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2007年11月18日

443 白質脳症に伴う視覚症状(眼の問題)

12白質脳症を患った患者さんから眼の相談をインターネットで受け、さらにこの患者さんには、その後私の医院を訪ねていただきました。

また、先週の東京地区の神経眼科勉強会でも一人の患者さんの例が提示されていました。(管理頁

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そこで白質脳症とそれに伴う眼の症状を私なりに調べなおしてみました。厚生労働省の難病に関する委員会の報告なども参考にしています、この病気に興味を持つ方々を対象にしたおさらいとお考えください。

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◎白質脳症

○脳・脊髄には、神経細胞が多数存在して肉眼的に灰色に見える「灰白質」という部分と、神経細胞から出る神経線維からなり、解剖すれば白色にみえる「白質」とがあります。この「白質」は、神経線維が髄鞘で包まれている(有髄神経線維) ので、白色に見えます。

大脳では、大脳皮質・視床・基底核などが「灰白質」であり、放線冠・脳梁・内包などが「白質(大脳白質)」に当たります。「白質脳症」は主に大脳の白質が障害される病態です。

4○原因としては、ウイルス感染、脂質代謝異常、放射線照射、抗悪性腫瘍剤などさまざまなものがあります。本ブログ記事の最後の表をご覧いただくと、通常は白質脳症とは呼ばれない多発性硬化症などをも含む、広範な概念であると理解していただけるでしょう。

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◎最近、この白質脳症で話題になっているのに、他疾患治療目的の薬剤投与に伴って起きるもので、悪性腫瘍の治療薬、特に 5-フルオロウラシル(5-FU)とその誘導体によって起こる物があります。「カルモフール白質脳症」の推定発現率は 0.026%とされていますが、それ以外の医薬品としては、メトトレキセートもあります。

薬剤による白質脳症は、軽症の場合は可逆的で、薬剤の中止によって回復しますが、重症の場合は非可逆的で後遺症を残したり死亡につながることもあります。

11○「白質脳症」の早期発見には初発症状を見逃さないことが大切とされます。初発症状としては、歩行時のふらつき(60%)、口のもつれ(28%)が多く、物忘れ、認知症様症状がそれに次ぎます。眼科に関連する症状には、眼振13%、共同偏視13%、眼球外転運動13%なども記載されています。

多発性硬化症のように一般的に視神経炎が合併するのかどうかは文献を見ましたがわかりませんでした。むしろ頭頂葉、側頭葉、後頭葉での視路を形成する視放線や眼球運動経路などでの脱髄なのかもしれません。

10○検査としては、脳波検査では最も早期に瀰漫性除波の異常が出現しますが、特異性がやや低く、検出感度がよい頭部MRIが勧められています。MRIでは、T2 強調画像にて大脳白質に中等度から高度のびまん性高輝度病変、T1 強調画像にて上述の部位にびまん性低輝度病変を示すとされています。
PML
このMRIは後で述べるPMLのもので右が左例の進行した図です(http://www.nature.com/bmt/journal/v39/n2/fig_tab/1705548ft.html)白質脳症のMRIの特徴を持っています。

◎類似の諸疾患

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○可逆性後白質脳症(reversible posterior leukoencephalopathy, RPL)という類似の概念があります。可逆性後白質脳症 (RPL)は、Hincheyらが、1996年に「頭痛、意識障害、けいれん、視力障害」を主徴とし、画像上、後頭葉白質を中心に病変がみられ、症状が著明に軽快する~消失する(可逆性 reversible)ものとして15例を報告したものが初めです。

8基礎疾患は様々ですが、共通する病態として高血圧性脳症、あるいは免疫抑制剤 (シクロスポリン、タクロリムス)やインターフェロンアルファ、また、シスプラチン、シタラビン、抗 HIV薬であるサキナビルなどの投与が挙げられています。RPL の病態はまだ十分解明されておらず、その後、低ナトリウム血症の補正による症例なども報告されています。どうもこの概念は先の”白質脳症”の一部として扱うのが妥当であると思われます。私が相談を受けた患者さんも幸い、この疾患のようです。

7○同様の条件の患者さんで、諸神経症状を示すものでは、転移性脳腫瘍,脳血管障害などの可能性も考えて診断を進めることが必要です。

6○進行性多巣性白質脳症(しんこうせいたそうせいはくしつのうしょう,progressive multifocal leukoencephalopathy; PML)は、AIDSなどの免疫不全患者等において起きるJCウイルスにより発症する脱髄性疾患です。予後は非常に悪く、発症後数ヶ月で無動性無言症に陥り、多くの場合1年以内に死亡するとされています。日本語のgoogleで白質脳症を検索するとこちらばかりが出てきますが、これは、いわゆる白質脳症や可逆性後白質脳症(reversible posterior leukoencephalopathy, RPL)とはやや別の概念のようです。

20年も前ですがこの疾患は、私も一例報告を米国で出させてもらったことがあります。これは半盲例で、生検でのウイルス写真も得られていました。後から約一年で死亡したと伺いました。M. Kiyosawa, T. M. Bosley, A. Alavi, N. Gupta, C. H. Rhodes, J. Chawluk, M. Kushner, P. J. Savino, R. C. Sergott, N. J. Schatz, and M. Reivich Positron emission tomography in a patient with progressive multifocal leukoencephalopathy Neurology, Dec 1988; 38: 1864.)

5○びまん性虚血性白質脳症(Binswanger病)認知症の内で脳虚血で起きる物のひとつのタイプにこのビンスワンガー病があります。緩徐に進行し認知症の精密検査で発見されます。

○副腎白質脳症(Adrenoleucodystrophy)遺伝性で10歳前後から体の動きが徐々に損なわれる重篤な疾患です。原因遺伝子が特定されています。

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◎成人の白質脳症の原因疾患(NEJM 2004;350:1888)
(無批判に引用して恐縮ですが上記の論文から翻訳してくれていた方が居ましたのでこの疾患概念の全体像を伺うため引用します。⇒リンク
1. 血管疾患
  1) 皮質下性動脈硬化性脳症(Binswanger’s)
  2) 皮質下梗塞や白質脳症を伴う大脳常染色体優性の動脈疾患
  3) 孤発性CNS血管炎
2. 中毒あるいは代謝性疾患
  1) 一酸化炭素中毒
  2) シアン中毒
  3) 重金属(ひ素、鉛、水銀)
  4) 有機溶剤
  5) 放射線
  6) Marchifava-Bignami syndrome
  7) 中心髄鞘破壊
  8) VB12欠乏症
  9) 低酸素症
  10) サイクロスポリンの副作用
  11) Tacrolimus(タクロリムス、アトピー性皮膚炎薬)の副作用
3. 遺伝性
  1) 副腎白質脳症(Adrenoleucodystrophy)
  2) Metachromatic leucodystrophy
4. 自己免疫あるいは炎症
  1) 急性散在性脳脊髄炎(acute disseminated encephalomyelitis)
  2) 多発性硬化症
  3) SLE
  4) Sjogren
  5) Behcet
  6) PN
  7) Sarcoidosis
  8) ウェゲナー肉芽種症
  9) 傍悪性腫瘍脳脊髄症
5. 腫瘍
  1) 原発性CNSリンパ腫
  2) 血管内播種性リンパ腫
  3) リンパ腫性肉芽種(lymphomatoid glanulomatosis)
  4) 大脳グリオーマ(Gliomatosis cerebri)
  5) Gliomas
  6) 転移性腫瘍
6. 感染症
  1) ライム病
  2) 神経梅毒
  3) 結核
  4) トキソプラスマ脳症
  5) 小血管炎を伴う帯状疱疹感染症
  6) 脳症を伴うHIV(HTLV encephalopathy)
  7) PML

3参考文献:重篤副作用疾患別対応マニュアル
白質脳症 平成18年11月 厚生労働省

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今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。
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