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2009年4月24日

870 ラット-ビククリンメチオダイド誘導ジストニアモデルにおける脳糖代謝、フルマゼニル及びMPDXの結合能の検討

ラット-ビククリンメチオダイド誘導ジストニアモデルにおける脳糖代謝、フルマゼニル及びMPDXの結合能の検討
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先日、東北ジャーナル オブ イクスペリメンタル メディスンに刊行された私たちの論文要旨です。(筆頭著者は、医科歯科大学大学院を今春卒業したチンケルト医師。おこがましいですが私が指導した研究として責任著者corresponding authorにしていただいています。)専門医学誌ですから準備なしで理解することは難しいかと思いますが、現在の基礎医学で眼瞼痙攣の原因の究明がこの程度まで来ているということの参考にはなるかと思いますので掲示いたします。(清澤)

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論文内容の要旨
論文提出者:チンケルト

論文題目:Cerebral Glucose Metabolosum and [11C]flumazenil – and [11C]MPDX – Binding changes in Rats with Bicuculline Methiodide-induced Dstonia
(ラット-ビククリンメチオダイド誘導ジストニアモデルにおける脳糖代謝、フルマゼニル及びMPDXの結合能の検討)

<要旨>
ジストニアは、持続した筋収縮により肢位、姿勢の異常が生じる不随意運動である。今回、我々は、autoradiogram (ARG:放射能写真技術)を用いて、ジストニアの動物モデルでジストニアを引き起こすメカニズムについての研究を行った。
GABAA拮抗薬であるビククリンメチオダイドを、定位的に片側視床腹外側核に投与し、急性ジストニアのラットモデルを作成した。そして、脳糖代謝と、フルマゼニルのベンゾジアゼピン受容体結合能及び、MPDXのアデノシンA1受容体結合能を生体外で測定した。
急性のジストニアの症状を呈しているラットの脳では、両側の視床、黒質、淡蒼球、線状体において、糖代謝亢進を認めた。しかしながら、フルマゼニルのベンゾジアゼピン受容体結合能には変化が見られず、海馬ではMPDXのアデノシンA1受容体結合能は低下した。
このような糖代謝亢進はジストニアの患者にも見られ、運動系大脳基底核-視床-皮質サーキットの活性化によるものと考えられた。また、海馬におけるMPDXのアデノシンA1受容体に対する結合能の低下は、てんかん発作のため一時的に機能が低下した影響が考えられた。

<緒言>
ジストニアは、持続した筋収縮による肢位、姿勢の異常が生じる不随意運動である。局所ジストニアには、眼瞼痙攣、書痙、痙性斜頚などがある。眼瞼痙攣に対するFDGを用いたPET研究では、視床、小脳、脳幹に糖代謝亢進を認めたという報告がある。これらの所見は、ジストニアによる運動系大脳基底核-視床-皮質サーキット、小脳サーキットが活性化された結果であると考えられている。
 脳の受容体に関するPET研究では、眼瞼痙攣において、被殻のドーパミンD2受容体濃度の低下、線状体のドーパミンD2受容体濃度の低下の報告がある。
GABAA拮抗薬であるビククリンメチオダイドを、ネコの線状体やサルの視床の一側に注入すると、対側のジストニアを生じることが証明されている。多方面の研究から、GABA作動系経路の障害がジストニアの成因に重要な役割を果たしているという報告があり、ジストニアは、感覚神経系のGABA作動系経路の異常が原因であるという仮説がたてられている。また、アデノシンA1受容体作動薬はジストニアを改善し、阻害薬はジストニアを悪化させるとの報告がある。しかし、一方で中枢神経のGABAA受容体濃度や、アデノシンA1受容体濃度を検討した報告はあまりない。このような背景から、GABAA拮抗薬であるビククリンメチオダイドを用いて急性ジストニアのラットモデルを作成し、ARG を用いて、糖代謝とフルマゼニルのベンゾジアゼピン受容体結合能及び、MPDXのアデノシンA1受容体結合能を生体外で測定し検討を行った。

<方法>
動物モデル
生後8週のオスのラットを3群に分けた。
 BM群(n=42)は、ケタミン100mg/kgを腹腔内に投与して麻酔した後、頭蓋骨に穴を開け、ビククリンメチオダイド溶液(3.5mg/ml)、2μl(7μg)を、マイクロインフージョンポンプを用い、4分かけて定位的に片側視床腹外側核に投与した。そして、対側の視床腹外側核には生食2μlを同様の方法で投与した。
 Control 1群(n=36)は、BM群と同様の方法で、片側視床腹外側核に生食2μlを投与し、対側には何も投与しなかった。
 Control 2群(n=18)には両側とも何も投与しなかった。

生体外でのオートラジオグラフィー測定
BM群(n=6)、Control 1群(n=6)に対し、ビククリンメチオダイド、生食を投与し、その1時間後、1日後に、各種トレーサーに対して生体外でオートラジオグラフィー測定を行った。糖代謝の評価では、ビククリンメチオダイド、生食、それぞれ投与15分後に、[14C]DG(3MBq/kg)を尾の静脈から注入し測定を行った。ビククリンメチオダイド、生食、それぞれ投与1日後に測定を行うラットに対しては、投与24時間後に[18F]FDG(5 – 7MBq/kg)あるいは、[14C]DG(3MBq/kg)を尾静脈から注入し測定を行った。
ベンゾジアゼピン受容体濃度、アデノシンA1受容体濃度の評価では、それぞれ、[11C]flumazenil、[11C]MPDX(1 GBq/kg)を、ビククリンメチオダイド投与30分後、あるいは1日後に、尾静脈から注入し測定を行った。ラットは全てトレーサー投与45分後に屠殺した。

データ解析
 関心領域:ROIを以下の場所に設定し、各種放射活性を測定した:前帯状回、一次体性感覚野、二次体性感覚野、線状体、視床、黒質、淡蒼球、前視蓋部、前視床下部、後視床下部、内側中隔核、対角帯垂直脚、内側膝状体、海馬CA1、CA2、CA3領域、歯状回。
 各測定部位で、ビククリンメチオダイド投与部位と、生食投与部位の各種放射活性を比(BM/C 比)として計算した。Control 1群に関しては、生食投与部位と、正常部位の放射活性を比(C/N 比)として計算した。Control 2群に関しては、各測定部位の左右の放射活性を比(R/L 比)として計算した。また、各部位と視覚野に対する放射活性比も計算した。
 各測定部位のBM/C比、C/N比、R/L比に対して、t検定を用いて評価した。また、各部位と視覚野に対する放射活性比は、Kruskal-Wallis testを用いて評価した。

<結果>
[14C]DG、[11C]flumazenil、[11C]MPDXの測定結果を示す。Control 1群の投与1時間後、1日後の結果は、Control 2群と同様であった。また、Control 1群とControl 2群との比較では、C/N比、R/L比の左右差は認めなかった。
BM群での、ビククリンメチオダイド投与側と、非投与側との比較では、以下の部位で投与側において有意な糖代謝の亢進を認めた:視床、黒質、線状体、淡蒼球、海馬CA3領域、内側中隔核、対角帯垂直脚、前視床下部、後視床下部、前視蓋部。
 BM群とControl 2群との比較では、ビククリンメチオダイド投与側では、視床、黒質で、BM群において有意な糖代謝の亢進を認めた。また、BM群の両側では、Control 2群に対し、以下の部位で有意な糖代謝の亢進を認めた:線状体、淡蒼球、海馬CA1、CA2、CA3領域、歯状回、内側中隔核、対角帯垂直、前視床下部、後視床下部、前視蓋部。
 ビククリンメチオダイド投与1日後では、各部位の[14C]DGのBM/Cは有意差を認めなかった。
 [11C]flumazenilの取り込みでは、BM群とControl 2群との間では有意差を認めなかった。
 投与1時間後と1日後のBM/Cを表2にまとめた。
 [11C]MPDXの取り込みは海馬CA1、CA2、CA3領域、歯状回でBM群において有意に低下したが、1日後のものでは、有意差を認めなかった。

<考察>
ジストニアを呈している期間の [14C]DGの取り込みの局所的変化
運動系大脳基底核-視床-皮質サーキットモデルで考えると、ビククリンメチオダイドを視床腹外側核に投与し、視床のGABAA受容体は阻害すると、GABAの抑制効果が低下し、脱抑制となった視床は活性化される。視床が活性化されると、二次体性感覚野、一次体性感覚野、線条体が二次的に活性化される。一方で、視床下部、内側淡蒼球、黒質の活動は抑制されると想定される。慢性のジストニアのPET、functional MRIによる臨床研究では、対側の一次体性感覚野、線条体、視床が活性化されていると報告されている。また、内淡蒼球の活動低下が示唆されている。内淡蒼球へのdeep brain stimulation: DBSはジストニアの治療として確立されており、その治療後には内側淡蒼球が活性化される。
本研究では、片側視床腹外側核にビククリンメチオダイドを注入した直後では、Control 2群と比較して、両側の線条体、淡蒼球、海馬のCA1、CA2、CA3領域、歯状回、内側中隔核、対角帯垂直脚、前視床下部、後視床下部、前視蓋部で糖代謝が亢進しているが、両側内側膝状体では、糖代謝が低下した。視床、黒質では、ビククリンメチオダイド投与側でのみ、有意な糖代謝の亢進を認めた。局所ジストニアである痙性斜頚のPET研究でも、このサーキットは両側性に活性化されているが、症状は一側であったとの報告がある。本研究ではビククリンメチオダイドが一側の視床に投与されたのにもかかわらず、運動系大脳基底核-視床-皮質サーキットに該当する部位は両側とも活性化され、症状は両側性であった。てんかん発作のPET研究では、運動系大脳基底核-視床-皮質サーキットに障害が生じ、視床、線条体の活動が亢進し、海馬の活動が低下すると報告されている。本研究の急性のジストニアモデルの結果からは、てんかんに見られるような運動系大脳基底核-視床-皮質サーキットの活性化が生じてジストニアをおこしたと考えられた。

ベンゾジアゼピン受容体濃度GABA作動系経路の障害が、ジストニアの成因に重要な役割を果たしていることを示唆するような報告は多い。本研究ではビククリンメチオダイド投与を投与したラットでは、ジストニアの期間も1時間以内と短く、ベンゾジアゼピン受容体濃度に変化は見られなかった。動物モデルでは、2-4週間後に変化が見られたという報告もあることから、ベンゾジアゼピン受容体濃度の変化は、慢性的な変化に伴うものであると思われる。

アデノシンA1受容体アデノシンは哺乳類の脳に多く、抗痙攣作用、神経保護作用がある。アデノシンA1受容体作動薬はジストニアを改善し、阻害薬はジストニアを悪化させると報告されている。ハムスターの突然変異ジストニアモデルでは、安静時で、通常のハムスターよりもアデノシンA1受容体濃度が低下していたとの報告がある。しかし本研究では、[11C]MPDXの取り込みは海馬CA1、CA2、CA3領域、歯状回で有意に低下したが、1日後のものでは、有意差を認めなかった。ハムスターの突然変異ジストニアモデルの脳は、正常のラットの脳とは異なり、[11C]MPDXの取り込みも異なることが考えられた。また、本研究で[11C]MPDXの取り込みが海馬CA1、CA2、CA3領域、歯状回で有意に低下したのは、てんかんによる海馬への影響が考えられた。

<結論>ビククリンメチオダイド誘導ジストニア-ラットモデルにおいて、両側の視床、黒質、淡蒼球、線状体において、糖代謝亢進を認めた。このような糖代謝亢進は、運動系大脳基底核-視床-皮質サーキットの活性化によるものと考えられた。
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清澤の簡単なコメント:
さて、いかがでしょうか。
この要旨は、その後雑誌の査読の過程で、査読者の要請によって多少の改変を加えられ、最終的な形で出版されました。おおよその部分には変更はありません。おもな改変点はコントロール1,2という言葉をほかの表現にした程度です。
従来、脳の中のGABA-Aに関連した抑制経路が十分に働かなくなってこの障害が起きていると考えられていましたが、そのような状態をネズミで再現し今後の研究に役立てようとしたわけです。最近では、遺伝子操作で、このような状態を示す準備状態の動物もつくられ、さらに精密な研究ができる時代に入ってきています。その動物では、ストレスをかけるとジストニアが発生することが報告されていますので、病気になりかけた状態では、ストレスの関与も病気の発生には関連があるのかも知れませんね。

今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。

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