検討が必要でしょう。
内服では血液凝固阻害剤が有力であり、もし手術であれば、腹腔などへのシャントの利用が良いように感じます。

今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。

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