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2007年4月28日

324 眼のコロボーマ coloboma 脈絡膜欠損

生まれつき両眼の視力が少し弱く、両眼の瞳孔が下に伸びた形をした患者さんが見えました。虹彩コロボーマです。その患者さんと約束をしましたのでこの疾患の概要がわかりようにコロボーマを説明してみます。
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網脈絡膜コロボーマ
コロボーマColobomaというのは眼の構造物に切れ目や、裂け目があるもののことです。これは眼の形成や眼のある成分が融合するときの先天的な奇形発生の結果で、裂け目が残るのです。裂け目というとわかりにくければ、ちょっとした形成の不足といえばわかりやすいでしょうか。図は網脈絡膜のコロボーマ(出典)この眼底では視神経よりも下の部分に網膜と脈絡膜が無く、白い強膜が露出しています。

特に、眼球は受精後の32から37日ころに上から眼胚が眼内の物を上から巻き込むようにして眼球の内容物になるべき物を囲い込んでゆき、最終的には下側で閉じます、ですからこの過程が遅れて発生するコロボーマでは、虹彩や脈絡膜の欠損部分は必ず眼の下側にあります、この虹彩と脈絡膜は眼の中では毛様体と同じ血管性の起源を持ち、ぶどう膜と総称される近縁のものです。(ここにその胎生学の説明図があります

小さなコロボーマ
視神経のすぐ下方に視神経とほぼ同じ大きさの強膜が見える部分があります。このように小さな網脈絡膜のコロボーマでは、特に視覚異常の症状もなく、健康診断で眼底検査でも受けなければその存在に気がつかれる事はまずありません。

コロボーマはいま示した網膜、脈絡膜以外でも眼の中のさまざまな構造物に見られますが、レンズ(水晶体)、や視神経、でも同様の部分的な欠損が見らる事があります。

視神経コロボーマ
視神経のコロボーマ(図の出展
この図は視神経のコロボーマとして紹介されたものですが、このように視神経のコロボーマでは視神経乳頭とその周辺脈絡膜に欠損があり、視野にも欠損が想定されます。この視神経のコロボーマでは視神経に液体を中に含む袋状の嚢胞(チステ)を合併することがあります。私もその一例を拝見したことがありますが、手術しても得るところが少ないと考えられましたので切除はしませんでした。

水晶体にコロボーマの影響が及ぶと比較的若い年齢から白内障が進んだり、水晶体に原因のある乱視が出たりする可能性があります。白内障には人工水晶体挿入が考えられますが、通常の目と同様と思って白内障手術に手をつけることは危険と思われますのでその決定は慎重になされるのが良いでしょう。

瞼のコロボーマ
眼胚形成との関連はわかりませんが、瞼にもこのような欠損が見られる事があります。この様な表面の単純な変形なら、比較的簡便に修正が可能です。

瞼のコロボーマ図の出典)もっとも多く見られるのが虹彩(いわゆる茶目と呼ばれる部分)のコロボーマです。

虹彩コロボーマ
図の出展)。
虹彩のコロボーマでは鍵穴状に下に伸びた瞳孔を示します。目の中の冒されている部分によっては視力への影響が無い場合がしばしばあります。

小眼球
図の出典
コロボーマは片側のこともありますし、また両眼のこともあります。もし両眼性であれば、左右が対照的なことも少なくはありません。コロボーマだけが単一な異常として見られることもありますし、その他の小眼球などの変化がその眼に見られることもあります。ごくまれではありますが、反対側の目が存在しない、つまり無眼球である場合もあります。その様な場合には結膜嚢の形成手術や義眼の装用が検討されるでしょう。

網膜や視神経が大きく欠損していれば視力は低下していて、視野の大きな部分が欠損しています。もし下方の視野に欠損があれば、日常生活の苦労は多くなります。コロボーマにはほかの障害が並存していることがあって、小眼球microphthalmosと呼ばれる小さな眼球であったり、このほかに緑内障、眼振、それに斜視があることがあります。

ごくまれな物ですが、チャージ症候群CHARGE syndromeというものがあります。これはコロボーマと口唇裂、口蓋裂(cleft lip、palate)、難聴を伴う耳の異常、耳孔閉鎖(choanal atresia)、成長の遅れ(delays in growth and development)、中枢神経の異常(central nervous system anomalies)、そして先天性心奇形をあわせたものです。(私は、このチャージ症候群の患者さんを30年間で一人だけ実際に診療し、成人するまでその成長を見守ってきました。)CHARGEは
Colobomas and Cranial Nerves
Heart Problems
Atresia of the choanae
Retardation of Growth / Development
Genital and urinary abnormalities
Ear and Hearing Abnormalities の頭文字の羅列です。

遺伝様式
コロボーマが家族にはそのような人が居ない弧発性の場合と、遺伝性が見られる場合とがあります。小眼球を伴ったりまた伴わなかったりしますがいくつかのコロボーマの遺伝子が見つかっています。PAX2とPAX6の優性の変異は視神経のコロボーマを起こし、MAF遺伝子の変化は虹彩のコロボーマを起こします。 SHH遺伝子の変化は小眼球を起こします。

出生前の診断
解像力の高い超音波検査:腹部に小さな切開を作り、超音波のプローブを腹腔にいれ、胎児の目の精密な評価をすることが受胎3月では可能であるという記載があります。(私自身はその診断を受けた患者さんは知りません。)

眼のコロボーマがあることがわかっている家系では、遺伝相談は遺伝子異常が特定されていれば可能です。しかし、現状では弧発例のコロボーマの遺伝的な検査は研究レベルでしか行われては居ません。

今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。

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