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2007年11月6日

436 アトピー性皮膚炎の眼合併症 (健康教室683より)

アトピー性皮膚炎の眼合併症  (管理頁

健康教室10

健康教室
特集 気になる子供の目の健康
第683集 2007年10月
 p10-p11
の原稿を採録したものです。
以前の記事を改変したものです。

今回、関連する単語解説へのリンクもつけました。ご参考になれば幸甚です。

清澤眼科医院院長、東京医科歯科大学眼科臨床教授 清澤源弘

42はじめに:
アトピー性皮膚炎とは、皮膚炎症を伴うもののうち、アレルギー反応と関連があるもので、先天性の過敏症の要素を持つ疾患です。アトピー性皮膚炎は即時型アレルギーに属しますが、実際には蕁麻疹のような即時型アレルギーと、それよりも反応の遅い遅延型アレルギーが複雑に関与したものであると考えられています。

アトピー性皮膚炎には、家族内発生がみられることとや気管支喘息など他のアレルギー疾患を合併する場合が多いことなどから遺伝的要因も存在すると考えられます。しかし、特定の遺伝子が発症を左右するものではなく、その発症には環境要因も関与します。

43
アトピー白内このアトピー性皮膚炎にはさまざまな眼合併症が知られていて、アトピー患者はいろいろな眼の症状を訴えて眼科を受診します。その中でももっとも代表的なのは白内障と網膜剥離です。

私は、東京医科歯科大学で皮膚科の先生にステロイド離脱中のアトピー患者さん78人を紹介していただき、眼科の検査をした結果をまとめたことがあります。このときの結果を基にアトピー性皮膚炎の眼合併症を振返って見ましょう。

32眼合併症の頻度

ステロイド離脱時のアトピー性皮膚炎患者にはアレルギー性結膜炎が最も多く34%に見られました。ついで多かったのが白内障で25%、角膜表面の細かい傷(表層性角膜炎)が12%、そして網膜剥離が11%でした。このほかに剥離を伴わない網膜格子状変性が3%にありました。円錐角膜もアトピー性皮膚炎に伴うものとして知られていますが、これは1%のみでした。

23アレルギー性結膜炎と表層角膜炎

アレルギー性結膜炎はアトピー性皮膚炎の患者さんにはもっとも多く見られる症状です。顔面の乾燥して肥厚した皮膚の変化が眼瞼の裏側の結膜に現れたものです。このアトピーに伴うアレルギー性結膜炎は強いかゆみを伴います。アレルギー性結膜炎のある眼瞼結膜は、充血して表面に不均一な盛り上がりが多数発生します。この結膜乳頭が眼球の表面の透明な部分、つまり角膜をこするので最も重症なときには角膜の表面に糜爛を生じ、やがて角膜潰瘍になります。この糜爛の初期のものを瀰漫性表層角膜炎と呼び、角膜をフルオレッセイン色素という薬で染めておいて細隙灯顕微鏡の青い光で照らすと細かい緑色の点としてみることができ、正確な診断ができます。

22アトピー性白内障:

白内障は目の中に備わった本来透明なレンズが白く曇る疾患で、多くは老人に見られるものなのです。このアトピー性皮膚炎では年齢にかかわらず若年から見られます。
私たちの調査では、アトピーに伴う白内障年齢分布は14歳から43歳に広がり、その平均年齢は23.2歳と若年でした。性別による差はなく、アトピー性皮膚炎患者の男性では31%、女性では18%が白内障を持っていました。アトピー性皮膚炎の患者での白内障の頻度は、従来の日本や海外の文献でも10-37%です。
私たちの見た患者さんでは左右両眼に混濁のあるものが75%で、片眼のみが曇っていた症例は25%しかありませんでした。
アトピー性皮膚炎に伴う白内障は老人性の白内障とは違った混濁の形を示します。レンズの後ろの膜(水晶体後嚢)の混濁が18眼、レンズの前の膜の混濁は7眼と前後の膜の混濁が多く見られましたが、これは水晶体皮質と呼ばれるレンズの実の部分の混濁を主とする普通の老人性白内障とは違っていました。
白内症手術では人工水晶体が移植されます。手術の後にレンズを取り囲む袋(水晶体嚢)が示す収縮もアトピー性皮膚炎患者では強く、場合によってはいったん正しい場所に入った人工水晶体が袋の収縮によって押し出されて、偏移することがあるほどです。
手術自体は、通常の超音波乳化吸引法で行えますが、患者さんの年齢が若いので水晶体がまだ柔らかく、ほとんど超音波をかけなくても吸引をすますことが可能です。

21網膜剥離:

網膜剥離は、私たちが見た患者さんの11%がもっていました。アトピー性皮膚炎の男性では17%、女性では5%であり、年齢分布は14-30歳で、その平均は21.9歳でした。これは国内の諸文献でも0-8%ですから私たちの診た患者さんでの頻度はそれに近いものですが、この比率は、網膜剥離の自覚症状がない患者さんを対象としたものですから、一般市民における網膜剥離の日本人での発生率である一年間で1万人に1人という数字に比べれば、大変に高い値です。
しかし、日本人のアトピーには網膜剥離が特異的に多いかもしれません。実際、インターネットでアトピーと網膜剥離を掛け合わせて、図を探しても、世界中のページからアトピーに伴う網膜剥離の眼底写真画像はみつかりません。
私が見た少数例ですが、このうち両眼性の症例が4例で片眼のみの症例は5例でしたから、両眼性の網膜はく離の比率も低くはありません。このうち78%は白内障も合併していましたので、眼底のよく見えない白内障患者で手術を行う際には網膜剥離が眼底に隠れていないことをよく見極めておくことが重要です。

44さらにこのアトピーに伴う網膜剥離は網膜周辺の網膜鋸状縁断裂が多く、網膜格子状変性からおきることが多い通常の網膜剥離とは違った特徴を持っています。アトピーの患者は、1)あまりの痒さに眼球を叩く傾向があり、そのために発生する外傷性の剥離が多いからこのような特徴をもつのだ言う説や、2)炎症で鋸状縁が弱っているから剥離が多いのだろうなどの緒説があります。
更に、このようなアトピーに伴う眼合併症が最近増えていると言う話もあります。
また、平成4年に私が仙台の東北大学から東京の医科歯科大学に転勤したたとき、それまでほとんど経験していなかったのに、東京ではたくさんのアトピーに伴う網膜剥離に出会って驚いた記憶があります。その後仙台でも増えたのかもしれませんが、地域や気候による頻度の差がアトピーに伴う網膜剥離にはあるのかもしれません。

12終わりに

アトピー性皮膚炎に対して一般的に行われる治療は、全身に対しても眼に対しても根治ではなく寛解を目的とするものです。現代の医療ではアトピーのアレルギーの発症を抑えることはできず、原因となるダニやハウスダストなどを完全になくすことも困難です。重要なのは不規則な生活やストレスを避け、十分な睡眠時間を確保することです。多くの症例では、薬物療法とスキンケアで生活の質が保て。眼も守ることができます。問題なのは、いわゆる「根治」をうたった療法で、医学的根拠が無いのにあたかも完治可能なように宣伝し、経済的な利益を享受しようとするアトピービジネスです。学童の父母は何とか子供を助けたいと思うあまりこの商法にだまされることがあります。そのようなものに家族がだまされないような十分な注意も必要です。

文献:Taniguchi Hら、The Journal of dermatology 26:658-665 ,1999

4今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。
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