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2007年3月4日

298 線維性骨異形成

298 線維性骨異形成

線維性骨異形成
030211私の拝見している患者さんに、CT画像診断で繊維性骨異形成と診断された方がいます。頭蓋骨に複数の増殖性の変化を示す部位があって、それがCTですりガラス状の特徴を持つところから其の診断がなされたようなのです。眼科ではあまり経験しない疾患なので繊維性骨異形成と眼の関連を調べてみました。

眼球突出医学書院の医学大辞典を見ると、“未熟な骨組織と線維性組織からなる成因不明の骨腫瘍類似疾患である。単骨性と多骨性が存在する。10歳前後の若年者に多い。画像的にはすりガラス状と表現される半透明層が、肉眼的にはざらざらした感じが特徴的である。腫瘍は組織学的には線維芽細胞様の紡錘形細胞とCやYなどの線維骨梁よりなる。かつては報告者の名を冠しジャフィーリヒテンシュタイン症候群と呼ばれた。”と説明されています。

眼球突出2インターネットで見つかる国内および国外のページの説明を継ぎ足して見ますと、そもそも、線維性骨異形成は良性ではあるが進行性の骨腫瘍類似疾患であり、其の一部はオルブライト症候群Albright’s syndromeまたは マクキューン・オルブライト症候群McCune-Albright syndromeともよばれて、これは線維性骨炎に皮膚の色素沈着、性早熟を合併する症候群であり、その原因は不明とされるもののようです。

03023この疾患は女児に多く、発症が若くて1才以下で発症することもあるとされていますが、特に注目されるのは、最近の報告で骨形成に関与する遺伝子に特定の変化が存在することの報告が散見され、そこのところが通常の骨にできる遺伝子変化をもたない腫瘍とは異なるところであるからです。

線維性骨異形成繊維性骨異生成は眼窩の骨にもしばしば現れますので、眼球突出や眼球運動障害なども起こしますが、最も大きな問題となるのは視神経管がこの組織に侵されて細くなり、それに伴って失明する症例があることです。http://www.ghorayeb.com/FibrousDysplasia.htmlには其の典型的な例が紹介されています。(顔、CTそして組織の写真を参照)

03022そこで、視力障害を起こす線維性骨異形成の脳外科的な治療への考案がなされています。Optic Nerve Decompression for Orbitofrontal Fibrous Dysplasia: Recent Development of Surgical Technique and Equipment、Takumi AbeほかSkull Base. 2006 August; 16(3): 145–155. (http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?artid=1586169)を見ますと、次のことが書いてあります。

すりガラス状の骨肥厚線維性骨異形成では急性にも慢性にも視力が失われる場合があります。その機序ははっきりしませんが、急性に視力が失われる場合には粘液嚢腫、出血、出血性嚢胞や、視束管が線維性骨異形成に侵された場合に起きます。慢性の視力低下は視神経管の部分で視神経が線維性骨異形成に圧迫されれば起きます。

03303視力の低下があれば、視神経の圧迫を除く適応がありますが、適切な視力のある患者の視神経周囲の繊維性骨異形成の組織を取り除くことに関しては異論があります。対症療法的な圧迫の解除は一つのオプションですが、無症状の患者での眼科的な検査を行って手術をしてみた報告からの結果はこれとは異なっています。

030222つの研究が対症療法的な視神経減圧に反対しています。Chenらは(1)画像診断で視神経が侵されていて、そちらの視神経が危ない場合と(2)視力の低下が激しくて其の回復が見込めない場合を其の適応としています。

033017またLeeらは、 視神経管の圧迫程度は視機能に反映されないし、手術直後の失明例もみられるから、診断画像だけで手術の試行を決めるべきではないとしました。

異常な骨は増殖を続け、視神経へ圧迫も強まると考えるべきものなので、対症療法的な減圧は、いったん視機能が侵されたら其の回復は難しいと考えればこそ正当化されるに過ぎません。

033018合併症を最小にするため、視神経の減圧術は慣れた脳外科医のみが行なうべきであり、片側からの前頭側頭開頭が其の手段には最もよいです。残された骨には繊維性骨異形成があると考えられるので、圧迫解除の範囲は再発率に関係するから外からの開頭によるアプローチが必要であるとこの論文の著者の阿部先生は纏めています。

(このインターネットに掲示されている論文ではこの以後に、脳外科としての骨ドリル使用と視神経での温度上昇の議論、その持続的な水潅流での冷却、超音波での骨の掘削などの手術の技術的な考案が続いていましたが、ここでは省略します。)

私(清澤)も、数年前に東京医科歯科大学で似た症例を担当したことがあります。この60歳の患者さんは、ゆっくりと進行する片側だけの眼球突出を訴えていました。耳鼻科と共同で担当しクレーンライン法(眼窩の外側の骨を切って眼窩内に入る手術法)で肥厚した頬骨の一部を採取して病理診断を得ようとしましたが、病理診断は“正常の骨組織である”ということで病理診断が付かぬまま日本臨床眼科学会のインストラクションコース“解決、目と視覚の不明愁訴、不定愁訴”で紹介しました。今ふりかえって見ますとこの症例は線維性骨異形成の骨成分の多い部分を採取していたものと思われます。この例を含めて、私が経験したのを記憶しているのは仙台での小学生女児の一例と、上記の60歳前後の男性1例、それに今回の50歳のご婦人の計3件ですが、視神経管が細くなって視力障害をきたした患者さんには幸いまだ出会っていません。

従来、多くの疾患は臨床所見から原因が不明なまま名前がつけられましたが、その後其の一部に原因が特定できたことから其の疾患の全体像が見えてくるといった歴史的な経緯を取るものが少なくありません。繊維性骨異形成もそういったものなのでしょうか?原因が分かることで対応法も開発されてくることが期待されます
今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。

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