お問い合わせ

03-5677-3930初診受付

ブログ

2007年11月25日

450 薬剤性眼瞼痙攣

1薬剤性眼瞼痙攣というものが有ります。これはやや長期に亘って向精神薬などを使っているとその結果として眼瞼痙攣を示す患者さんが出てくるということです。

2この夏に精神医学の専門誌から薬剤性眼瞼痙攣についての解説の寄稿を求められました。(「臨床精神医学」第36巻増刊号(2007年増刊号)特集/必須!向精神薬の副作用と対策―安全な薬物療法のために―「眼瞼けいれん」)若倉先生に精神科の薬や眠剤の使用が眼瞼痙攣の原因になっている患者さんが多いという話を聞いておりましたので、この依頼原稿をきっかけに私も自分でボトックスを使って治療している眼瞼痙攣の患者さんのカルテの中からこの条件に合う患者さんを探し出してもらいました。

3この調査に当たっては、当医院では初診時にボトックスを打つ前に全例に瞬きの検査をすると共に向精神薬を含む常用薬剤を聞いていますので、この調査には新たな質問を患者さんに直接聞くことはなく行うことが出来ました。下に引用するのが、この論文の一部です。

ご自分が薬剤性眼瞼痙攣で悩んでおられる方も少なくはないと思いますので、専門的な単語が多く読みにくくて恐縮ですが、此処にも紹介させてください。

ーーー引用開始ーーーー

4第2章 臓器別副作用
11.眼症状
1.眼瞼痙攣
清澤源弘(清澤眼科医院、東京医科歯科大学眼科)、鈴木幸久(三島社会保険病院、東京医科歯科大学眼科

5はじめに
眼瞼痙攣を含むジストニア系疾患は、中枢に原因があると考えられている。神経精神科系薬の長期投与中に眼瞼痙攣を発症したという報告がいくつかあり、それらは、薬剤性眼瞼痙攣であると推測される。ここでは、本態性眼瞼痙攣の特徴と現在考えられている発症メカニズムについて説明し、その発症メカニズムに照らし合わせて眼瞼痙攣を誘発する可能性のある神経精神科系薬について述べる。

1)眼瞼痙攣の病態と治療 (略)
2)眼瞼痙攣治療薬としてのベンゾジアゼピン系抗不安薬(略)

8
3)薬剤性眼瞼痙攣
神経精神科系薬の長期投与によって、薬剤性と考えられる眼瞼痙攣が発症したという報告がいくつかある。その多くは、遅発性ジスキネジアという従来から報告のある概念とも重なるものであろう。

13Mauriello らは、238例の眼瞼痙攣患者を調べ、そのうち14例は眼瞼痙攣発症前から、抗うつ薬、抗精神病薬、抗ヒスタミン薬、抗パーキンソン病薬、または、これらを組み合せて服用していたと報告している4)。これらの薬剤の投与開始から眼瞼痙攣までの期間は、短い症例で2ヶ月、長い症例では35年とばらつきが大きいようである。

15Wakakura らは、254例の眼瞼痙攣患者の長期投与薬を調べ、35例でエチゾラム、53例で他の抗精神病薬が眼瞼痙攣発症前から投与されていたと報告している5)。エチゾラムを投与されていた35例のうち、13例はエチゾラム単独投与、21例はベンゾジアゼピン系薬やメジャートランキライザーなど他の薬剤を併用していた。

エチゾラム単独投与群における、エチゾラム投与開始から眼瞼痙攣発症までの期間は、28例で1年以上であり、13例で5年以上の長期であった。また、彼らは原因薬の中止または変更によって、薬剤性眼瞼痙攣が軽快するかどうかについても調べている。エチゾラム単独投与患者13例のうち9例を内服中止にしたところ、7例で眼瞼痙攣の改善傾向がみられたと報告している。

15我々は、清澤眼科医院において経過観察されている、薬剤性眼瞼痙攣患者18例(男性7例、女性11例、50.4±17.5歳)に処方されていた神経精神科系薬について調べた(表1)。

ベンゾジアゼピン系睡眠・抗不安薬は、超短時間型(トリアゾラム、ブチゾラム)、短時間型(塩酸リルマザホン、ロルメタゼパム)、中時間型(ロラゼパム、フルニトラゼパム、ニトラゼパム)、長時間型(ジアゼパム)と様々な作用時間のものが、あわせて18例中17例に処方されていた。

16類似薬であるチエノジアゼピン系薬(エチゾラム)も5例に処方されていた。ベンゾジアゼピン系またはチエノジアゼピン系薬は、18例中全症例に処方されており、14例ではこの系統の薬剤が2種類以上処方されていた。

抗精神病薬・抗うつ薬では、セロトニン・ドパミンアンタゴニスト(リスペリドン、塩酸ペロスピロン)が6例、MARTA(オランザピン、アリピプラゾール)が2例、ベンザミド系(スルピリド、塩酸チアプリド)が6例、選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)(塩酸パロキセチン、マレイン酸フルボキサミン)が4例、フェノチアジン系(塩酸クロルプロマジン)が4例に投与されていた。その他、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(酒石酸ゾルピデム)が1例、気分安定薬(炭酸リチウム)が2例に投与されていた。

16ベンゾジアゼピン系薬によって薬剤性眼瞼痙攣が発症する機序については、ベンゾジアゼピン系薬によって抑制されていた眼瞼痙攣が再発する機序と同様に、基底核-視床-大脳皮質ループを用いて説明できる。

不眠など他の疾患治療の目的でベンゾジアゼピン系薬を長期間投与していると、中枢性ベンゾジアゼピン受容体のdown-regulationに伴って基底核-視床-大脳皮質ループの活性化を招き、眼瞼痙攣が発症すると推測される。また、中枢性ベンゾジアゼピン受容体のdown-regulationは可逆的であると予想されるので、ベンゾジアゼピン系薬の中止により薬剤性眼瞼痙攣の軽快が期待できる。

17セロトニン・ドパミンアンタゴニスト、MARTA 、ベンザミド系薬、フェノチアジン系薬には、抗ドーパミン作用がある。ジストニア患者では、基底核のドーパミンD2受容体結合能の低下2)が報告されていて、ドーパミン系の異常が発症原因に関係していると推測されている。

そのため、これらの抗精神病薬・抗うつ薬も眼瞼痙攣の発症に関与した可能性がある。また、SSRIには、抗コリン作用があり、長期投与によりアセチルコリン受容体のdown-regulationが起こることによって眼瞼痙攣が重症化することはありうる。

しかし、前述のように、薬剤性眼瞼痙攣患者18例のうち全例で、ベンゾジアゼピン系またはチエノジアゼピン系薬が投与されていたことから、我々はベンゾジアゼピン系薬が薬剤性眼瞼痙攣の原因薬として重要であると考えている。

4)本態性眼瞼痙攣と薬剤性眼瞼痙攣の関連(略)

表1、薬剤性眼瞼痙攣患者18例において投与されていた神経精神科系薬
  薬剤             投与症例数
ベンゾジアゼピン系薬
超短時間型(トリアゾラム等)     3例
短時間型(ロルメタゼパム等)     4例
中時間型(ロラゼパム等) 11例
長時間型(ジアゼパム等)       2例
チエノジアゼピン系薬         5例
非ベンゾジアゼピン系睡眠薬      1例
セロトニン・ドパミンアンタゴニスト  6例
MARTA                 2例
ベンザミド系             6例
選択的セロトニン再取込み阻害薬    4例
フェノチアジン系           4例
気分安定薬              2例

文献
1. Suzuki Y, Mizoguchi S, Kiyosawa M et al. Glucose Hypermetabolism in the Thalamus of Patients with Essential Blepharospasm. J Neurol. 2007; 254: 890-896.
2. Perlmutter JS, Stambuk MK, Markham J et al. Decreased [18F] spiperone binding in putamen in idiopathic focal dystonia. J Neurosci 1997; 17: 843-850.
3. Garretto NS, Bueri JA, Rey RD, Arakaki T, Nano GV, Mancuso M. Improvement of blepharospasm with Zolpidem. Mov Disord. 2004; 19: 967-968.
4. Mauriello JA Jr, Carbonaro P, Dhillon S, Leone T, Franklin M. Drug-associated facial dyskinesia-a study of 238 patients. J Neuroophthalmol. 1998; 18: 153-157.
5. Wakakura M, Tsubouchi T, Inouye J. Etizolam and benzodiazepine induced blepharospasm. J Neurol Neurosurg Psychiatry 2004; 75: 506-509.

ーーー引用終了ーーーー
さていかがでしょうか?
コメントなどいただけたらうれしいです。

今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。
管理頁
清澤眼科医院通信最新ページへ(リンク)します

Categorised in: 未分類