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2007年2月5日

274 視神経炎と妊娠

視神経炎を患った病歴を持ち、現在も片眼の視力低下を残した患者さんが、妊娠した場合どのような注意が必要か?という質問をいただきました。

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1)まず、視神経炎のひとつに栄養の不足で起きるし神経症があります。タバコ・アルコール弱視と呼ばれますが、ビタミンなどの不足が視神経障害を起こすと考えられています。妊産婦や授乳中の婦人では十分な栄養が取れない場合これに類似した栄養の不足を原因とする視神経障害があるとされています。飽食の時代である現在ではほとんど見ることもないでしょうが、知識としては存在する疾患です。この場合には、視神経炎の発生が妊娠に先行していますのでこの心配はないでしょう。

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2)視神経症の原因の大きな部分を占める多発硬化症では妊娠との関連が論じられます。(ただしこの議論では視神経炎一般を多発硬化症と混同してはいけません。)

日本人における多発硬化症の頻度は人口10万に6-8人程度。
視神経炎の有病率は1.6程度(発生率は10万人に年1.0程度)のようです。

また、欧米では視神経炎の数十%が多発硬化症に進展するとされますが、日本ではその進展は10%程度とされているようです。

視神経炎では多発硬化症を疑わせる時間的空間的な再発の存在の聴取や、最初の視神経炎の診断時にMRIで多発性の無症候性の病巣の存在を見ておくことや、これも早期に髄液検査でミエリン塩基蛋白などを調べて多発硬化症を除外しておくことが有用と思われます。

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米国や日本のページで多発硬化症の解説(googleでmultiple sclerosisとpregnancyをかけると多くのヒットが得られます。)を読んでみますと、以前は妊娠で多発硬化症の再発発作が誘発されるので妊娠は避けるべきであるとされていましたが、最近の追試ではそのようなことはなく、大概の患者は健康な子供を出産していると記載されていますし、妊娠を恐れる必要はないとされたようです。

ただし、妊娠、出産に関しては、次の有名な論文がありました。
多発硬化症の再発は妊娠中は少なくなりますが、出産後2-3カ月は明らかに増加することが知られていて(N Engl J Med 1998; 339 : 285 – 91 : Original Article)の邦訳、一説では20%から40%の方が再発を経験するとされています。分娩後3ヶ月以内には特に注意を要するということです。その原因としては、ホルモンバランスの変調、育児による精神的・身体的ストレス、不充分な睡眠などが考えられますが、はっきりしたことはわかっていません。

この再発発作には視神経炎や眼球運動の麻痺などの眼科に関連する症状も含まれますのでその可能性のある患者さんはご注意ください。

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3)そのほかの素直な視神経症(いわゆる原発性視神経症)や虚血性視神経症では特に妊娠によって悪化することは考えなくて良いでしょう。

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4)隠れた視神経近傍の腫瘍:ただし、妊娠後に視神経症(または陳旧性視神経炎に伴う視神経萎縮)の症状が悪化する場合には、もともと下垂体付近に(下垂体腺腫や髄膜腫などの)腫瘍があって、これが妊娠に伴うホルモン状態の変化によって大きくなり、この結果で腫瘍の視神経に対する圧迫が増悪しているという場合がありますので、ご注意ください。

取り留めのないことを並べましたが、視神経炎と妊娠の話題はこの辺まで。

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