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2006年10月4日

172, RNA干渉を利用した加齢黄斑変性の治療法

423ノーベル医学生理学賞が米国の2教授の「RNA干渉の発見に対して贈られます。その記事によると、06年のノーベル医学生理学賞はアンドルー・ファイアー・米スタンフォード大医学部教授(47)と、クレイグ・メロー・米マサチューセッツ大教授(45)の2氏に授与されるそうです。
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432両氏は生物の遺伝情報を伝える役のRNA(リボ核酸)が対になった「二重鎖RNA」で、遺伝子の発現が阻害される「RNA干渉」という現象を線虫で発見し、98年に発表したというものです。

この現象は人間にも共通しており、二重鎖RNAを人工的に作ることで新薬開発などに道を開いたことが評価されています。

ひも状のRNA2本がはしごのように対構造になった二重鎖RNAを線虫の細胞に入れると、鎖がほどけて1本になり、対応する遺伝子の発現が阻害され、たんぱく質が合成されないことを発見したのだそうです。

生体内でも、こうした二重鎖RNAが作られ、有害な遺伝子の発現が抑えられている場合があることも発見されており、その治療への応用が注目され研究が進んでいます。

大学の同級生で、現在は国立感染症研究所の第一部の部長を務める倉根一郎先生にこのiRNA(抑制性のリボ核酸)についての説明を求めましたら、この核酸は蛋白質分子全体をコードするほど大きなものではなくて、設計図である核酸から蛋白質の分子を作り始める部分を調整すればよいので、ごく小さな分子なのだそうです。

私も容易に想像したとおり、どの程度のウイルス増殖を抑えられるかが臨床的に有効か否かの分かれ目で、6桁減らせれば効くが3桁では実際には役にたたないといった話なのだとか。

それと、ベクターというウイルス状で、必要な遺伝子(この場合iRNA)を細胞内に運び込む仕掛けが必要なのだが、どうやって体の中の局所にだけ遺伝子を十分に送る込むかという手段を決めるのが難しいという話でした。

このiRNAが、特定の蛋白質の合成を抑えるという機能を応用し、網膜の加齢黄斑変性症などの治療薬の研究が進んでいるそうですので、我々眼科医にも無縁の話ではなさそうです。

289”米国では、高齢者に多く、失明の原因となる「加齢黄斑変性症」で実用化が間近になっている”という新聞記事のコメントが気になったので多少調べてみました。

日本では、加齢黄斑変性を有する人は50歳以上の人口の0.87%です。

加齢にともなって起きる病気ですので高齢者に多く、特に60歳以上に多くみられます。

また男性に多く、男性は女性の約3倍の頻度でみられます。約20%には両眼性に発症します。

アメリカでの研究では喫煙者に多いことも報告されています。

431そもそも、加齢黄斑変性症の治療としては従来の直接的な光凝固治療のほかに光線力学療法 (PDT)が最近良く行われています。

これは、ベルテポルフィリン(ビスダイン)という緑色の色素を静注し、それが患部に達したら、そこへ弱いレーザー光線を当てることで、新生血管を除去する物です。

ビスダインは新生血管に集まり光に反応するので、そこへレーザーを約1分半照射すると、薬が化学変化を起こし活性酸素が発生して、その働きで血管の壁が傷んで閉塞し、その異常血管からの出血が止まるというものです。

1回の治療で完治することは希で、数回の治療が必要です。

428私の近隣では、日大駿河台病院の湯沢美都子教授や、東京医科歯科大学の大野京子助教授などがルーチンな治療として取り入れていて、私も患者さんをお願いしています。

全く治るというわけには行きませんが、進行が止まって、初診時の視力を維持することには十分に成功していて、従来の治療成績を見てきた私には比較的満足の行く結果が出ています。(ここまでは単なる復習で、遺伝子治療には関係ありません)

さて、この疾患では最近最近原因の遺伝子(compliment factor H 遺伝子など)が見つかりましたが、遺伝子療法といっても、この場合にはその原因遺伝子をどうこうしようというものではないようです。

420今回のRNA干渉を利用した加齢黄斑変性症の治療というのは、アキュティファーマシューティカルズ社が2004年10月に臨床試験を開始したもののことのようです。

そのRNA医薬品は化学合成した短い二重鎖RNA(siRNA)製剤で、血管増殖因子VEGF遺伝子の発現を抑え、加齢黄斑変性症の原因である病的な血管増殖(新生血管)を治療するというものです。

私の調査では、その詳細まではたどり着けませんでしたが、おそらく全身投与ではなくて、眼内(硝子体ない投与または網膜下に限局的に注入する)方法ではないかと推定します。

424最後に、直接の関係は無い話ですが、私も参加して行った加齢黄斑変性の研究論文です。(根本伸之先生の学位論文、JJOが日眼会誌の英訳を許した時代の最後の論文です。)

1)加齢黄斑変性における疑似ランダム系列刺激に対する視覚誘発電位、根本 伸之、森  浩士、清澤 源弘、汪  維芳、望月  學、百瀬 桂子 …… 日本眼科学会誌、115巻(平成13年)-P326  :加齢黄斑変性のVEPでは潜時の延長、振幅の減弱、時間周波数特性6~18Hz帯域で振幅低下がみられた。特にVEPの時間周波数曲線が視力を反映した。

2)Nemoto N, Mori H, Kiyosawa M, Wang W F, Mochizuki M, Momose K. Visual evoked potentials elicited by pseudorandom stimulation from patients with macular degeneration. Jpn J Ophthalmol, 2002;46:108-113.

参考にしたページ
http://www.nanbyou.or.jp/sikkan/011.htm
http://www.naoru.com/ouhan.htm
http://noby57.hp.infoseek.co.jp/byouki/me-ouhanhensei.htm

今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。

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