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2008年12月20日

747 原発性開放隅角緑内障の脳脊髄圧は低い?

投稿の依頼を受けて下記のような原稿を提出しました。先に書いた当ブログの記事に手を加えたものです。(⇒旧記事:2008年05月21日
568 原発性開放隅角緑内障の脳脊髄圧は低い
? )

この記事が出版されました:
日本眼科医会が発行する”日本の眼科”の80:3号2009.3.20発行309-310pです。

清澤源弘、原発性開放隅角緑内障の脳脊髄圧は低い?、日本の眼科80:309-310、2009となります。

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原発性開放隅角緑内障の脳脊髄圧は低い?

清澤眼科医院 清澤 源弘

Ophthalmologyの2008年5月号の最初の論文はこのようなショッキングな内容のものであった。巻頭の編集者Pascuare LR博士の言葉も”我々の緑内障に対する理解に変化を起こすか?”とこの論文を重要視していた1。”原発性開放隅角緑内障の脳脊髄圧は低い”というBerdahlJPらの論文の短い内容紹介は“脳脊髄圧は緑内障患者ではこの疾患を持たない患者よりも低かった、この事実は緑内障の発生原因を説明するかもしれない”、としている2。以下にこの論文の要約をしめす。
目的は原発開放隅角緑内障と非緑内障患者の脳脊髄液圧を比較する。デザインはケースコントロール実験。被検者は31,786人の患者でメイヨ・クリニックで1996年から2007年の間に様々な目的で腰椎穿刺を受けたものである。 これらでのうち、原発開放隅角緑内障であった28人の患者と原発開放隅角緑内障では無かった49人の患者を分析している。方法はカルテを調べ、脳脊髄圧に関連して、2つのグループの差を単変量と多変量解析によって分析した。主な評価項目は、患者の年齢と性という特性、既往歴、投薬されている薬剤、腰椎穿刺の理由、眼圧、視神経乳頭のC/D比、視野、そして脳脊髄圧である。結果は平均脳脊髄圧±標準偏差は、非緑内障患者で13.0±4.2mmHg、開放隅角緑内障患者は9.2±2.9mmHgで(P<0.00005)有意に異なっていた。脳脊髄圧は、腰椎穿刺が行われた理由や患者の年齢に関連無く、原発開放隅角緑内障患者で低かった。線形回帰分析では、C/D比が眼圧(P<0.0001)、脳脊髄圧(P<0.0001)、そして視神経の篩板にかかる圧力差(P<0.0001)と、独自に相関を示した。多変量解析では、大きなC/D比が低い脳脊髄圧と関連していた(P<0.0001)という。結論は、非緑内障コントロールと比べて、緑内障患者の脳脊髄液圧は有意に低い。 これらのデータは脳脊髄圧が原発開放隅角緑内障の発生に重要な役割を果たすという概念を支持するというものである。 さて、この論文は以前Quiguley博士が原発開放隅角緑内障で視野欠損が生じたときには、すでに視神経線維の半分が失われている3という事を報告して以来の重大なトピックスかもしれない。緑内障では高い眼圧に伴って視神経の線維が脱落して、その結果で視野が欠損してゆくと長い間信じられてきた。しかし、日本の研究で眼圧がそれほど高くは無い”正常眼圧”の緑内障が日本人では開放隅角緑内障の半数以上を占めていることが報告され、それでは緑内障とは何なのだ?ということになっていた。 今回、脳脊髄圧と眼圧との差が、視神経乳頭で篩板に掛かる圧力差、つまり視神経乳頭への負荷であることをしめして、それが問題だといったわけだから、正常眼圧緑内障も開放隅角緑内障の一部であるという解釈が見事に説明できたことになる。 ところで、むち打ち症の後で現われる低髄圧症候群というものがある。それにブラッドパッチという方法で治療されるのだが、まだ保険適応は認められていない。脳外科領域にはこの診断基準を作ろうという活動があるようである。このような患者さんでも長い間には緑内障のような視野欠損が現われるのであろうか?今のところそのような報告は見られてはいない。ちょうど大学の神経眼科外来に鞭打ち症で低脊髄圧と診断された患者さんがきたので、視野をみたが異常はなかった。この論文が届いた後で、この件に言及した話を書き足す研究者はもう現れたであろうか。しばらくは、この話題が緑内障と神経眼科のテーブルをにぎわしそうである。 文献 1. Pasquale LR.: Low intracranial pressure: A tipping point in our understanding of primary open-angle glaucoma? Ophthalmology 115:761-762 2. Berdahl JP, Allingham RR, Johnson DH, Cerebrospinal fluid pressure is decreasedin primary open-angle glaucoma, Ophthalmology 115:763-768 3. Quigley HA, Addicks EM, Green WR.: Optic nerve damage in human glaucoma. III. Quantitative correlation of nerve fiber loss and visual field defect in glaucoma, ischemic neuropathy, papilledema, and toxic neuropathy. Arch Opththalmol. 1982;100:135-146 best doctors logo vertical (ベストドクターズとは)

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