先日の介護保険審査会の席で、米国で中国産の原料を使ったヘパリン製剤の投与後にショックを発症して死亡を含む、アレルギー反応の患者が多数出ているという話を聞きました。 (管理頁)
帰ってからネットで調べますと本当のようです。
米国のバクスター社が中国の会社が出荷した原料を加工して製造したヘパリンの投与を受けた患者にショックを起こす患者がおおく、すでに(死亡4を含む)350人の患者が出ているという事を米国のFDAが本年2月11日伝えています。
この会社のヘパリンは米国と近隣諸国では市場の50%を占めていますが、日本には輸出されては居ないとの事です。米国では他社の生産を増やして急場をしのごうとしています。どうもヘパリンと似た構造を持つ異性体が5から20%混入していたようで、通常の分析の目をすり抜けたということの様です。現在の最新3月7日の情報にリンク
追記(3月19日);日本の3社が同じ原料供給工場の原料を使用していた事が分り、日本国内でも製品の回収が始まったという事です。
このブログは眼科のブログですから、”眼、ヘパリン”をキーワードにもう少し調べてみました。
1) 眼科病棟でも点滴ラインを数日間維持する必要がある手術患者やステロイドパルス患者などの場合には、ヘパリンをもちいたヘパロックという方法がよく用いられます。これは静脈に入れたテフロンの柔らかい留置針にヘパリン溶液を最後に僅か流して、逆流したテフロン針内の血液が凝固して再度針を刺しなおす事になるのを防ごうというものです。
(今回の騒ぎの前、まず最初にはSerratia marcescensで汚染されたロットが有ったのでこれをリコールするという発表が2007年12月に出ています。これも実は同じ事故だった恐れがありそうです)
またこのほかにもいくつかのヘパリンに関連した話題を見つける事が出来ました。
2)眼内レンズの中にはヘパリン被覆レンズ(heparin coated lens, ヘパリンコーテッドレンズ)というものがあります。これは白内障手術で使う人工水晶体の表面をヘパリンで処理したもののことです。これを使うと、術後のレンズ表面での長期的な混濁が逓減できるという話です。
3)また小児の白内障手術の時の還流液にヘパリンを混ぜておくと、後発白内障と呼ばれる残された水晶体の後ろの膜の混濁が抑えられて、後発白内障を切開する処置をしなくてはいけなくなる率が下がるといいます。小児では簡単にヤグレーザーでの切開が出来ないため、後発白内障の処理というとまた全身麻酔が必要になるので、この違いの持つ意味は大きいのかと思います。
この2)と3)には今回の事故の影響はなさそうです。
4)糖尿病網膜症を持つ患者さんの少なからぬ比率の患者さんが、人工透析を受けています。この透析の際にも血液の凝固を抑える目的で透析中にはヘパリンが用いられているはずです。その時の使用量は1)2)3)に比べるとはるかに多いですからもし問題のヘパリンが眼科の患者に問題を起こすとすればこのケースかと思われます。
どうも中国製の医薬品や食品にはこのところ問題が多発しています。
先日の日本に輸出された餃子に殺虫剤が入っていた事件、風邪薬にジエチレングリコールが混入していて多数の事故になったパナマの事件、これもジエチレングリコールの混入が疑われるとして中国製の歯磨き粉の使用を避けるよう米国FDAが勧告を出した事例、米国に輸出されたペット飼料に毒物(メラミン)が混入していて多数の動物が死んだ事件⇒リンクなどがありました。
中国では病院で使われる薬剤での事故も中国の市場は日本の戦後の社会のようにまだいい加減な品物が流通できるような段階を脱しては居ないのでしょうか?今後の推移を見守りましょう。
追記:
2008年4月21日、Dr Janet Woodcock(FDA医薬品評価研究センター長)は記者会見で、過硫酸化コンドロイチン硫酸が「『メディエーターを増加させ、それがヘパリンで見られる低血圧など一連の有害反応の原因になっている可能性がある』ことがFDAの研究者によって明らかにされた」と報告、「過硫酸化コンドロイチン硫酸と観察されている有害反応との間にこのような堅固なメカニズム的つながりがあることから、この汚染物質が原因であるという説が著しく強まったと言える」と述べ、「ようやく話がひとつにまとまり始めた」と言い添えた。関連のレターは下記⇒リンク
http://www.fda.gov/cder/warn/2008/320-08-01.pdf
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