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2008年10月19日

698 脳卒中の視覚のリハビリ 2 半盲の病巣と対策

698 脳卒中の視覚のリハビリ 2 半盲の病巣と対策 (2015,4,8加筆、復旧)
前回に引き続き”脳卒中の視覚のリハビリ”その2回目で今回は”半盲の病巣と対策”を論じてみます。今回の記事も共著者の江本先生の原稿を基にして、おばあちゃんに解る目の病気の一環として素人向けに言葉を足して見ましょう。しかしもともとの文は医師向けですからわからぬところは読み飛ばしてください。

ーーーー引用開始ーーーー
半盲の病巣と対策

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脳卒中の後遺症としての視機能障害には,1)複視を訴える眼球運動障害,2)視野欠損,3)視覚失認などの高次視覚機能の障害などがあります。しかし実際には,脳卒中後遺症以前の問題として,リハビリテーションが必要な脳卒中患者で,眼科的な評価が不十分であることも稀では有りません。このため,脳卒中後遺症とは関係がなく比較的治療が容易な,屈折異常,白内障,緑内障などでさえ放置されているケースもありますので,注意が必要です。

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視機能障害は,独立した老人の転倒の危険因子として知られていますが,リハビリテーションを行う上でも障害となります。脳卒中後の視機能障害は,片麻痺など,視機能障害以外の脳卒中後遺症を増悪させ,姿勢維持も影響を受けます。

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実際,認知機能が正常な老健施設入所者では,視機能障害と日常生活における活動性(activity of daily life)の低下に,強い相関が認められます.視機能障害を放置すると,不必要なケアの手間が多くなり,介助者の負担も大きくなります.また,目が見えにくいと,介助者のみならず,患者の満足度,気分にも影響します。実際に,高齢者のうつは脳卒中と視機能障害に関連が見られます。

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以上のことからわかるように,リハビリテーションの効果を十分発揮するには,脳卒中患者の眼科的評価,治療が必要です。そのためには,脳卒中のチーム医療のメンバーとして,眼科医が加わることが重要で,視機能障害,眼球運動障害,視野欠損,視覚失認などをモニタリングしながら,リハビリテーションの計画を修正・実行し,治療を進めていくことが求められます。

視野欠損は,脳卒中以外の疾患で起こることも多いですが,脳卒中急性期では,約20%に合併し,半盲の形をとります。半盲は視神経が半交叉することにより起こる状態で、視野の右ないし左の半分に左右の各眼に同じ形の視野欠損が現れます。

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ヒトがものを認知するのには,眼球の中の網膜を受容器としてその物体の形状,色,明るさ,位置,運動を捕らえ、その情報は視路を通じて主として後頭葉に投影されて視覚情報を知覚しています。ではこれから、その経路について略記します。

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1. 物体は網膜上に像を結びます。右側の物体は網膜の左側に,上方のものは網膜下方にと,物体の姿は網膜上に点対照的に像を結びます。

視野検査はその感度をもっとも良くする為に、明と暗の中間の明るさで行うのがよいとされます。

2. 網膜の視細胞1個の神経線維がそのまま後頭葉にいくのではなく,網膜内の双極細胞層,神経節細胞層などで情報処理がされてから網膜神経節細胞の軸索として視神経が形成されます。

3. 視交叉では両眼ともに鼻側の視神経線維のみ半分(厳密には53%)が交叉し,耳側の線維は引き続き同側を走ります。この状態をを半交叉と呼びます。交叉後の部分は視束といい,右の視束は両眼の右半分の網膜からの線維となり,両眼ともに左側の視野を投影しています。交叉後の障害、つまり視束障害では左右各眼の左右視野の同じ側に欠損を持つ同名半盲となります。

4. 視束の線維は外側膝状体でシナプスを乗り換えて視放線となります。視放線の中では左右の網膜対応点の線維がほぼ並行して走行しまが,途中で放散しながら迂曲するのでこの部位の障害では視野は相似な欠損が多く,多彩で厳密に見ると左右が不一致な(この状態を非調和性と表現します)視野像を示します。

5. 後頭葉視覚野(別の言葉では鳥距溝皮質、有線領とかV1野などとも呼びます)に視放線は終わりますが,網膜の神経節細胞とV1野の神経細胞は規則正しく結合されていて,V1野と両眼の網膜には,点対点の対応があります。したがってV1野の障害による同名半盲は,ほとんど左右眼が相同の欠損となります。鳥距溝の上唇には下方反対側の1/4視野,下唇には上方で反対側の1/4視野,後端には中心視野が相応しています。

6. 視覚情報はさらにV2~V5を経て視覚連合野に運ばれますが,形体視に関する情報は側頭葉に行き,素の障害では相貌失認や失読などが出現します。空間視の情報は頭頂葉に行き,素の窓外では空間見当識障害や半側無視などが出現するといわれています。

病因と症状

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脳卒中後の患者では,約10%に視野欠損を合併すると報告されています。視野欠損は経過と共に改善することが多いです。

視覚失認は,大脳半球の脳卒中の約50%~80%に見られるとの報告があります。(清澤の眼科医としての個人的印象でそれほど多くは有りません)視覚失認は,視野欠損との鑑別が困難な時があり,両者を合併している時もあります。自然回復することが多く,発症後10日間で最も回復し,発症後3週後では,脳卒中患者の約10%に視覚失認を認めるのみになります。そして発症3カ月後に,回復はプラトーに達するとされている.

図1
 網膜より上位の視覚路の障害部位による視野欠損の模式図 (チン先生が用意しいてくれた授業スライドからの図を仮に援用)

図1のごとく障害される視路の位置,程度によりさまざまな同名半盲を生じます。
眼底出血などの網膜の病変は実性暗点として自覚されますが,視神経から視覚野までの障害では虚性暗点となり見えていないことを自覚してがいません。自分では見えると思っているので、自転車や自動車を運転して側溝に落ちたり,テーブルの上の茶碗をひっくり返すとか,読書で次の行の文頭が探しにくいことなどが起こります。黄斑回避があれば半盲側の視野も3°ぐらいは残存しており,視力もよいのでほとんど正常の生活ができます。

検査

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ベッドサイドで行うには対座法が実用的です。その注意点は

1.視標は見えないところから見えるところへ,周辺から中心に向かって角度5°を1秒で動かすつもりでゆっくり動かします。

2.視標を振らない,

3.逆光は避け,少し暗めのところがよいです。診察室や病室では,明るすぎて不適当ですが,患者の日常の半盲状態を検査するのにはそれでよいです。

4.同じ視標を両手に持って半盲部と健常部を同時刺激すると違いがわかって検出しやすくなります。

リハビリテーションと半盲の対策

トレーニングで視野そのものを拡大させることは不可能ですが,脳卒中の半盲の約半数は3カ月である程度は回復します。半盲側を絶えず意識し,その方向に頭部を向けたり,視線を動かすように指導します。必要品を半盲部に置く,食事の皿を分散する,声を半盲側からかけるなどして訓練します。

自宅では危険のないように家具の配置や足元にも配慮します。外出での付き添いは,健常視野側についた方が安心感があるようです。読書の際に左側同名半盲では,次の段落を見つけるのが困難です。次の文頭を指で押さえてマークすると,視線の移動が容易になります。

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両眼ともにプリズムの基底を半盲側にして装用する方法があります。半盲部からの光線はプリズムで屈曲されて眼底の健常部に投影されるので視野が拡大します。プリズムレンズは5プリズムジオプター、すなわち2°の拡大が限度ですが,見やすくはなります。実像とプリズムを通して見る像とで視差が生じるので,慣れが必要です。

高齢者では座ってテレビで見るのにはよいですが,歩行には不適当です。最近では10プリズムジオプタのビニールのフレネル膜プリズムを自分の眼鏡に貼り付けることで重い,厚いという欠点は改善されたとの報告がありますが,視力はやや低下し美容的に問題は残ります。

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文献
1) 中里啓子・他:プリズムレンズ装用による半盲治療.臨床眼科,55:1134-1138,2001.

2)  Jones SA, Shinton RA. Improving outcome in stroke patients with visual problems. Age and Ageing 35:560-565,2006.

参考図書
3)  H.W. ケルメン著,井上有史・他訳:視覚の神経学.シュプリンガー・フェアラーク東京,1990.

4)  S. ゼキ著,河内十郎訳:脳のヴィジョン.医学書院,東京,1995.
ーーーー引用終了ーーーー
何がしか参考にしていただけますでしょうか?個別の案件は御受診の上ご相談ください。


今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。

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