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2006年10月27日

197 眼に症状の出る下垂体卒中 pituitary apoplexy

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この1週間ほど酷い頭痛があり、吐き気と嘔吐で夜も眠れないという患者さん。内科の主治医から”急性の緑内障発作でもなかろうが、一度観てください”ということで、MRIもつけて受診させてくださいました。    (管理頁

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患者さんは憔悴しきった表情で、頭痛と嘔吐による不眠がただならぬ事をうかがわせます。視力は以前の受診時と変わらず、眼底にもうっ血乳頭などの変化は無し。対座法の視野は全体が狭く、ゴールドマン視野をとってもやはり全体が狭いですが、特徴的な半盲などはなし。

画像診断ははっきりした変化ではないのですが、下垂体部分がやや大きく、撮影した医師も下垂体にこだわって撮っているのが分かりました。

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あまりに激しい頭痛ですから、自律神経失調などではありえない。”くも膜下出血ないし下垂体卒中を除外する必要があると思いますので、脳外科として御高診ください”という紹介状を作って、即刻、脳外科医のいる画像センターに紹介を出しました。

25年前に私には、下垂体卒中の患者さんを見た経験が有ります。その患者さんは、下垂体腫瘍の患者さんで、眼科での私の診察のあと、次の科の検査中に倒れ、そのまま数日後死亡したのです。その原因が下垂体卒中(下垂体腫瘍の中での出血)だったのです。

脳外科では、やはり下垂体卒中と診断され、大学の脳外科を経て内分泌内科のベッドに入院できました。

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最近眼科で盛んに話題になって居るのは、”眼科医が動脈瘤などの緊急疾患の可能性を考えたら、その結論が画像診断で付くまで眼科で患者さんを保持してはいけない。脳外科にその可能性をはっきり口頭で伝えて、直ちに管理責任ごと渡せ。”という話です。

優れた脳外科医ならば、事の重大さに気付き、適切な対応をとってくれるだろうというわけです。

この話題は、先の真鶴セミナーで盛岡日赤の高橋先生が話され、先日の臨床眼科学会で私が受け売りし、昨日の柏井先生の動眼神経麻痺の講義でも繰り返された内容です。

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メルクマニュアル⇒リンクhttp://merckmanual.banyu.co.jp/cgi-bin/disphtml.cgi?url=02/s007.html
下垂体卒中は正常な下垂体,またはより一般的には腫瘍の出血性梗塞によって起こされる症候群です。

急性症状としては激しい頭痛,頸部硬直(動脈瘤の破裂や脳出血とも似た症状です。),発熱,視覚障害などがあります。

(突然、出血で視神経交叉が押し上げられれば、両耳側半盲や両眼の視力低下がおきます。)

ACTHおよびコルチゾール分泌不足のため,様々な程度の下垂体機能低下症が突然生じ,患者は血管虚脱症状を呈することもあります。これが患者の生命を危険にさらします。

CSF(脳脊髄液)は出血性のことが多く,MRなら出血が証明できます。
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推奨される治療法
としては、

下垂体卒中により急激に視力、視野障害が悪化する場合は緊急手術の適応がある(グレードC1)とされています。が、今回は視力視野の変化は軽かったです。

今回は必要なしと判断されましたが、下垂体卒中により急激な視力、視野障害が悪化する場合は、直ちに経蝶経骨洞接近法で減圧します。

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<下垂体卒中について>
下垂体卒中の起きる頻度は、下垂体腺腫(macroadenoma)の1%程度の頻度とされています。そのリスクは、抗凝固療法、内分泌学的負荷試験、放射線治療、bromocriptine内服治療、外傷、手術(特に心臓)、妊娠、糖尿病などで増すとされています。

<鑑別診断>

画像診断で問われるその鑑別診断には、下垂体腺腫(非出血性)、頭蓋咽頭腫、下垂体膿瘍、血栓化動脈瘤、原発性下垂体出血(稀)などであるとされています。

麻生病院の症例⇒リンクhttp://www.aso-group.co.jp/aih/kouhou/kakuka/housya/tf/case476/index.htm
には大きな出血を伴う脳下垂体を持つ症例の写真が載っています。

下垂体
最近の診断の話題としてはRogga JMほか、Pituitary Apoplexy: Early Detection with Diffusion-Weighted MR Imaging, American Journal of Neuroradiology 23:1240-1245, August 2002に拡散画像の有用性が述べられています。

今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。
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