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2009年9月16日

1026 ”瞼のぴくぴく”を訴える脳腫瘍について

1026 ”瞼のぴくぴく”を訴える脳腫瘍について
脳腫瘍を伴う片側顔面痙攣の症例を、私はこのところ数例連続して経験しました。
そこで片側顔面けいれん(hemifacial spasm)と腫瘍(tumor)をキーワードに文献を検索してみました。(2015,4,8 加筆復旧)

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報告上でも、そのような症例が散見されます。その中でも代表的な文献が九州大学から1992年に発表されたこの論文です。やや言葉を足して医学の部外者にも内容が分かるようにその抄録部分を翻訳してみます。

709ーーー引用開始ーーー
脳外科雑誌(Surg Neurol.) 1992 38:204-9.

脳腫瘍、動脈瘤ないしは動静脈奇形に因る片側顔面けいれん
(Hemifacial spasm due to tumor, aneurysm, or arteriovenous malformation.)

Nagata S, Matsushima T, Fujii K, Fukui M, Kuromatsu C.
九州大学医学部脳外科

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8例のいわゆる症候性片側顔面痙攣の症例を報告する。
これらの症例はいずれも脳腫瘍(類上皮腫1例、神経鞘腫1例、髄膜腫2例)、血管奇形(1例の静脈奇形と2例の動静脈奇形)そして動脈瘤(1例)という明らかな頭蓋内病巣を持っていた。

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脳腫瘍を持っていた4例はいずれも、脳神経が脳幹を出るあたりには血管による顔面神経への圧迫はなかった。4例中の3例では顔面神経に接触していた腫瘍を摘出したら顔面の痙攣は即時消退した。

顔面神経に対する圧迫や、腫瘍による包み込みがこの3例における顔面痙攣の原因であった。

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残りの大脳テント髄膜腫の1例では、腫瘍塊や血管が直接に顔面神経に触れているという部分は神経根のあたりにはなかった。しかし、腫瘍の摘出後に片側顔面けいれんはすぐに消えた。

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動脈成分を含む髄様静脈奇形の症例では、顔面神経が脳幹から出る根部で拡張した静脈が顔面神経を圧迫していた。後の残りの2例の動静脈奇形と1例の嚢状動脈瘤を含む血管性病変の症例では、拡張した流入動脈が顔面神経根部を圧迫していた。

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動脈や静脈ばかりではなく、塊状の物による顔面神経への圧迫が片側顔面痙攣をおこすことがある。そして脳外科的なこの圧迫性の病変に対する手術は、治療の方法の選択肢である場合がある。
ーーーーーーー引用終了ーーー

神経眼科医清澤のコメント:どこかで見た数字として、片側顔面けいれん(眼瞼痙攣でも?)が脳腫瘍を持つ比率は3パーセントともいわれています。

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片側顔面痙攣はボトックスの注射でしばらくは抑えることができますし、その切除が最善の治療法とは限りませんが、腫瘍がが増大していった場合には、手術的にその腫瘍を切除しても顔面神経麻痺が残るなど、当然にその予後は悪化することが予想されます。

結論として、片側顔面けいれんでは、原因になっている血管圧迫の検索目的だけではなく、良性脳腫瘍性病変除外の為にも初診時のMRI検査はは必要です。

716ですから、ボトックスや経口の薬剤投与を含む片側顔面けいれんの治療を開始し、それを継続する場合には、まず神経画像診断による小脳に行く血管による顔面神経への圧迫(これを英語ではvascular compressionと言います)があるかどうかを見るということと並んで、小脳橋角部(しょうのうきょうかくぶ)の腫瘤性病変を探してみておく必要があります。その塊状の物体が悪性腫瘍であることはむしろ少なく、良性(つまり転移もしないし成長も遅い)腫瘍である場合もありますし、血管の奇形のようなものである場合もあるというのがこの論文の結論です。

jkns-45-196-g001

この論文を見た後で、最近韓国から出た症例の報告(J Korean Neurosurg Soc. 2009 March; 45(3): 196–198.Seok-Keun Choiほか)の全文を見ることができました。その論文では腫瘍の下に実際に顔面神経を抑えている動脈があったと記載しています。つまり血管による圧迫は存在したというわけです。神経根部と離れた部分(大脳テント)の腫瘍が片側顔面痙攣の原因となっていたという症例もそうすると説明がつきます。

しかし、この症例のMRIそのものを拝見しても眼科医の私にはこれが腫瘍だと指摘するのかなかなか困難です。餅は餅屋というように神経画像の専門家にその判断はお任せするのがよさそうです。

715必ずしも切除するのが最善の治療というわけではありませんので、眼科医として患者さんを脳外科医に紹介する場合には、その相手は眼科医のニュアンスがわかる、私の個人的に知っている脳外科医を個別に選んでお願いするようにしています。

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大学のように権威のある施設では、注射の前にああでもないこうでもないという議論が十分にできるのですが、私たちのような野戦病院のような開業医の診療所でもきちんとした検索をしておくことは、実に大切であると感じたところでありました。

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今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。

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