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2008年6月13日

590 下向き眼振 downbeat nysTAGSmus

下向き眼振の患者さんが見えました。高齢のご夫人でふらふらと世界が揺れている、めまいがひどくて困るという訴えでした。何軒かの眼科、耳鼻科、神経内科を受診し治療も受けていますがどうもしっくりこないというようなお話です。
診察してみますと横下に目を向けたときに、すっすっと下にひかれるような眼球の震動が見られます。あまりはっきりした形ではないのですが、下向き眼振と診断し、大学病院の神経耳鼻科の先生に更なる精密検査をお願いしました。そこで、今日は下向き眼振を説明してみましょう。

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下向き眼振(downbeat nysTAGSmusですが, down beating nysTAGSmus, down-beat nysTAGSmusなどと書く人もいます。)は、垂直方向への眼球の振動でその急速相が下向きのものです。この眼振は脳幹の下部や小脳の病変で見られます。この眼振はアニメーションでその概要を見ることが出来ます。実際には視線が向く各方向で同じわけではなく、左右の側方を見て、しかも下方向に視線を向けると振幅が大きくなります。

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その概要は次の論文に詳しく、図を含めてで見ることが出来ます。それによれば、次のような分析もあります。垂直方向の追従眼球運動を中央からのさまざまな距離で動かさせて見ると、下向き眼振は下向きに固有な追従眼球運動に特有な訳ではなくて、あらゆる追従運動に続いて自然に発生する眼振がその本態です。

回転椅子
また、全ての患者では”患者自身の頭部に固定された視標を固視することで患者が座った椅子を回転させて誘発される前庭性の眼振を抑制する力”が弱まっています。このことから、下向き眼振は、中枢性の垂直方向の眼球運動の時の内耳にある前庭と眼球運動を司る部分を結ぶ経路に異常を持った、前庭眼振の一種であると結論されます。

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J N Wagnerらは下向き眼振117例の原因と特性の分析を報告しています。この文献を見ますと、次のように書いてあります。

下向き眼振(Downbeat nysTAGSmus (DBN))は後天性の眼振でも、もっとも多いものです。 この論文では1992年から2006年の間に受診した下向き眼親振患者117例の診療録を調査しました。その結果 62% では原因が特定され二次性下向き眼振(“secondary DBN”)とされました。

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最も多かったのは小脳変性で23人、次は小脳の虚血10人でした。しかし38%ではやはりその原因は分らず、原発性ということになりました。原発性と2次性の下向き眼振を合わすと、前庭障害を伴うものは36%を占め、MRIが正常であっても多発脳神経障害と小脳アタキシアが見られました。

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結論として、原因不明の(原発性)下向き眼振は画像診断の発達にもかかわらず今もまれではありません。この結果から、原発性の下向き眼振は、 “純粋型” 下向き眼振 (n = 17); “小脳性”下向き眼振(すなわちMRIは正常で、小脳サインを伴った下向き眼振 (n = 6); そして両側の前庭障害、小脳症状、末梢性神経障害の3つのうちの2つの特徴を併せ持った “症候性” 下向き眼振(n = 16)に分けられます。おそらくこの群は多系統神経変性症によるものでしょう。

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この疾患の治療薬剤を示した文献は多くは無いですが、Kallaらは、4-Aminopyridine が下向き眼振での前庭の垂直および水平方向への神経積分を改善させる(Brain, 2007; 130: 2441 – 2451)と報告しています。この様な薬が今後は使われることでしょう。

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今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。

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