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2007年1月29日

271 目前に迫った日本の医療崩壊

医療崩壊という言葉をご存知でしょうか? (管理頁

社会的な発言は極力避けているのですが、最近医療従事者の間で、インターネットや書籍を通じて話題になっているテーマです。

”加重労働に耐えられずに病院に勤める医師がどんどん退職してしまい、公的な病院の日常診療機能が維持できなくなってしまいつつある”という意味の言葉です。

今まではみんなが高度医療を求めるあまり国民総医療費が増大して、このままでは国の健康保険が破綻してしまうと叫ばれていました。

ところが、この2年くらいの間に、病院に勤めてくれる良質な医師が思いのほかの速さで少なくなり、日常の診療に差し支えるという現象が現れはじめているのです。

田舎の病院の産婦人科や小児科が医師を確保できなくて、救急車を受け付けないとかお産を扱わないという話としては、皆さんも聞いておいででしょう。

それは、病院が本来の医師としての義務を放棄していてけしからんという色合いで報道されていました。

また、それに続く記事では、大学からの派遣を断られた東北地方の病院の何がしかの診療科が閉鎖されてしまうというお話になって聞こえてきました。

従来、地方の公立病院はその診療医の供給をその地域をカバーする大学病院からの医師派遣に頼っていたのですが、数年前に行われた研修医改革によってその大学にも関連病院に回せるだけの医師数が入局しなくなったことによると説明されていました。
その新卒の地方大学卒業の医師は、地方大学の大学病院を捨てて都市部の大学以外の大病院に行ったたようです。

最終的には立ち消えになりましたが、”都市部で開業する医師は救急部門や公立病院での一定の勤務歴が無ければ診療所長にはさせない”(つまり開業をさせない)というなんとも不思議な法案のうわさが出てきました。

これらの事象は、どんなに忙しく(普通は超過勤務手当ても払われないという)働いても何の見返りもない公的な病院になど、これ以上居ても仕方が無いという多くの勤務医のため息がもたらした事態だったのです。

実際の病院の実態はもっと酷くて、近県の公立病院はもちろん、都立病院クラスの大病院でも医師の人手不足はとても深刻です。それは、私が所属して居り、入局者が比較的多いとされる眼科でも例外ではありません。

私はすべての医療をこの診療所で完結させようとしているわけではありません。小さな診療所で診察し、蛍光眼底撮影や光凝固、それに各種の眼内手術が必要と判断される患者さんが居れば、その患者さんを文京区御茶ノ水の東京医科歯科大学付属病院や江東区南砂町の順天堂東京江東高齢者医療センターへ連れて行き、より高度な治療をしてもらいます。

ですから私たち開業医には、こうした後方支援の病院がしっかりしていてくれないと困るのです。

幸い私が患者さんを紹介している先の施設では、まだ医師の欠員は生じてはいませんし、医療の質の低下も起きては居ません。

しかし如何にいい病院でも、医療スタッフ数は現在の患者の数に対応していますから、このような隣接病院の眼科の閉鎖があり急に患者さんが増えれば、普通の病院ではあっという間にまともな対応が出来なくなります。

また、大学の関連病院では医師が定員に満たないところがあっても、もう補えないという状態ですし、場合によっては眼科医師スタッフの撤退(其の病院の診療科としての眼科は閉鎖)をする事もあります。

そうなってしまえば、カルテを読める眼科医師さえも居ないのですから、今日まであなたがかかっていた病院からの別の医療機関への紹介状も実際問題としては作ってもらえなくなります。

まあ色気のない話題で恐縮ですが、保険証を持っていても医療を受けるということが出来ないという事があるという恐ろしい事態が近づいているのです。

”あなたの上にもこの医療崩壊のなだれが、降りかかろうとしているのですよ”ということをお伝えしたくて、本日はこの記事を書いてみました。

ネットの某記事を引用しますと、”医療崩壊をもたらしたのは政府と厚生省。高くもない医療費を高い高いとどんどん削り,とどめに,新しい研修医制度という愚策を導入して,地域医療どころか都会の医療まで,すべての医療を崩壊させてしまった。”

という人も居ます。

また、”効率の悪い中小病院を淘汰する医療改革の改革としての次のステップは、診療所レベルの診療費をカットして普通の開業医を成り立たなくして、あわよくば公的な病院へ追い戻すというものだ”という噂もあります。

いわゆる医療改革の影響は思いのほか激しいものです。今後の動向にご注目ください。

”角を矯めて牛を殺す”という事態が来ないと良いのですが。

参考図書;鈴木 厚 崩壊する日本の医療、秀和システム

今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。

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管理頁

追記引用(2月3日):研修医「給料より勉強」 忍び寄る崩壊の足音/7(東京)

(M3;毎日新聞社【2007年2月2日】から引用:

医療クライシス:忍び寄る崩壊の足音/7 研修医「給料より勉強」

 ◇人材育成力ある都会に集中

 北陸地方出身で岡山県内の大学を卒業した男性研修医(25)が選んだ研修先は、出身地でも岡山でもなく、東京の大学病院だった。

 出身県の病院の合同説明会。ある病院の担当者が「研修医が来てくれない。願書を出すだけでもいいから」と勧誘するのを聞き、地方の実情に衝撃を受けた。「医師の少ない病院は、当然雑用が増える。患者と接する時間があるのか、きちんと勉強ができるのか」と不安になり、一緒に行った友人とともに途中で退席してしまった。

 現在の収入は月15万円程度。地元の病院に行けば倍になり、ボーナスもあった。しかし「今の大学病院には、専門分野を持つさまざまな先輩がいて、教わることができる。給料が低くても、今は出来る限りのことを勉強したい」と話す。

:中略:

 医療研修推進財団の07年度版「臨床研修病院ガイドブック」によると、研修医1年目の給料は、大都市の方が地方より安い傾向にある。東京や大阪では月30万円未満の病院の方が多いが、多くの県では30万円以上の方が圧倒的に多い。それでも、多くの研修医は都会の病院を目指す。

:後略:

医師の偏在はこのような形でも進行しています。(清澤)

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