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2006年10月6日

174 相貌失認と中枢性色覚異常(PET検査)

臨床眼科学会にこの症例をポスターで発表しました。“お祖母ちゃんに分かる“調に読み下してみます

後頭葉梗塞により相貌失認と中枢性色覚異常を呈した一例 

清水恵1、堀江長春1、鈴木幸久1、清澤源弘1、石井賢二2、望月學1
1東京医歯大、2東京都老人研PET

【目的】ポジトロン断層法という核医学検査(PET)がその病気の診断に有効であり、多彩な見えるものが理解できないという症状(視覚認知障害)を示した後頭葉の梗塞の一例を報告する。

【対象と方法】PET検査結果を含む症例報告。

【結果】
症例は49歳男性です。2004年11月に脳梗塞を発症し、妻や子供などの顔は見えるのに誰かわからないと訴えました。しかし、その声やシルエットで家族であることが判断できました(相貌失認)、

夕焼けの時の部屋の中にいるように暗く感じ、色彩がはっきりしないともいいました(色覚失認)。

視野(見える世界を患者さんの側から見て示した図)の左の方が暗く、物があってもわからないともいいました(左同名半盲)

トイレから部屋への道や、自分の車のある駐車場への行き方がわからないともいいました(地誌的失見当識)、

漢字が書けずまた、同様に漢字が読めない(漢字の失読失書)も訴えました。

眼科初診時の所見は、視力右目が0.8眼鏡をかければ(1.2)、 左目は0.8で同様に眼鏡で1.5。

前眼部(眼の前野部分)、中間透光体(中間野部分)、そして眼底には異常はありませんでした。

視野
ゴールドマン視野では(どちらの眼で見ても左半分が見えない)左同名半盲と、(やはりどちらの眼で見ても右上4分の一が見えない)右上四半盲を合わせた症状を認めました。

ダブルペンタゴン転写に異常なし(5角形を2つ重ねた図形を見せてこれを書き写せるか聞く問題です)。

PD15
色覚は、PanelD15はプロタン(第一色覚異常という色覚障害野分類です)に近いものであった(色の付いたビンの蓋を近い色から順に拾ってゆくテストです)。また、石原式と東京医大式後天異常用色覚検査表では判定が不能でした。

MR1
MR2

MRIでは、右一次視覚野と両後頭葉下面に梗塞による組織欠損が見られ、病変は右後帯状回と角回にも及んでいました。

fd1
fd2

発症1年後のFDG-PET画像ではMRIに一致して、右一次視覚野と両後頭葉下面に著しい糖代謝の低下が見られた。

べんぞ1
べんぞ2

また、FDG-PET画像と同様の領域にベンゾジアゼピン受容体密度の著しい低下が見られた。

【考案】
1)病巣と症状の対応は以下の通りです。

①視野障害:両)後頭葉下面傷害に対応する上半盲+右)視覚野傷害に対応する左)同名半盲によって、右下1/4を残した3/4盲が発症した。

②中枢性色覚障害:V4野と視覚連合野下面の傷害でおきた。

③相貌失認(妻や子供などの顔は見えるのに誰かわからない。声や、シルエットで判断できる):右紡錘状回、舌状回ノ障害で起きている

④地誌的失見当識(トイレから部屋への道がわからない。駐車場への行き方がわからないなど):両(または右)後頭葉で起きている。

⑤漢字の失読失書:(頭頂葉の)角回ないし側頭葉後下部の障害で起きている

⑤短期記憶障害(新しい出来事が覚えられない。時間の流れを忘れる。):海馬ノ障害で起きている。

2)PET(ペット)は癌の診断ばかりでなく脳の機能測定にも使うことが出来る。FDGで見る糖代謝は現在の脳の活動を、またフルマゼニルで見るベンゾジアゼピン神経受容体分布は組織の残余能力すなわち回復可能性を反映する。

したがって、両者がこのように一致して低下してしまっている場合には、症状の非常によい回復を期待することは難しいかもしれないです。

【結論】
視野欠損、相貌失認、中枢性色覚異常など多彩な視覚認知障害を来たした後頭葉梗塞の一例でPETはその病巣診断に有効でした。

【このポスターを離れての清澤からのコメント】
このように複雑な視覚に関連した症状を残した脳梗塞の患者さんが居て、そのPETによる臨床的な評価と治療法の相談を求められた場合、清澤眼科医院および東京医科歯科大学眼科外来では、通常の眼科学的な評価を私たち眼科でまず行います。

その上で必要と判断すれば、、板橋区大山にある東京都老人医療センター神経内科の石井賢二先生を介して東京都老人総合研究所ポジトロン研究室のPETによる撮影と診断をしてもらっています(東京都老人医療センターの受診には医師からの紹介状と予約が必要な特殊な病院です)。

同研究所に私(清澤)は平成4年以来、協力研究員で登録されています。また眼科の鈴木幸久医師(東京医科歯科大学非常勤講師)と堀江長春医師(当清澤眼科医院非常勤医師、東京医科歯科大学大学院)も老人総合研究所の研究員および研究生を兼任していますので、正確な結果の解析も出来ると思います。

検査を希望される患者さんはご相談ください。

今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。
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職員2007.9.15改丁

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