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2007年6月27日

366 高安病(脈なし病、大動脈炎症候群)の眼症状

サボテン4高安病(Takayasu disease 脈無し病)は青年期の女性に多く見られる血管炎で、比較的太い頚部の血管を冒すため腕の動脈で脈が触れなくなったり、脳の虚血によって失神発作を起こしたりすることで発見される特異な病態です。大動脈炎症候群(aortitis syndrome)というのも同じ病気のことです。(管理頁

サボテン41眼に関係した高安病の臨床像としては眼前が暗くなるといった一時的な視力低下(黒内障といいます)があり、また首を特定の方向に曲げるとその症状が悪化する、または意識消失などの脳虚血発作を示すこともあります。

サボテン5眼症状の初期では網膜毛細血管瘤など糖尿病性網膜症の所見に似ています。重症例では眼球への血流が減少した結果で眼虚血を生じて血管新生緑内障を生じたりすることもあります。さらに、網膜中心動脈閉塞や虚血性視神経症で突然の視力低下をきたしたりすることも有ります。

サボテン6今日は眼科外来に、内科担当医からこの高安病の診断を受けた20歳代の女性患者が紹介されてきました。本人は視力障害も訴えておらず、失神などを起こしたことも無いということでしたので、その患者さんに”高安病の眼の症状を簡便に説明したページを作りましょう”とお約束しました。

高安右人
まず、歴史的には金沢大学教授の高安右人が日本眼科学会に於いて、”視神経乳頭上に発生した特異な花冠状の血管新生を伴う失明例”を報告し、その発表に対して九州大学の大西教授が”その様な患者では腕の脈が触れないことを追加した”ことがその端緒であったとされています。

サボテン7金沢大学のホームページでは”(3代金沢大学教授 高安右人(みきと)1888年~1927年、大正13年3月~昭和2年8月22日(死去)在任。大正5年東京帝国大学卒。39歳の若さで死すも、「眼玉ハ小ナレドモ眼科学ハ小ニ非ズ」と一喝した逸話がある。と紹介されています。

歴史が下ってくると、ステロイドが血管炎に対して有効に用いられることによって、頭頚部の虚血が網膜の虚血を起こすところまで進行する例は少なくなって、典型的な花冠状の変化を見ることは非常に稀になりました。

サボテン8さてでは、高安病の網膜変化を解説します。

①網膜は血管拡張期(網膜の静脈が拡張しているのが見られます)

⇒②毛細血管瘤期(網膜の血管に糖尿病網膜症で見られるような微細なこぶができます。)

⇒③血管吻合期(蛍光眼底撮影で追ってゆくと、網膜の周辺部で動脈の末端が緩やかなループを作って、毛細血管を経ないで静脈につながっている状態が見られます。)

と進行します。

サボテン9私のこの病気との出会いは、研修医のころに高安病で頭部の血圧が下がって失明しかけた患者さんに、血管を専門に治療する外科医が血管のバイパスを作ったら、視神経乳頭周辺の網膜血管の吻合や不潅流域の毛細血管下瘤までが消失したのをみたことがあります。

(清澤源弘,浅野良弘: 後部虚血性視神経症を合併した脈なし病の1例,日眼会誌 86:2050-2055, 1982)

サボテン10また、高安病では内頚動脈に分かれてゆく血管が細くなりますから、網膜中心動脈や脈絡膜の血管が虚血にさらされ、さまざまな眼症状を示します。

約10年前になりますが、私たちは当時医科歯科大学の教授をされ、たくさんの高安病患者を治療しておられた内科教授の沼野先生から多数の患者さんの紹介を受け、眼の症状をまとめて見たことがあります。

Kiyosawa M, Baba T: Ophthalmological findings in patients with Takayasu disease, Int J Cardiol 66:S141-S147, 1998 確かに高安病の網膜病変はは静脈の拡張から毛細血管瘤、無潅流域の形成と進行していました。。⇒リンクでは、

このときは65人 (女性61、男性4)の高安病患者を検討しました。患者の年齢は、17歳から78歳で (平均は50.2歳);発症は11から 60歳(平均32.8歳)でした; 検査までには1月から43年(平均16.8年)がたっていました。通常の眼窩検査を行い、蛍光眼底撮影、ゴールドマンの動的視野、オクトパス1-2-3の静的視野、網膜電図electroretinography (ERG)、網膜中心血圧測定も適切ならば行いました。0,8以下への視力低下の主な原因は M白内障で、高安病固有の原因での視力低下は稀でした。視力低下の訴えは少なかったですが、35%野患者では式のうに低下がありました。これらの視機能低下は眼への血流低下が原因で、さらに重篤な視機能の低下の原因になる恐れがありますので、高安病では定期的な眼科検査を行うべきでしょうとの結論を得ました。

サボテン10また、後輩で今千葉大学で活躍中の馬場先生は次の論文をまとめてくださいました。(元は英文です。)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?cmd=Retrieve&db=PubMed&list_uids=9951814&dopt=Abstract

サボテン3Takayasu病における早期の網膜変化評価における、フルオレセイン血管造影検査の重要性について

著者は馬場、板倉、田中、川崎、清澤、沼野です

東京医科歯科大学眼科、第3内科(もう昔話ですが1998年10月3日に掲載が決定され、1999年11月24日にJapanese journal of Ophthalmologyにオンライン出版されています。)

目的は: Takayasu病患者の眼を診断する時の、蛍光眼底血管造影の有用性を決定することです。

方法は: Takayasu病患者16人で倒像検眼鏡、カラー写真写真、および蛍光眼底造影を31眼に行いました。 肉眼的な眼底所見と蛍光眼底撮影の読影結果を比較しました。

サボテン2結果は: 蛍光眼底造影では検眼鏡によって見られる”網膜静脈の拡張”がない10眼においては、そのほかのいかなる網膜変化も検出できませんでした。 しかし、網膜静脈に拡張があった21眼のうち7眼(33%)には、それ以外の追加すべき異常が発見されました。その新たに見つかった異常には、網膜の微小な動脈瘤(microaneurysm)や、網膜の動静脈シャントや、網膜新生血管や、網膜の無血管野などが含まれていました。眼底鏡のみでの所見にくわえて、蛍光眼底撮影では網膜障害を等級付けする場合に差を生じさせるいくつかの網膜の変化が新たに見つけられました。

結論:したがって Takayasu病では、眼底鏡で網膜静脈に拡張が見られる場合には、特に蛍光眼底血管造影で眼底を観察することが、正しく網膜障害の段階を分類するのには特に重要です。

:という結論にいたしました。

サボテン1(しかし、今考えますと、逆に高安病の患者は脳の一時的な虚血症状を示しやすいので血管撮影を行うときには十分な注意を払って行ってください。現実的な治療としては、血管外科で行われる脳に向かう血管の再建術と、眼科では糖尿病網膜症に施される網膜光凝固も検討する余地があると思われます。

キーワード:網膜静脈拡張; 蛍光眼底撮影; 網膜障害のステージ; Takayasu病(高安病)、大動脈炎症候群(pulseless disease)、

今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。

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