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2006年11月10日

207 子供の強度近視、リスクが最も少ない対処とは?

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子供の強度近視、リスクが最も少ない対処とは? 管理頁

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質問:
7歳の娘(小2)が、小学校入学時に眼鏡をかけ始めてから1年半あまりの間に近視が進行し、現在は両目共に0.06程度(-6D超)となっています。

眼科医からはまだまだ進行すると言われており、コンタクトレンズが使えるようになる年齢になるまでにコンタクトレンズで補正できる範囲を超えてしまうのではないかという不安を持っています。

上述の進行度合いを抑制する方法が無いかという点が第1の質問です。

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次に、オルソケラトロジーに関する質問です。

上述のような現在の視力状態で、何とか視力を回復させるためにオルソケラトロジーにて何とか0.2~0.3位まで回復させ、その状態を維持し(=近視の進行を抑制し)、コンタクトレンズが使える年齢まで視力の低下を抑制することはできないか という考え方の是非についてです。

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家内はこの作戦にかけるしかない、今やらないと手遅れになると強く主張しているのですが、私はこの方法を子供に適用することについて、更にはそもそも角膜の形状を強制的に変えるということ自体の不自然さ、長期的に夜間コンタクトをはめ続けることの眼への影響等に対して強い懸念を持っており、万が一、子供の眼に障害を与えるようなことがあった場合を考えると絶対に賛成できないという主張をしています。

このような形で対立しているのですが、何とか家内を納得させる識者の見解を頂きたいというのが正直なところです。
宜しくお願い致します。

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お答え:

子どもさんの強い近視にご心配の様子が良く分かりました。

確かにー6.0超える近視は強度近視ないし病的近視として扱われていて、将来眼鏡をかけても視力が出にくい状態が発生する危険があります。

まず近視が起きる場合、角膜や眼球の長さは変化せずに眼内のレンズの形が厚くなるような変形をします。それには毛様体(この中に有るのが毛様筋)といわれる部分が緊張してレンズを薄く引き延ばしているチン氏体(毛様体小体)と呼ばれる糸状の物を緩めて、レンズが厚くなることを許します。

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この働きは、正常の眼が近くを見る場合に行う運動なのですが、調節緊張症(仮性近視)では遠くのものを見ていてもこの現象が強く起きすぎているとお考えください。
その結果、外の世界から入った光は眼球のそこにある網膜よりも前の方に焦点を結ぶようになります。

子どもの近視に対する治療でミドリンMを夜に一度つけていただくのはこの緊張を緩めて近視への移行をとめようとしているのです。

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毛様体の緊張したこの状態が続きますと、やがてこの毛様体筋を休めようとするのか、眼球の長さが本当に伸び始めます。

軸近視
1ジオプトリーに付きその長さの伸びは0,3mmですから現在―6.0ジオプトリーの患者さんの眼球は約2mmほど伸びていることになります。(図借用:上が正視で下が軸の伸びた近視)

通常の大人の眼球の長さは24ミリ程度ですが、それが約1割程度伸びていることになります。

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前方に結ばれるこの焦点を元の網膜の上に戻すのに、最も普通に行われる対応が凹レンズを目の前に置く方法です。普通は眼鏡をかけ、もう少し大人になればコンタクトレンズも使えます。

最近はこのほかにいくつかのオプションが出てきました。

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その一つがレーシックですが、これは眼の表面にかんなをかけるように(レーザー光線を用いて)薄く削って眼の表面の角膜から凸レンズ相当の形の部分を削り取って眼を近視が減る方向に変形させるものです。この方法は、コンタクトレンズや眼鏡にさよならをいえるなどの利点が有るのですが、まだ安全性が充分に確立されたとはいいがたく、国民健康保険に取り入れられるにもいたっていません。
したがって、美容外科などのような私費診療の段階です。

この場合、まだ眼球の成長が終わっていない(最終的な近視の度が固まらない)小児の眼にレーシックを行うのはよろしくないでしょう。
イントラレーシックとか、放射状角膜切除などもこの角膜手術で近視を減らすという範疇に入るものです。

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次に出てくるのが、オルソケラトロジーで、これは硬いコンタクトレンズを夜の間に眼に載せておいて一晩で角膜を変形させ、角膜の変形で近視をへらすというコンタクトレンズによる方法です。私は角膜全体が変形するのかと思いましたら、そうではなくて、角膜の表面のわずかの細胞が中心を薄く周りを厚くするように外力に従って移動し再配列するだけなのだそうです。
ですから、この効果は3日程度で消えてしまいます。

利点は、日中にコンタクトレンズも眼鏡もない生活が一日(最大3日)できるというだけです。前項のレーザーの様に近視が無くなるわけでもありません。

実はこの方法は(佐野研二先生に依ると)中国で科挙の試験の視力検査を通すために砂袋を眼に乗せて寝て翌日の試験を通過したという古い時代の話に起源が有るようです。

この方法も、国民健康保険に採用された方法ではないので、まったくの自費です
し、眼科学会で公認推奨された方法とはいえません。子どもにこの方法を用いる先生が稀に居られますが、それはあまりお勧めできるものではありません。

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このほか、眼内コンタクトレンズというものがあります。これは薄いコンタクトレンズ様のものを眼内の水晶体の上にそっと乗せてくる手術をするという方法です。
一部の大学などでは研究的な意味で行われますが、町の開業医が自分の患者さんに特にお勧めするべき方法とは思えません。私の従兄弟の子どもがその可否を問うて来たときにも否定的にお答えしました。コンタクトレンズが酷いドライアイなどなんらかの理由で使えず、またレーシックをしようにも角膜の厚さが足りなくて出来ないというような特殊な患者さんではやむを得ず選ばれる方法になる可能性はあります。

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近視が進んで眼が見えなくなってしまうというのはどの様な状態でおきるのでしょうか?

変性近視
眼球は引き伸ばされてゆきますと網膜も引き伸ばされてゆき、黄斑部と呼ばれる網膜の中央部分に出血がおきたり萎縮(図の出典にリンク)を来たしたりするのです。この出血の発生するメカニズムは加齢黄斑変性などと似たものであり、複雑な経緯を経て起きるのですが、単に一般的に近視が進むと出血が起きるというように普通に見られる現象ではありません。

近視性黄斑変性の説明は(東京医科歯科大学の大野京子助教授の十八番なのですが、)別の機会に譲ることにしましょう。

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小児の近視が強いとした場合でも、この出血を未然に防ぐ方法は知られていませんし、それほど心配する必要も無いでしょう。

さて、この程度の説明で、子供さんの近視にはどのような対応がよろしいかの凡その見当をつけていただくことは出来たでしょうか?

調節緊張(仮性近視に含まれる何かの原因による機能的な近視状態)の発生を予防するのにはいくつかの一般的な注意が有ります。明るい環境で、眼と本の距離を十分にとって物を見ること。そのためには適切ないすと机を選ぶこと。近距離の作業の間には時々遠くを意図的に見る時間をとること。ビデオデスプレーなどのぼんやりとした画像や小さな画面のゲーム機のような画像を見るのはなるべく避けること。(ぼけた画像を見ると調節緊張が誘発され、やがて近視化します。)等の注意がなされています。

私は、医学的なアプローチとしては、調節麻痺剤のミドリンMなどを使いながら、その児童の成長の時々に合わせた最も弱い眼鏡を作って、ゆっくりと子どもの成長を見守るというスタンスがよろしいかと思います。

強度の近視の眼底変化については眼底の循環や視神経の状態、それに視野などの網膜機能を評価などに対しておれぞれの検査法が有ります。強度の近視という点が特にご心配であれば、私も関与しています(以前は助教授で、今は非常勤講師を兼任させていただいています)東京医科歯科大学の強度近視外来の大野京子助教授に紹介状を作って差し上げることも出来ます。

私のブログ内の関連した項目にリンクします。
130, 子供の近視の治療について
近視と調節緊張(学童の眼鏡)
アトロピンを用いた屈折検査
オルソケラトロジー治療について

今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。

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