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2007年2月17日

285-3 眼はどうやって動くの?眼球運動の核上性機構

 ~第17回眼科医療従事者講習~眼はどうやって動くの?清澤眼科医院 院長 
清澤源弘 2007.2.17 (管理頁

 
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眼はどうやって動くの?というお題をいただいたので、今日は”眼が動かせるということ、そして動かせないということ。”について話してみましょう。

脳で考えたら思う方向に眼が動かせるというのはどういうことなのでしょうか?
今日は難しい御題を戴きましたが、眼筋麻痺よりも上の話をしましょう。眼の向きは意識の中での注意が向いている方向を示しているとも言われています。

眼球運動を模して作ったカメラがあります。6つの筋に対応するモーターが付いていますが、これをどうコントロールすればよいのでしょうか?

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核上性の注視経路を考える前に、眼球には6つの型の運動があることを話します。其の2つは早く、4つは遅いものです。

1)早い運動は速度が330-700°/秒です。
a,衝動性運動と
b,眼振の急速相が含まれて居ます。

2)遅い眼球の運動は速度が20-50°/秒です。それには、
a,滑動性追従運動
b,視運動性
c,前庭性
d,寄せ運動が含まれて居ます。その各々を説明してゆきます。この両者には間にカバーできない速度帯(50-330度/秒)があり、その間の速さで動くものを見る場合には遅い動きと早い動きが交互に現れます。

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1a,衝動性眼球運動
これを引き起こす刺激は?
1、随意的な方向の変化であったり、
2、急激な周辺部の視覚、聴覚、または末梢の刺激で有ったりします。
またこの運動では衝動性眼球運動抑制という現象があって、テレビ画面がその速さで振られたら、視空間が網膜面を速やかに動いている時に当然感じるボケの感覚が生じるはずですが、そのようなブレが生じないようにその間だけ視力は抑制されるということがわかっているのです。

ブロードマン図
衝動性眼球運動の指令は前頭葉眼領域(Brodmannの8野)から出ていて、反対側をにらむ作用があります。つまり、この前頭眼野は反対支配なのです。もうひとつの衝動性眼球運動の指令の源は上丘だとされています。

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1b、眼振の急速相は
視覚誘発眼振で見られ、長時間の回転時に眼を元の位置に戻すものです。

2a、滑動性眼球運動
a, 滑動性眼球運動を引き起こす刺激は?
1、中心窩を横切る対象物のイメージ
2、随意性または不随意性黄斑部固視を完成した後におきる追従
3、対象物が50°/秒以上なら追従で取り残された後に衝動性の急速運動でとらえようとする。このため歯車式追従運動になるとされます。

歯車式追従運動の例は正常な人では現れない速さの追従運動でも統合失調症などでは見られます。

ブロードマン図
滑動性眼球運動の経路は
頭頂、後頭、側頭連結(後頭眼野=19野)から刺激が出ており右の脳が右への眼球運動を引き起こす同側支配です。

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2b、視運動系
a,持続性の頭部の回転のときに見られます。
b,前庭系は加速に対してだけ反応します。これが続くと視運動系で補います。列車の窓から向こうのホームの列車が動くのを見たとき自分が動いている錯覚に陥り、この感覚をベクションと呼ぶが、その感覚にもこの視運動系が関与しています。

内耳2c、前庭系
前庭系は側頭骨の中にある骨迷路に起源があります。3つの半規管があらゆる回転性の体の動きを感知し眼球を元の座標に保持しようとします。

幅寄せ
2d、寄せ運動
寄せ運動は近接する対象物を両目で捕らえようとするときに見られる(輻輳)左右の眼球が違う方向に動く運動です。対象物が遠ざかるなら開散であって、輻輳と開散をあわせて寄せ運動と呼びます。

すべての眼球運動は1aから2dの6つの運動を重ね合わせたものとして理解されるはずです。これらの核上性の信号は脳幹にて統合されます。

ポンスこれらの入力は脳橋(ポンス)にあるPPRFに入力され、其の先の眼球運動の核(動眼神経、滑車神経、外転神経)に伝達されます。

そこで、最後にこの眼球運動がこれらの核上性の眼球運動制御系の障害で行えない病態を示します。

先天性眼球運動失行
先天性の眼球運動失行症congenital Ocular motor apraxiaは、水平性の眼球の衝動性の動きと滑動性の動きが共にないことが特徴です。それは、先天的な眼球運動の急速相の欠如とか先天的な側方注視の麻痺と呼ぶべきものであることを示しています。この病態はCogan apraxiaともよばれています。

先天性
Ocular motor apraxia はWin TN,Laws DE,によってBJO 2006;90:931-1072に示されていて、そのビデオがhttp://bjo.bmj.com/cgi/content/full/90/8/DC1/1に公表されています。思う方向に眼を動かせないにもかかわらず、眼筋の麻痺とは違って眼振の急速相や体を回したときに平衡感覚によって眼が正面に残る運動などを利用して眼球を動かすことが出来ます。

随意性水平眼球運動の欠如があって、繰り返しになりますが、垂直運動は正常、水平の前庭運動も正常です。水平方向に視覚固視を換えるとき患者は見ようとする方向に頭を押しやります。眼球は前庭性に動きが減じるから、頭を大きく押しやって、視線が目的のあたりに来るようにします。

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バリント症候群(後天的眼球運動失行)
一方、バリント症候群が後天的眼球運動失行の代表的なものです。
この疾患は、広範囲な両側性(頭頂・後頭葉)疾患で見られます。
全方向への随意性急速眼球運動と追従運動の欠如がありますが、前庭性運動は残っています。
しばしば痴呆と視野異常を合併することがあります。

3主徴は次のとおりです。
精神性注視麻痺;患者の目の前で検者が示した指先への注視運動が出来ず、視点が定まりません。眼球の動きに制限はありません。
視覚失調;凝視した物をつかもうとしてもずれてしまいます。
視覚性注視障害;注視しているもの以外に新しく視野に入ってくる対象に注意が払われません。(音などの刺激には正常に反応します)

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さて、今日は眼は脳によってどうやって動かされているの?という質問に対する比較的簡略化したシステムの説明をしてみました。

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まとめますと:
眼球運動は急速な運動とゆっくりした運動が組み合わさって起きています。
神経(動眼神経、滑車神経、外転神経)や眼筋の上位にこの仕組みがあります。
先天性の障害は脳幹で起き、後天性の障害は大脳でおきます。

多少は参考になりましたでしょうか。今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。

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