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2006年9月15日

159 動眼神経麻痺

動眼神経麻痺 (管理頁

動眼神経麻痺は眼球運動障害の内でも“核および核下性の麻痺”に含まれるものの一つです。

ピンクの花集団眼球を動かすそれぞれの運動神経の神経細胞の集合したものを運動神経核と呼びます。この眼球運動の神経核は3つあるのですが、それは、動眼神経核、滑車神経核、外転神経核の3つです。いずれも脳幹と呼ばれる大脳と脊髄を結ぶ部分で、その後ろに小脳を控えた部分にあります。

したがってこの眼球運動神経の核のレベルでの麻痺は、脳幹の病変でおきることになります。

この神経核よりも下流の神経のレベルでの障害は核下性麻痺と総称されています。
核下性の麻痺は脳幹の中に出来る場合と、脳幹を出てから外眼筋までの神経の経路のいずこでも起きます。

これらの眼球を動かす神経には、先に挙げた3つの神経に対応して、1、動眼神経 2、滑車神経 3、外転神経の3つがあります。

このうち今日は動眼神経の話をしてみます。

動眼神経核脳幹内での動眼神経の線維は、特異的な分布をすることが知られています(⇒図の出典)。この神経は、いったん各筋肉ごとの神経線維が別れて、脳幹の中での神経の経路に沿って広がり、再び脳幹を出るときに一本の動眼神経という束にまとまって眼球に向かうという構造を持っています。ですから、脳幹の出血などでは動眼神経全部の麻痺ではなく、その一部分だけの麻痺が見られることがあるのです。

私的な話で恐縮ですが、この話になるといつも紹介されるKsiazekの論文と言うものがあります。(引用 Ksiazek SM, Repka MX, Maguire A, Harbour RC, Savino PJ, Miller NR,. Sergott RC, Bosley TM: Divisional oculomotor nerve paresis caused by. intrinsic brainstem disease. Ann Neurol 1989;26:714–718.)このスーザンさんは私の留学時代の同級生で、この論文を指導したのが私の恩師のお一人でイタリア系アメリカ人でジェファーソン大学とペンシルバニア大学の眼科の教授をかねていたサビーノ先生です。

さてこの、動眼神経麻痺ではまず眼球の上(上直筋の麻痺によるものです)、下(下直筋の麻痺によるものです)、そして内側(内直筋の麻痺によるものです)への運動の障害が見られます。この他、上内側斜めの運動の障害が(下直筋の麻痺によって)現れますが、これはほかの方向ほどはっきりは見えません。

このほか、眼瞼下垂(上眼瞼挙筋の麻痺のためにmedstat.med.utah.edu/NOVEL/tmp/full_view?cont…)が強かったり、瞳孔散大(瞳孔を収縮させる副交感神経も動眼神経の成分です)を示します。

このような眼瞼下垂や瞳孔の散大を片眼に示すような動眼神経麻痺ではその原因を動眼神経麻痺と推定することは比較的容易です。

この典型的な症例では、眼瞼下垂と瞳孔の散大を伴い、正面眼位は外斜視を示しています。

右3麻痺の眼瞼下垂右3麻痺上げれば左外斜

図、右 動眼神経麻痺のある目の瞼を指で持ち上げて開き、指示によってその眼で正面を見させると、反対の正常な左眼は強く外転する。

脳幹の出血これらの疾患では、まず原因が血管障害(図は脳幹の小出血)なのか、腫瘍などの圧迫性の障害なのか、それとも炎症なのかといった大まかな原因を確定しなくてはなりません。

原因を見ますとRuckerによれば274例のまとめで、腫瘍18%、外傷13%、動脈瘤18%、糖尿病を含む虚血17%、その他12%、で不明が20%とされています。
原因不明は世界の専門家が見ても20%もあるのです。

通常医師はその原因判断の後で、最適な治療方法を考えます。

脳腫瘍や蓄膿症などの手術をはじめとする、疾患に特異的な方法で治せる疾患では、その専門医(脳外科や耳鼻科)に患者さんを至急渡す必要があります。

脳動脈瘤3麻痺動眼神経の麻痺でこの範疇に含まれるものには、脳外科医にすぐに渡さねばならない内頚動脈と後交通動脈の分岐部に出来る動脈瘤によるがあります。それは眼科医師がMRIなどの検査を進めるうちに、もし数日以内にこれが破裂してしまって、くも膜下出血を起こすと命を落とすことがあるからです。

糖尿病に因る動眼神経麻痺では糖尿病の専門家にその治療を頼まなければなりません。
糖尿病で微小な血管閉塞が起きてその結果起きる動眼神経麻痺は、瞳孔が侵されないという特徴があって、たいていは3月で解消します。しかし、原因の糖尿病を正しく治療しないと、長期的には腎臓障害や眼底出血などの大変な合併症を招来します。

最も妥当な手術や、ステロイドなどの薬剤投薬による治療がなされたら、次が眼科医の出番です。

治療と観察を続けて6か月程度の間、斜視角が安定するのを待ち、治療の方法を考えます。

この際に可能性のある治療の方法は大きく分けて3つです。

蓮華1、まず麻痺性斜視による複視が軽ければ、経過を見ることにします。麻痺した筋肉を使わないほうに顔を向けていれば複視はかるくできます。(しかし、人間の首はとても重いので、いつも小首を傾けていると言うのは結構ひどい肩こりや頭痛の原因になるのです)

白い花一輪2、そこで、次に考えるのはプリズムめがねを試す方法です。プリズムについては斜変位と内側縦束症候群(MLF症候群)の項目ですでにやや詳しく解説しましたので、そちらをご覧ください(⇒リンク)。眼科医としてこのプリズム処方を試みた麻痺性斜視の患者さんの、大体3分の2でその医師による処方と患者さんによる利用が可能でした(プリズムの項にリンク)。(逆にいえば3分の1の患者さんでは、それを掛けて使うことが出来ませんでした。)

斜視手術3、最後の手段が外眼筋の手術です。正面眼位を修正して、少しでも患者さんの生活を楽にするものです。この場合、弱すぎる働きを示す筋にあわせてその対抗作用のある筋を緩めるのが基本です。(麻痺性斜視に対する斜視手術のページにリンク)
それでも足りない場合には、筋の位置を移したり、短縮したりしてバランスをとります。アメリカにはどの筋肉を何ミリ緩めると眼球の運動がどう変わるかと言うことをシミュレートするアップルコンピュータの上で走るプログラムもあります。

ナーガレットいずれにしても、あくまで治療することが可能で、治療を進めなくてはならない重要な原因疾患を見落とさないのが肝心です。

動眼神経麻痺というのは様々な原因で、また様々な病変の場所で起きる疾患を含むので一概に人くくりに論ずることは難しいです。個々の症例に応じた治療法がなされるでしょうから主治医の先生によくお聞きになってください。

今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。

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