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2006年9月8日

155 眼精疲労 疲れ眼

蓮華眼精疲労(asthenopia)って何でしょうか?

小さな文字の詰まった書類を読んでいると眼が疲れるとか、パソコンで数字を操作していると眼が疲れるとか、長時間の運転をしていると標識が見えにくくて疲れるとか、要するに“眼が疲れる”と言う患者さんの訴えをそのまま病名にした眼科医にはそれこそ便利な病名です。

子供の世界にはテレビゲームが侵入し、大人の世界にはパソコンその他のVDT(ビデオディスプレイ ターミナル)を使う仕事が増えて眼精疲労を訴える患者さんが増えています。

眼精疲労の定義は、“眼を持続的に使った時、健常者では疲れない程度でも疲れて、眼の重圧感、頭重感、視力低下、時には複視などを訴え、はなはだしいときには悪心(気持ちが悪くなること)や嘔吐(胃の中のものを吐いてしまう)までをきたすこと”と私の恩師、所敬先生の書かれた現代の眼科学には説明されています。

当然この眼精疲労はさまざまな原因で起きる病気を含むものですからひとつの症候群(原因を問わず同じ症状を示す疾患を集めたものを症候群といいます。)です。では、それにはどんな状態がその下に隠れているのでしょうか?調節性眼精疲労、筋性眼精疲労、症候性眼精疲労、神経性眼精疲労、神経性眼精疲労をそれぞれ説明してみます。

ナーガレット1、 調節性眼精疲労

老視(や調節衰弱)などのときに、眼鏡を掛けないで見える最も近い点(これを近点といいます)が延長しているのに老眼鏡を掛けないでものを読もうとすれば、強い眼の疲れや肩こりを訴えます。

遠視の傾向がある人では近くを見るときの調節負荷はいっそう強まりますから疲労は強く出ます。乱視でもこの疲れを感じている場合があり、眼科医による正しい眼鏡の調整は眼精疲労治療の第一歩です。

2から4ジオプターの遠視があると、日常生活で遠方を見ているときでも、普通の人がいつも近くを見ているような負担が眼にかかります。それでも本人は自分が若いときは2.0が見えるほど良い眼であったと主張し、今でも何とか視力表の1.0が裸眼で読めるので、常用する(遠見用)眼鏡の必要性を説明してもなかなか納得してくれません。

軽い凸レンズの遠方視用の眼鏡を処方して、購入していただき、その使用を始めると、こちらがびっくりするほど症状が取れたといって喜ばれることがあります。

白い花一輪2、筋性眼精疲労

眼球を左右上下に動かす筋肉は左右眼それぞれに6本ずつついています。眼の方向を変えるたびにこの6つの筋肉は緊張状態を変化させ、対象物に視線を合わせます。

ところが、多くの人ではその視線は平行ではなく、軽く外向きぎみ(外斜位)に寄っていて、左右の視線を合わせるためには眼球を内側に寄せる(輻輳するといいます)ことが必要です。

患者さんが年を取ってきますと、この輻輳作用が弱まってきて、外斜位が顕性化して間欠性外斜視になったり、その直前には大変な努力をしながら両眼で見たりします。

このような患者さんに対しては眼を内側に寄せる輻輳努力を弱めるような方向にプリズムを眼鏡に入れることが有効なことがあります。

高齢になって瞼が下がってくると(これを老人性の眼瞼下垂といいますが、)、上の瞼が瞳にかかってくるようになります。

そのとき患者さんは無意識におでこの筋(前頭筋)を使って瞼を挙げたり、後頭部の筋肉を使ってあごを上げて視線を確保しようとします。

額の筋や首の筋は意図的な力を必要とするときに働くべき筋肉の随意筋であって、ずっと働き続けられる筋肉ではないので、このような筋肉の使い方では大変な疲れを訴えることになります。この場合には眼瞼挙筋の短縮手術も行われます。

ピンクの花集団3、 症候性眼精疲労結膜炎、角膜炎、ぶどう膜炎、緑内障などによる眼の慢性的な刺激感や痛みを眼精疲労として訴える場合があります。

これは“疲れ眼は訴えているが、治療すべき疾患が眼精疲労のほかにある”という意味で症候性の眼精疲労と呼ぶわけですから、治療を考える場合には原疾患を見逃さないように診断しなくてはなりません。

ことにドライアイがある場合には眼の疲れを訴える場合が多いので、涙液の分泌量の減少(シルマーテストで測定される。濾紙を挟んでそのぬれる長さが5分で10ミリを超えることが必要。)や角膜表面の細かい傷(生体染色顕微鏡検査:フルオレッセインで角膜を染めて緑の光で照らすと傷が青く点状に光るので傷が分かり、表層角膜炎が診断されます。)などを根拠に診断します。

ピンクの花一つ霧4、 不等像性眼精疲労左右それぞれの眼には合っていても、左右で2.0ジオプトリー以上の差がある眼鏡を掛けると、眼が疲れて眼鏡を掛け続けていることが出来ません。そのため、左右眼それぞれに近視があって、その差が2.0ジオプトリー以上の場合には、強い近視のあるほうの眼の眼鏡を弱くしてこの不等像性眼精疲労を避ける必要があります。

黄色い花5、 神経性眼精疲労
上記の原因がすべて除外できる場合に、心因性(従来はヒステリーなどと呼ばれていた類のもの)の原因を想定して神経性眼精疲労と診断する場合があります。ただでさえストレスの多い現代の社会ですから、その中で生活する人々にまったく心理的な問題が無いという例はむしろ少なく、安易にこの診断名をつけてしまうと適切な治療機会を逃すことにもなりかねませんので、注意が必要でしょう。

眼精疲労は病名のゴミ箱ではありません。各概念を的確に使い分けて正しい治療をお受けになって、健康な眼で過ごしましょう。

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