お問い合わせ

03-5677-3930初診受付

ブログ

2006年9月8日

156, 視力を脅かす粘液嚢胞(ムコセーレ)、膿嚢胞 ( ピオセーレ)

粘液嚢胞: mucous cyst; mucocele; mucous retention cyst と膿嚢胞 ( Pyocele)

白い花一輪要点:中高年で(痛みを伴う)眼球突出症例では粘液嚢胞の可能性も考えなくてはいけない

ナーガレット”鈍い痛みを伴い眼球が前に出てきた”という訴えの中年男性が大学病院の私の神経眼科外来を眼科研修医の手配で撮られたCTとMRIをもって訪れました。

この患者さんは、30年前の交通事故で意識喪失が遷延する重傷を負い、顔面に複数の骨折をしています。顔面皮膚には古い瘢痕がありますが、明らかな眼球運動制限はありません。

眼窩ムコセーレ診断画像:MRIでは篩骨洞の左側から左眼球上後部に境界鮮明な塊が有り、一部は篩骨洞内にまた大部分が(眼の周りの骨で囲まれた眼球の入った骨のくぼみ)眼窩に有ります。(同様の状態の症例CT写真⇒出典にリンク

CTで見れば、眼窩壁の骨がその部分で溶けて2つの部分は連絡しており、中は均一な物質で満たされています。この画像は蓄膿症が眼窩内に穿破した粘液嚢胞です。

この病変はしばしば小児のころに蓄膿症の手術を受けた成人に見られます。

副鼻腔鼻の中のことを鼻腔といいますが、その鼻腔はそれを取り囲む空気を含み粘膜で覆われた空洞である副鼻腔に囲まれています。副鼻腔には前頭洞frontal、上顎洞maxillary、篩骨洞ethmoid、蝶形骨洞sphenoidが左右夫々にあります。(副鼻腔の構造図の出展にリンク

これらの副鼻腔は、それぞれ鼻腔に細い管状の部分でつながっていて、分泌される粘液が常に鼻腔に排出されています。

手術後の瘢痕や鼻茸の成長などの理由で、副鼻腔の排出路がふさがれると、副鼻腔の中には粘膜分泌物である粘液が貯留し出口を求めて中の圧力を高めます。

細菌の感染を合併して内容物が粘液から膿に変わる場合を膿嚢胞 ( Pyocele)と呼びますます。

眼窩骨膜下膿瘍やがて、その一部は眼窩の骨を突き破って眼窩内に進展し、骨を覆う眼窩骨膜を眼窩内に押し上げて、突レンズ型に膿の溜り(骨膜下膿瘍⇒図の出典にリンク)を作ります。

私が見た画像はこの段階のもので、画像を詳細に見ると視神経と眼球を動かす筋肉の一部が外側に押されて偏移しているのも見えます。

しかし、膿のたまった部分はまだ眼窩脂肪組織とは混ざっておらず、辛うじて眼窩脂肪に感染が波及した眼窩蜂窩織炎orbital phlegmoneにはなっていません。

緊急にその日のうちに紹介した院内の耳鼻科では、粘液嚢胞mucoceleと診断してすでに抗生剤を経口投与してくれていますが、手術の緊急性は認めていませんので、次は視機能への危険を示して、蓄膿症の排膿を早急にしてもらえる様、更に働きかけることにしましょう。

神経眼科外来ではこのような鼻性視神経症が疑われる症例にはしばしば出会います。われわれ眼科医は治療可能な症例を何とか手遅れにしないように注意して診療をし、なるべく早く耳鼻科に紹介しますが、残念ながら手術をしても視力が戻りきらないで終わってしまう症例もままあります。

先週の真鶴セミナーでは、視力を脅かす蝶型骨洞の粘液嚢胞の発表がありました。

オノディー蜂巣視力を脅かす粘液膿腫は前方の篩骨洞よりも後方の蝶形骨洞の粘液嚢胞に多いです。まして前頭洞や上顎洞は視神経からは遠いです。先天的に蝶形骨洞の上方で後半の部分が篩骨洞に連絡している特殊な蜂巣構造(これをOnodi cellオノディ蜂巣と呼ぶ⇒写真の出典にリンク)を持つ人では、そこに蓄膿を生ずると簡単に視神経管に広がって視神経が傷害されるので注意して、それらしき症例は直ちに耳鼻科に照会せよという話がなされました。

今回、私たちが見ている症例では、蓄膿症の手術は受けていませんが顔面骨折を含む外傷の既往があります。これが今回の粘液嚢腫発生とどう関連していたのかを考えるのがこの症例理解のポイントであろうと思っています

今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。
管理頁
清澤眼科医院通信最新ページへ(リンク)します

職員2007.9.15改丁

Categorised in: 未分類