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2007年12月2日

462特発性肥厚性硬膜炎の眼症状と治療idiopathic hypertrophic pachimeningitis

1肥厚性髄膜炎という診断を受けている患者さんから質問を受けました。 (管理頁)ネットで調べて見ますと、髄膜炎の説明はあっても日本語での特発性肥厚性硬膜炎の説明、ことに眼の症状に関係した素人向けのものは見つかりませんでした。日本語および英語のページを探してみますと、感染性のもののほかに全身性紅斑性狼瘡(systemic lupus erythematosus、SLE)などではこの病気が現れることが書いてあります。

2この疾患は原因がわからないから特発性なのですが、組織検査をしてみると梅毒や結核などが見つかることもあるようです。通常この診断名は積極的に生検をして診断するというよりも、除外診断を進めて行き、MRIなどの画像診断で脳硬膜の肥厚が見つかった場合に、付けられる病名のようです。

サジタル(http://www.scielo.br/scielo.php?script=sci_arttext&pid=S0004-282X2003000100021&lng=en&nrm=iso)
NEUROLOGY (2004;62:686-694)のニュースと総説という欄にM.J. Kupersmith, MDほかのIdiopathic hypertrophic pachymeningitis(特発性肥厚性髄膜炎)という論文がありました。これを通読してみますと、この疾患の概要がわかります。これをおばあちゃんにもわかる調で訳し、次に質問者からの質問と私の答えを都合3件再録してみます。

3特発性肥厚性髄膜炎
背景: 肥厚性硬膜炎は局所的に脳硬膜の瀰漫性肥厚を示す珍しい病気であり、リウマチ性関節炎、梅毒、ヴェゲナー肉芽腫症、結核、および癌にも関連していることがあります。特発性肥厚性髄膜炎のMRI所見と臨床結果および治療についての説明は、従来はわずかな症例についてしかありません。

4研究の目的: 特発性肥厚性髄膜炎(IHP)患者の臨床と検査の評価、病気の経過、そして治療を調査して、臨床経過とMRIの結果を関連させて、特発性肥厚性髄膜炎IHPに関する諸報告を振り返ってみます。

5方法:男性9人と女性3人の12人の患者での回顧的症例検討です。年齢は39~88歳で平均年齢は55歳です。神経画像検査と髄膜または眼窩の生検、の両方またはいずれかで特発性肥厚性髄膜炎と診断できた症例。臨床的な特徴、検査結果、コントラスト増強したMRI、そして臨床的な結果を各症例毎に記録しました。 経過観察期間は3カ月から16年で、その平均は3.5年でした。

10結果: 初診時の主な臨床症状は、頭痛(11例)、視力低下(7例)、複視(4例)、乳頭浮腫(2例)、他の脳神経症状(3例)、運動失調(2例)と、痙攣(1例)でした。初診時のMRIでは、硬膜の異常なMRIでの増強造影効果の有る場所は臨床所見と関連していました、そして、蝶形骨大翼はすべての患者で侵されていました。赤血球沈降速度は5例で亢進していました。 脳脊髄液の蛋白は6例で増加し、リンパ球増加は4例にありました。脳硬膜生検5例と眼窩の軟部組織の生検1例では、小さな成熟したリンパ球、形質細胞、類上皮組織細胞の浸潤を示しました。しかし、新生物、血管炎、感染性病原体は見られませんでした。

脳脊髄液も採取した組織にも菌はいませんでした。ステロイド治療で視力が8例中7例では改善し、頭痛は11例中10例で制御でました。5例ではその他の神経症状に部分的な改善がありました。6例ではステロイドの離脱中に再発があり、 一例は進行性の経過で死亡しました。 4例にはメトトレキセートやアザチオプリンの抗癌剤がステロイドの減量の目的で用いられました。11例で行われた経過観察MRIでの変化は80%が臨床症状と相関していました(p = 0.01)。

12結論: 特発性肥厚性髄膜炎IHPはMRI画像で疑い、ついで生検によって病理学的に診断を確定することができます。 未処置ですと、臨床経過には通常、厳しい頭痛と進行性の神経学的症状の増悪、そして視力の喪失がおきます。 最初は、ステロイドによく反応しますが、臨床症状はステロイドの減量でしばしば再発します。その場合には、時には免疫抑制剤の添加を必要とします。

反復する眼筋麻痺に対する質問
13最初の質問:2007年9月26日朝景色がぼやけていまして気にしながら仕事しておりましたが、10月5日ころより悪化し10月9日眼科と神経内科で診ていただき18日MRI(造影)と血液、尿検査を行いましたが、特に異常なく外転神経麻痺(右目)ということで現在もメチコバールを服用しておりますが、改善しているとは感じられません。他に高血圧(140前後~90前後)で薬を飲んでいます

今回の発症が4回目で、1回目は12年前であり、2ヶ月程で完治し7年前に2回目、2年半前に3回目ですが2・3回目は症状が軽く、2~3週間で治療もなく治りました。 今回4回目ということと症状がひどいことから不安な日々を過ごし悪い方へと考えてしまいます。(今でも足元で30㎝ほど複視になります)
今後、どのような治療法をすれば、また将来手術で ということになるのでしょうか。 お忙しいところ申し訳ありませんよろしくご意見をお願い致します。

14最初のお答え:
外転神経麻痺を都合4回同じ側に繰り返し、今までの3回は回復したというわけですね。
血管障害にしてもこれだけの回数で、しかも同じ側だけに起きるというのも変ですね。

小さな血管障害では多くの場合は画像診断では変化が出ませんので、それ自体は驚くことではないのですが。
このような姿形の患者さん(65歳男性)では、まずは糖尿病の存在を考え採血なり、糖負荷試験を行います。そのほか自己免疫性の疾患や、膠原病などの血管炎を起こすような疾患はないでしょうか?それらも採血検査でわかります。

耐糖能の低下が無ければ、ステロイドへの反応性をステロイド経口投与ででも見て炎症性の疾患の可能性を考えたいところでしょうか?

患者さんを拝見しないと私にはやはり疾患の全体像が見えていない気が致します。
主治医の先生によくお聞きください。または東京までおいでになって、私の診療所を一度お訪ねください。何か参考になる意見が言えるかもしれません。

152度目の質問:63歳の主人のことでご相談させていただきます。
先週には本人より先生にご相談させていただいたようですが、この3~4日は口数が少なく、好きなPCも見なくなり心配しております。 私も先生のご意見を賜り、主人の病状を認識し少しでも支えになればとメールさせていただきました。より詳しくご意見をいただきたく、主人にこれまでの加療しました病気を聞きまして記述させていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
1.約25年前
  右上頭部に連続的な痛み:1ヶ月半
  ・市民病院/脳外科専門病院で検査しましたが異常なし
  ・約1ヶ月半で自然回復。その後唇・鼻周辺に麻痺があったようです。
2.12年前
  朝、ぼやけて午後に悪化
  ・総合病院(眼科・神経内科)で検査
  ・右目を動かす神経麻痺との診断でビタミン剤を服用
  ・約2ヶ月で回復
3.7年前
  夕方、歩行中足元がはっきりしない と気付きましたが悪化せず2週間ほどで回復 : 病院には行きませんでした。
  その1ヵ月半後、右こめかみの表面に「ぴりぴり」とした連続的な痛みがあり1ヶ月以上経過しても回復せず、大学病院に検査入院
  ・特発性硬膜炎との診断
  ・MRI/髄液など検査で異常なく、自分勝手に炎症を起こしているとの診断でした。
  ・自分では感じてないようですが顔面麻痺があるとのこと(測定器の検査で?)
  ・痛みを訴えるのでステロイドを5日間服用
  ・その後、15日程で回復したようです。
4.4年半前
  朝、景色がぼやける
  ・眼科/神経内科でMRI、血液、尿検査しましたが異常なく、治療もぜずに2週間程で回復
5.現在(9月26日発症)
  ・10月5日より症状悪化
  ・眼科/神経内科でMRI、血液、尿検査しましたが異常なく、右外転神経麻痺との診断・・メチコバールを服用
  ・MRIで右鼻に膿が一杯溜まっている とのことで同病院の耳鼻科の先生に写真を見ていただきましただが、今回の病気に関係なく治療の必要もないとの診断でした
  ・先週神経内科に通院、まったく動いていないとのことでプレドニゾロン錠を14日間:6錠、その後14日間:3錠服用し様子を見ようと言われて服用しております。
現在の斜視は、1m離れて右に50cm位のようです。
長々とお書きしまして申し訳ございません。 よろしくお願い申し上げます。 

212度目の質問へのお答え:
特発性硬膜炎ないし肥厚性硬膜炎という疾患があり、このような頭痛や脳神経の麻痺を時に示すとされています。
ステロイドの中等度の量をお使いになる今の治療法でよいと思われますが、慢性で難治性のぶどう膜炎や強膜炎などの眼科疾患の延長で考えますと、ステロイドでコントロール困難な場合には、抗免疫薬などの使用も考えられそうに思います。
海綿静脈洞付近でこの硬膜の炎症が神経に影響を与えているように見えます。
治療は一般的には、神経内科が眼科よりも上手であるかも知れませんね。
画像診断はコントラストエンハンスしたMRIがよさそうに思われます。
アキシアル図の出典は上と同じ。

243度目の質問:
清澤先生。
早々のご回答誠にありがとうございます。
①外眼筋の炎症・腫れはMRIで確認できるのでしょうか
  毎年2度(6・11月:高血圧の治療で)の血液・尿検査を行ってきましたし、今回も2度検査しましたが異常なく、複視以外の症状は全く訴えておりませんし、私から見ましても右目が内側に寄っている以外は、何も異常がないように思われます。今後主治医の先生(大学病院の神経内科の准先生)に何を質問すればいいか?
  主治医の先生には、いろいろ質問するようですが、困りましたね。メチコバール・ステロイドしか治療法がないんですが、と言われてるようです。ステロイド投与は12月19日(28日間)までですが、好転しない場合
②続けるべきでしょうか(期間はいつごろまでいいのでしょうか)。1クール(14日間)で下痢の副作用がでています。(5~6回ほど/日)
③今回の28日間投与で、止めてもいいのでしょうか

お礼のつもりが、また質問になりまして誠の申し訳ございません。
よろしくお願いいたします。

223回目のお答え:
依然大変なのですね。
肥厚性硬膜炎という診断名があり、其れは非特異的な炎症が脳の周りの骨の内側の膜にできて痛みや神経の圧迫症状、または脳圧亢進を引き起こすという疾患です。この患者さんの場合は、外転神経が炎症の拡大か、圧迫かは不明ですが影響を受けて麻痺しているということでしょう。

31原因には結核やその他の感染症もありますが、多くは非特異的な炎症と考えられます。骨を穿って組織標本をとりその標本を専門家に顕微鏡で調べてもらう(病理組織診断,生検)をするならば別ですが、多くの場合には画像診断や血液検査での炎症の強さを示す指標(白血球数やCRPなど)を見たり、または痛みの強弱を指標にステロイドを増減します。ステロイドは依存状態になって、ステロイドを切ろうとすると再発するという抜き差しならぬ場合に陥ることもあります。効果が無ければ、ステロイドを更に増やすか、中止するかの選択でしょう。
リウマチや膠原病の専門家に頼んで炎症を抑える目的で少量の抗癌剤を使うような治療もありますので、神経内科、脳外科の先生が不得意であれば、其れを膠原病内科の先生に依頼してもらう手もあるでしょう。

今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。
管理頁
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