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2008年8月16日

579 網膜色素上皮剥離

中心視野の変視
網膜色素上皮剥離という疾患があります。視野の真ん中がゆがんで見えるのですが、その原因が網膜の下にある網膜色素上皮の下に水がたまって網膜と色素上皮が共に脈絡膜からはがれているという疾患です。これは網膜と色素上皮の間に水がたまる網膜剥離とは別の疾患で、網膜剥離よりは加齢黄斑変性に関連した病態です。また中心性漿液性網脈絡膜症とも異なる概念です。

本態性網膜色素上皮剥離と呼ばれて、単に非進行性にこの色素上皮剥離だけを生じるタイプと、加齢黄斑変性の一つのステージであって網膜下の出血がまだ現れていない段階のものという2つを分けて考える考え方があるようです。

この考え方に立脚してRetinal Pigment Epithelium (RPE) Detachment⇒リンクのぺージには加齢黄斑変性や網膜下の腫瘍などの鑑別診断なども紹介されています。
この文章の中で網膜色素上皮剥離の90%は漿液性網膜剥離を合併し、男性であること、平均年齢は44歳である事、中等度以上の精神的なストレスのレベルにさらされている事など原発性網膜色素上皮剥離では中心性漿液性網脈絡膜症との著しい類似性が見られるとしています。

断面図
またAge Related Macular Degeneration (ARMD) pathology & treatment⇒リンクは、この病態を加齢黄斑変性の一部としてわかりやすい図で説明し、関係するリンク先も豊富に示しています。ここでは網膜色素上皮剥離はFibrovascular retinal pigment epithelial detachment (PED):として扱われ、Occult CNV type 1と名付けられています。この場合は加齢黄斑変性ですから平均年齢が10歳ほど原発性のものより高いようです。

前置きが長くなりました。

1
本日は高齢者に見られる網膜色素上皮剥離:その臨床的鑑別、自然経過、そして病理学的意義という論文を紹介します。

Pigment epithelial detachment in the elderly
Clinical differentiation, natural course and pathogenetic implications

原典は グレーフェ臨床実験眼科学Graefe’s Archive for Clinical and Experimental Ophthalmologyというドイツのもっとも有名な臨床雑誌です。 2004年2月19日ページ 533-538

著者 D. Pauleikhoffほか

2
漿液性網膜色素上皮剥離の血管新生の特徴、自然経過および予後を知るために高齢の患者で観察を行った。その目的は、色素上皮剥離をその血管新生の特性に従って分類し、異なる色素上皮剥離での網膜下の血管新生の特徴、特徴的な臨床的特長そして、視覚と形態学的変化の経緯を分析擦ることとした。

方法:
フルオレセインとインドシアニン・グリーン血管造影を101人の患者(53-87歳; 63女性63、男性38人)で行われ、漿液性色素上皮剥離とドリュゼンに関する臨床的徴候で分類された。

3
結果:
漿液性色素上皮剥離の異なる形式が特定された:
1)ポリープ状脈絡膜血管障害 polypoidal choroidal vasculopathy(PCV)は14人の患者(13.9%)で見つかり、
2)72人では血管性の漿液性色素上皮剥離(71.2%)が見つかった。
3)また15人(14.9%)では無血管性の色素上皮剥離が見られた。

すべての色素上皮剥離が同様の視力障害をもたらした。無血管性の色素上皮剥離は血管性の網膜色素上皮剥離より病変は小さく、血管性色素上皮剥離は、ポリープ状網膜色素上皮剥離よりも小さかった。

経過観察の間、ずっとこれらの違いはいつも存在していたが、観察の初期には拡大し、すべての網膜色素上皮剥離は後には小さくなった。

すべての網膜色素上皮剥離はこの経緯を取ったが、視力は結局低下した。それには網膜色素上皮の萎縮を無血管性網膜色素上皮剥離では伴い、他の2つの形のものでは円盤状の瘢痕や網膜色素上皮の裂孔を伴っていた。

4
結論;
異なった組み合わせではあったが、すべての網膜色素上皮剥離で、視力障害と病巣の拡大とその後の縮小という同様の臨床経過が観察された。

これは非親水性のブルッフ膜の障壁に援けられて、色素上皮とブルッフの膜の間に蓄積する液体を色素上皮細胞がポンプ作用で外に送り出していると言う従来から提唱されてきた仮説と矛盾しない。
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清澤のコメント;
正常OCT
視力の低下から網膜色素上皮剥離が疑われた場合、現在ではその診断はOCTという網膜断層像を見る機械で網膜の断面を見るとはっきりとその診断がつけられます。(下の図を見てください、オレンジ色の色素上皮の下に水が溜まって網膜を押し上げています。これは正常な上の図とは違っています。)(図の出典)

色素上皮剥離OCT
この論文で分る事は、その中には3つのタイプが有り、それは無血管性色素上皮剥離、血管性網膜色素上皮剥離、そしてポリープ状網膜色素上皮剥離だということです。その分類は蛍光眼底撮影で為されますが、血管性網膜色素上皮剥離がもっとも多いものです。前者は症状は軽く、後者は重篤です。いずれも一時期は剥離が広がるが、やがて小さくなると言います。

しかし、視力はやがて下がってゆくとも言っています。
私なら循環改善のプロスタグランジン製剤やカルナクリンを投与しますが、これらには有効と言う証拠があるわけではなく、確立された視力低下の予防法や視力回復のさせ方は残念ながら無いようです。

この疾患が網膜下の新生血管に関連したものであるとすれば、今後は血管新生黄斑症等に準じてアバスチンの硝子体内注射なども検討の対象になって来るかも知れません。

今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。

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