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2008年10月5日

683 スチーブンス・ジョンソン症候群(Stevens-Johnson症候群)の眼症状

SJS目スチーブンス・ジョンソン症候群(Stevens-Johnson症候群、SJS)という疾患が有ります。これは皮膚粘膜眼症候群とも呼ばれる物で、極稀なのですが、他の疾患の治療目的で薬剤を投与された後、直後から2週間程度でひどい皮膚炎が起き、その患者にはかなりの比率で強い乾燥性角結膜炎を残すと言うものです。

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もちろん国際的な概念ですが、日本国内からの文献が多くこの単語に関するネットの記載は過半数は日本語です。 (管理頁

この疾患の診断を受けている患者さんが、紹介を受けて私の診療所を先月訪れました。

重篤副作用疾患別対応マニュアル ”スティーブンス・ジョンソン症候群” (皮膚粘膜眼症候群)⇒リンク(平成18年11月 厚生労働省)や米国のページ(リンク)等を参考にこのブログでおなじみの”御祖母ちゃんにも解る調”で説明してみましょう。

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症状スティーブンス・ジョンソン症候群の症状は全身が火傷のように焼けただれ、そのやけど様の症状はいずれ治りますが、目には特に後遺症を残し易いという疾患です。患者のうち重症である1/5は死亡するとも言われています。

皮膚の変化は皮膚科で診断される多型紅斑の一種で、紅斑や水疱、それにビランが体の表面や粘膜の大部分の部位に広範囲に生じます。症状はこれに併せて高熱や悪心を伴います。皮膚のみならず、口腔や陰部などの粘膜や目の結膜にも症状が現れます。重症な症例では死亡することもあり、命を保てても失明することが有りますので、眼科医が診療を求められる事もあると思います。しかし、私が眼科医を30年していて、その殆どを大学病院で過ごしても、実際にスチーブンス・ジョンソン症候群を拝見したのは5例を超えません。

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原因薬剤:
副作用としてスチーブンス・ジョンソン症候群を起こす事が有る薬剤には、「アレビアチン」「ガスター」「タガメット」「タリビッド」「テグレトール」「トレドミン」「PL顆粒」「ラシックス」「ザイロリック」「リピトール」「レニベース」「ロキソニン」などであって、抗生物質や解熱剤など内科でもまた眼科でも極普通に使われる薬が並んでいて、特定の系列も見えません。

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これを系統的に列挙しますと薬物の副作用にスチーブンス・ジョンソン症候群の記載が有るものには
<1>ペニシリン系の抗生物質
<2>セフェム系の抗生物質:「セフジニル」
<3>抗テンカン薬:
「ゾニサミド」
「カルバマゼピン」
「フェノバルビタール」
<4>非ステロイド性抗炎症薬 
等が含まれる、と言う事になりますが、原因となる薬物は抗生物質製剤や解熱鎮痛消炎剤、総合感冒剤などが300種(一説には1100種類)以上あり、その発生を予測して投薬を控える事は殆ど困難です。

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クスリを飲んだあとで、高い熱と共に湿疹が出たら要注意とされています。まずは服用の中止をご検討ください。

此処で、スティーブンス・ジョンソン症候群の症状をもう少し詳しく説明しましょう。
その発症は何らかの原因となる薬剤服用後に38℃以上高熱で始まります。
これに伴って、両目に結膜の充血が起き、めやにがでます。結膜の炎症は眼瞼にも広がるのでまぶたの腫(は)れを伴い、目が開けづらいとう症状を訴えるでしょう。

SJS胸
皮膚炎はくちびるや陰部のただれも起こします。それが急速に全身に広がってヤケドのような水ぶくれなどになり、重症化すると呼吸器障害や臓器障害の合併症も起こします。このため、排尿や排便時には痛みを訴え、粘膜病変が咽頭に出れば、のどの痛みも訴えます。

粘膜に限らず、皮膚の広い範囲が赤くなる事も有ります。これらの症状は一定の重さで持続したり、急激に悪くなったりする事が有ります。

重症例では死亡することも有ります。様々な医薬品の副作用により、患者にスティーブンス・ジョンソン症候群[SJS])などの重い皮膚障害が出た症例の厚生省への報告は、日本国内でも3年間で900件近くあって、これは医薬品の副作用報告のうち1.3%にあたっています。何とこのうち81件は死亡例だったということです。

発症のメカニズムはいまだに解明されていないのですが、薬が体内のタンパク質などと結合し、アレルギー反応を引き起こすアレルギーであると推定されているそうです。
少し詳しい説明を引用しますと、”病変部では著明な CD8 陽性 T 細胞の表皮への浸潤がみられることから、発症は活性化された細胞傷害性 T リンパ球(CD8 陽性 T 細胞)の表皮細胞攻撃の結果と考えられます。原因薬剤刺激により産生される末梢血単核球由来の可溶性 FasL (sFasL)が表皮細胞の Fasに結合しアポトーシスを誘導することによりスティーブンス・ジョンソン症候群[SJS])などの重い皮膚障害を発症させると”いう説明もなされます。(この内容の専門的説明にリンク

中毒性表皮壊死症(TEN:ライエル症候群、Toxic epidermal necrolysis: TEN)はスチーブンス・ジョンソン症候群(Stevens-Johnson症候群)よりも重症で、似た経過をたどる疾患です。

発生頻度は、人口100万人あたり、スティーブンス・ジョンソン症候群が1~6人/年間、中毒性表皮壊死症が0.4~1.2人/年間と言う事です。極少ないが、かかれば重篤で命にもかかわる疾患と考えるべきでしょう。

厚労省は「医薬品投与後に高熱を伴う発疹などがあれば直ちに投与を中止し、皮膚科の専門医が治療すべきだ」としています。

SJS目
眼科としての診断と治療:
○症状:結膜充血、眼脂、眼瞼の発赤腫脹、開眼困難、偽膜形成、進行する瞼球癒着
○所見:細隙灯顕微鏡検査により結膜充血、眼脂、偽膜、角結膜上皮障害・上皮欠損(重症では全角膜上皮欠損となる)、瞼球癒着、睫毛の脱落を認めることがある。

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○治療の概容(このブログの読者は、おそらく眼科の診断や治療に関心が有るのであろうから、全身管理は簡略に述べるにとどめます。)
(1)ステロイド全身投与 最重症例ではメチルプレドニゾロン 1 g/日(3 日間)から開始し、症状に応じて適宜漸減する。
(2)高用量ヒト免疫グロブリン静注(IVIG)療法
(3)血漿交換療法

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さて眼科の対応は
(4)急性期の眼病変に対しては、眼表面の炎症、瞼球癒着を抑えて眼表面上皮を温存し、眼表面の二次感染を防止します。

・眼表面の消炎 ステロイドの大量全身投与に加えて、眼局所にもステロイドを投与します。ベタメタゾンあるいはデキサメタゾンの点眼(1 日 4 回程度)が有効であり、炎症が高度な場合にはベタメタゾン眼軟膏を併用します。
・感染症予防 初診時に結膜嚢培養あるいは分泌物の塗沫及び培養検査を行い、予防的に抗菌点眼薬を投与します。菌を検出すれば薬剤感受性を考慮して抗菌薬を変更します。
・偽膜除去 清潔な綿棒に絡めとるなどの方法で、生じた偽膜を丁寧に除去します。(ただし偽膜除去の効果については一定の見解がなく、現在のところ偽膜は除去するのが好ましいという意見が多数をしめています。完全に除去する必要はないと考えられます。)
・癒着解除 点眼麻酔下に硝子棒を用いて機械的に瞼球癒着を剥離します。
・眼圧チェック ステロイドを大量に使用する可能性があるため、手指法で眼圧を適宜チェックします。ーーー
と言う事です。

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私が今回拝見した患者さんでは、すでに急性期を過ぎていましたので、強い乾燥性角結膜炎(ドライアイ)が主症状でした。これに対して、コラーゲンプラグと言う液体の涙点プラグを装着して、涙液分泌の低下を補償する治療を行い角膜の状態の改善を図りました。強い瞼球癒着(眼球結膜と眼瞼結膜の癒着)や角膜の白斑を来たしてしまっているより重篤な症例では角膜移植などもその治療としての検討が為されるでしょうが、涙液分泌が極端に減っている状態ではそれも難しいと考えられます。

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さて、この記事はスティーブンス・ジョンソン症候群[SJS])の患者さんを身内にお持ちになったご家族や患者さん自身に何がしかの参考になればと思ってまとめてみました。いくつかの専門的なページを参考にさせていただいていますが、必要に応じて原文に当たっていただけますと、更に専門的引用論文などにたどり着くことが出来ます。
薬を服用ないし注射されて、その後で体調が悪く、また目に強い結膜炎を生じたと言った場合にはこの疾患を考えて至急お近くの眼科医にご相談ください。

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今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。

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