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2006年8月30日

148, 脳におけるまばたきの仕組み(瞬目の脳内機構)

脳におけるまばたきの仕組み

赤い花今回は、脳内で行われている瞬きの仕組みをやや専門的に説明して見ます。鈴木幸久先生との共著で提出した文章(解決不明愁訴、不定愁訴の一部)を書き下したものです。

紫の実◎ まばたき(瞬目)とは、速度の早い瞼の開閉の一連の動作で、単なる意図的な開閉瞼とは異なるものです。瞬目を分類してみると、周期性瞬目(periodic blink)、反射性瞬目(reflex blink)、随意性瞬目(voluntary blink)に分けられます。

白い花◎ 周期性瞬目とは、正常な人が一定の周期で無意識のうちにしている瞬目で、最も生理的(普通で病気ではないこと)な瞬目と考えられます。

○ 周期性瞬目は、涙液の分泌、涙の排出、涙の角膜表面への分布を円滑に行う上で重要です。また、眼球を上下左右に動かす眼筋の緊張の解除、それに網膜への入力補正(コンピュータのリセットでしょうか?)などの役目もあると考えられています。
読書やコンピュータ作業などの近くでも野を見る作業や、糖尿病などの角膜知覚の低下を起こす疾患が有ると瞬目は減少しますし、乾性角膜炎の患者では角膜表面の乾燥を防ぐために瞬きは増加しています。

蝶◎ 反射性瞬目とは、角膜や眼瞼など三叉神経知覚枝(顔の温度覚、痛覚、触覚などすべての感覚は三叉神経が脳に伝えています。)への触覚刺激、それに網膜が感じて視神経が脳に伝える光刺激によって誘発される瞬目であす。

○ 片側顔面痙攣(hemifacial spasm)では、三叉神経の過敏状態において刺激を契機にして反射弓の短絡が起こり、筋収縮の持続が起こっています。

赤い花◎ 随意性瞬目は、精神的過敏によって増加し、また、チック症や眼瞼痙攣などの疾患によっても増加が見られます。

どこかのプルート◎ 身体の各部位を動かす場合、脳内のさまざまな部位が関わっており、PET(ポジトロン断層法positron emission tomography)やfMRI(機能的核磁気共鳴画像 functional magnetic resonance imaging)など脳機能をみる検査によって、それらの部位が賦活化されている様子が分かります。

○ 以前から良く研究されている眼球運動によっては、一次運動野(primary motor area)、補足運動野(supplementary motor area;SMA)、前頭眼野(frontal eye field;FEF)などのそれぞれの部分に賦活化がみられます。

○ 一次運動野は、大脳皮質の中心前回に存在し、運動時に脳の他の部位や脊髄に出力を送っている部分です。

○ 補足運動野は、一次運動野の前方の頭頂葉に存在し、一次運動野をはじめとして、運動に関係する中枢へ出力している部分です。この部分は自発的な動作に関係していると考えられています。

○ 前頭眼野は、前頭葉の前方に存在し、眼球運動の発現と調節に関与している部分です。

○ 眼球運動はこれらの部位の制御を受けていると考えられています。

トンボ◎ 一方、瞬目時にも実際には瞼の動きだけではなくて、眼球運動もそれに伴って起こっています。これは、Bell現象(Bell’s phenomenon)とよばれる運動で、閉瞼時に眼球が上転します。

○ Bell現象の正確なメカニズムについては分かっていませんが、橋に存在する顔面神経核と中脳背側に存在する動眼神経核の間の脳幹部経路が関係していると考えられています。

トンボ◎ それでは、瞬目(Bell現象)時にも、垂直眼球運動時と同様の部位の脳の賦活化が起こっているのでしょうか?

○ PETやfMRIを用いた研究において、垂直眼球運動時には一次運動野、補足運動野、前頭眼野のいずれの部位にも強い賦活化がみられるとの報告が多くみられます。これに対して、瞬目時には、一次運動野や補足運動野の賦活化は十分みられますが、前頭眼野の賦活化は見られません。または眼球運動時と比べて賦活化の程度が弱いと報告されています。

○ 瞬目時には、開閉瞼に伴って眼瞼が瞳孔領を横切り、一時的に視覚が遮断されていますが、通常は眼瞼が瞳孔領を横切っている途中の様子や一時的に視野が暗くなることを自覚することはありません。

○ これは、瞬目時の視覚機能が抑制されているためだと考えられています。Ridderらは、瞬目中の視機能の感度についての研究を行っています。被験者の左眼に縞模様を写し出した画像を見せ、右眼はカメラでモニターします。そして、左眼に提示した縞模様のコントラストを変化させ、右眼を開瞼させている時と瞬目させている時のそれぞれについて、左眼で認識できるコントラストの強さを測定している。すると、右眼を瞬目させている時は、開瞼させている時と比べ、左眼は強いコントラストでなければ認識できず、瞬目中は視覚の感度が低下していることが分かりました。

○ この現象を彼は、視覚(瞬目)抑制(blink suppression)と呼んでいますが、同様の現象は眼球運動時にも起こり、左右方向への眼球の急速な運動中に網膜上に投影される移動している景色を自覚することはありません(saccadic suppression)。この現象については、まだ十分解明されていませんが、現在のところ、外側膝状体から視覚野までのどこかで瞬目時の視覚に抑制を行っていると考えられています。

参考文献

平岡満里、菅沼雅子、瞬目-この無視されてきた重要問題-、瞬目の電気生理‐ボツリヌス療法への応用‐神経眼科;20:30-36、2003
丹治 順、脳と運動‐アクションを実行させる脳、共立出版、1999

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