お問い合わせ

03-5677-3930WEB

ブログ

2008年8月28日

651 「目がぼやけるの意外な結末」日本臨床眼科学会インストラクションコース 解決!不定愁訴、不明愁訴6 の清澤担当分ハンドアウトです

9218
日本臨床眼科学会 インストラクションコース 
解決!不定愁訴、不明愁訴6 「目がぼやけるの意外な結末」
の清澤担当分ハンドアウトです。
元々このブログに取り上げられているテーマを各疾患600字から800字に短縮し、要点を加筆したものですから、詳細を見たい方は元記事もご覧下さい。

> 登録番号   10273
> コース名   解決!不定愁訴、不明愁訴6 「目がぼやけるの意外な結末」
> 演題番号   IC46-St4
> 発表日時   10月25日(土) 1520~1650
> 発表会場   第5会場(東京国際フォーラム ホールB5-2)200席

9213

清澤眼科医院 (東京医科歯科大学) 清澤源弘 ハンドアウト

ーーーー引用開始ーーーーーーーーーー

9218
1, 視神経乳頭小窩(ピット)への漿液性剥離の合併 Optic pit and central serous detachment

◎ 症例55歳 女性 右眼のボヤけを訴えて受診。 他院にて加療するが改善しないと言って受診した。左は以前から視力不良。右眼視力1.0であるが中心性漿液性網膜剥離を思わせる薄い剥離があり、左眼は黄斑を含む広範な網脈絡膜委縮が認められた。

○視神経乳頭小窩(乳頭ピット)と言うのは視神経乳頭に先天性で深い不自然な窪みの有る状態である。そのような乳頭小窩を持つ患者さんの網膜に中心性漿液性網脈絡膜症のような漿液性で非裂孔原性の網膜の剥離を見ることが有る。

○視神経乳頭小窩は両眼の事もあるが多くは片眼である。小窩は単一であり、乳頭の端付近に見られることが多い。乳頭小窩は乳頭の端を越えては広がらないが、乳頭が変形して卵形の事がある。下外側の4分の1の部分にあることが多い。視神経ピットはもっとも軽いレベルの脈絡膜欠損(コロボーマ)であると考えられている。

○通常は20歳から40歳で気付かれるが、報告は小児から60歳に及ぶ。その頻度には男女差はなく、家族歴がある者は稀である。30-40%に視力低下を伴う漿液性剥離を伴う。剥離は後局部に楕円形で存在し、それが長期に亘って続くと色素沈着や脱色素斑となる。黄斑変化の理由は不明だが、起源については、視神経の発達異常を考える人と、眼杯の閉鎖不全を考える人がいる。

○病理報告は少ないが、乳頭小窩はグリアと神経線維の残渣、それに網膜色素上皮からなる網膜組織で出来ているようである。乳頭小窩は先天性の虹彩、視神経乳頭、脈絡膜などのコロボーマ(欠損)を伴うことがある。また、黄斑浮腫、黄斑円孔、黄斑嚢腫や黄斑の色素沈着を伴う事もある。

○臨床症状を欠くこともあり、その場合に乳頭小窩は眼底検査で偶然見つかる。視野欠損が多くの症例に見られ、マリオット盲点拡大と扇状の欠損、傍中心ないし中心暗点を示す。

○自然復位の報告は稀で、黄斑剥離の視力予後は不良。治療法には、眼帯やマニトール点滴、ベッドでの安静、ステロイド投与、光凝固、ジアテルミー、冷凍凝固、網膜下液の排除、強膜内陥術、眼内へのガス注入等があるが、最善の治療法は未確定。

○”永続的な黄斑障害があるなら、3か月は様子を見る。自然の網膜復位が得られたら、光凝固治療をしても良い。もし復位が得られないならば、ベッドでの安静と半圧迫眼帯後、引き続き網膜光凝固を行ってから2か月様子を見る。それでも剥離が残るならば、眼内ガス注入後に光凝固を加えることができる。それでも復位が得られないならば、硝子体切除後に空気ガス置換を行って、更に光凝固を加える”などとの記載もある。この症例にはこれを勧めてみようかと考えている。

9214
2、 放射線視神経症 radiationoptic neuropathy

◎ 55歳の男性が両目のボケを訴えて脳外科から紹介された。他施設で下垂体腺腫をガンマナイフで治療された既往歴あり。眼底は明らかな両側乳頭の浮腫。当初私は萎縮期に入ったうっ血乳頭を考えたが、これは放射線視神経症であった。病院をあちこち変えていたため、なかなか基幹病院でも引き受けていただけず対応に苦慮した。最終的には両眼無光覚だが、視覚障害のリハビリテーションは視力のあるうちに開始できた。

○放射線視神経障害:放射線視神経症は脳や眼窩への放射線治療の3か月から数年後に発生する不可逆性の視神経障害であり、その本体は血管内皮が障害されておきる虚血性視神経症である。

○片眼または両眼性に痛みのない視力障害が急速に進行する。発祥の数週前に一過性の視朦を訴えることがある。多くは当初から検眼鏡的な異常はなく、やがて萎縮して蒼白化する。まれに、この例のように乳頭浮腫、乳頭周囲出血、網膜滲出斑を伴う前部虚血性視神経症の様相を呈す例がある。

○視野は中心暗点。水平視野欠損、求心性狭窄など。MRIでは著名な造影増強効果がみられ、その造営効果はやがて消失して視神経委縮に至る。75%以上が50Gy以上の照射を受けているとされる。糖尿病、成長ホルモン産生腫瘍、加齢、血管の圧迫、化学療法の併用などは危険因子であるこの症例のようなガンマナイフでは視路への占領は8Gy未満が推奨されている。

○脱隋や浮腫の軽減を求めステロイド薬が使用され、抗凝固薬や高圧酸素療法が試みられるが、常に予後は不良である。

9215
3、AZOOR (急性区域性潜在性網膜外層障害)
◎14歳の少年が片眼の視野のボケを訴えて受診した。視力には低下があるが、眼底にも神経画像にも採血結果にも異状はない。

○AZOOR(Acute zonal occult outer retinopathy:アズール)という疾患がある。急性で 区域性であり 潜在性であって 網膜症の外層を冒す疾患”という症状をそのまま述べたような疾患である。
光受容体細胞である視細胞が存在し重要な視覚機能を有する網膜外層が主に障害されるが、通常の眼底鏡検査では病変が見えないというもので、眼科医にもなんだか良く分らない疾患である。

○ 経過とともに網膜と色素上皮の萎縮像を呈する事も有るというが、その変化は必発ではなく、症状が回復してしまう場合も有る。ステロイドが効いたという報告もあるが、一般には視神経炎の様には効かない。原因は今も全く不明である。その発生は急性で、若い10歳代程度の年齢の人に見られ、主な症状は光視症と視野欠損 (暗点など)である。急に視力が下がって受診することが多い。

○早期診断に際しては、電気生理学的検査(網膜電図)、特に最近現われた多局所ERG(multifocal electroretinogram)が有力とされている。

○つまり、網膜の各部分の電気現象を分離して調べて、網膜の一部分の区画に機能低下があるのだけれども、それに対応する網膜には色の変化や萎縮などがないというわけである。球後視神経炎などの眼球後方の病変ならば網膜電気図には低下が無いはずというわけである。

○Gass JD. Acute zonal occult outer retinopathy. J Clin Neuroophthalmol. 1993 ;13:79-97.は抑えておくべき最初の報告で、臨床神経眼科の雑誌に出ている。その要点は、主に若い女性にみられ、片眼ないし両眼に発症。網膜外層機能が 1つまたは複数の区域で急速に障害され、光視症、眼底鏡におけるわずかの変化、網膜電図異常などの特徴を有する症候群である。追跡診察にて視野欠損が持続し、ほとんどの症例は慢性の光視症と色素上皮萎縮の区域を呈す、という内容である。 (この雑誌は後にJ Neuroophtahlmologyに名前が変わっていて、今ではコンピュータには出てこない。)
 
○今回の発表例は長岡奈都子、清水恵、田中明子、清澤源弘、望月學:AZOORの一例、2008年第23回東京医科歯科大学同門会集談会、2008だが、私はこれに似た症例を、2001年に発表した。実はこの局所網膜電図は、網膜の位置を決めるのに本人の固視を利用しているので、この固定視が不良になる中心暗点を持つ症例では網膜の電気反応が十分に弱くなくても中心部の局所ERG記録に低下が記録される可能性がある。それゆえ、中心暗点を示す視神経炎でも低下が記録される可能性があるから、診断には注意が必要である。

9216
4、 スターガルト病 家族性黄斑萎縮 Stargardt disease

◎30歳女性が両眼のボヤけを愁訴に受診した。視力低下は軽微だが眼底を見ると黄斑の反射が鈍い。

○Stargardt病はfundus flavimaculatus(黄色斑眼底)とも呼ばれ、通常20歳以前に発症する黄斑部が変性する疾患である。 この病気では、両方の目の中心視野に進行性の欠損が起きるが、周辺視野には影響がない。

○Stargardt患者では網膜の錐体が徐々に変性する。 錐体は黄斑に集中し、中心視力や色の判別に役立っている。この病気のため視野中央に暗い部分が出来、色覚も結局は衰える。通常、常染色体劣性の遺伝形式で受継がれるが、Stargardt病の優性遺伝子もある。

○徴候  Stargardt病は進行性の病気である。 Stargardt病の進行速度は個人によって違う。 最初の徴候は穏やかなことが多いが、そのうちに視力が0.5まで下がった後には視力が0.2に達するまで急速に悪化することがある。 この水準で、視野は普通は安定する。 早い時期の徴候 は眼鏡でもコンタクトレンズでも補正できない視野中央の暗点である。明るい日光の下からより薄暗い部屋の明るさ合わせる暗順応の困難がみられる。より進んだ時期での徴候は、中心視力の進行性の悪化、中心視野の暗点、色を感知する機能の減弱である

○診断 初期には、Stargardt病の子供には視野について不明瞭な訴えをする。この時点では、網膜からは、まだ正しい診断が困難で、検査を継続する必要がある。そのうちに、眼底にはより明白なStargardt病の変化が現れる。Stargardt病の臨床所見を発見したら、暗順応テストと電気生理学的な検査を指示する。視力と色覚は中心部の機能の、またAmslerチャートはもう少し外の視野を観察するのによく使われる。
フルオレスセイン蛍光眼底撮影は網膜の循環系を評価し、レーザー光凝固などの処置が必要であるかを教える。

リウマチの治療に使われるクロロキンなども似たような網膜の変性(牡牛の眼bull’s eyeと呼ばれる)をおこすので診断には注意が必要。

処置 Stargardt病には確立された治療法はまだない。
患者の網膜に漏出点があればレーザー光凝固の処置が行なわれる。補助具によって周辺と残った中心視を利用できる。 大活字、特別な拡大鏡および望遠鏡などがこの補装具には含まれる。

◎1997年に、Stargardt病の遺伝子が発見され、黄色斑眼底と呼ばれていたものと同じ疾患の別の表現型ということになった。この遺伝子ABCRは網膜光受容細胞の退化の原因である。
この様な研究によって、多くの網膜色素変性症と呼ばれる疾患群と共に、この病気の遺伝が理解されることは新しい診断法と治療法の開発のためにも重要だが、診断が即治療開始に結びつかないところがいまだ難点である。私たち臨床医には、実際に治療できる疾患をきちんと診断して正しい治療に早く乗せることが何よりも大事。
ーーーーーーーーーーーーー引用終了ーーーー

9217
今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。

管理頁
清澤眼科医院通信最新ページへ(リンク)します

Categorised in: 未分類