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2006年8月9日

138, 赤眼短絡症候群、(carotid-cavernous fistula, CCF,頸動脈海綿静脈洞瘻)

赤眼短絡症候群 Red eyed shunt syndrome (Dural AVM)
類義語:carotid-cavernous fistula, 頸動脈海綿静脈洞瘻

赤眼短絡症候群の顔図の出典にリンク

◎ 白眼が赤く、それが頭部の骨に出来る血管の短絡路(脳硬膜動静脈奇形)によって起きているという疾患があります。
CCF 充血

◎まずこのような症例の病歴を提示します。

68歳女性が右眼の徐々に増強する充血と、複視を主訴に来院しました。

受診時の視力は右矯正視力が(1.0)、左も矯正視力が(1.0)で良好であり、眼球突出は右が27mm、左が22mmと左目に突出がありました。

眼圧は右が25mmHgとやや高く、左は19mmHgと正常でした。

前眼部と中間透光体は両眼に初期の白内障と右眼外転運動の障害が認められました。

眼底には異常がありませんでした。

これが典型的な海綿静脈洞における脳硬膜動静脈奇形(=carotid-cavernous fistula, 頸動脈海綿静脈洞瘻)の症状です。

赤眼短絡症候群の特徴

海綿静脈洞部の動静脈瘻(動静脈ろう、cavernous arteriovenous fistula)の多くは結膜の充血が強く、時には複視を示す疾患です。

Phelps らはred eyed shunt syndromeと呼んでいます。それで私はこの疾患を赤眼短絡症候群と翻訳しました。

この病気は複視を示すことから外眼筋麻痺などとも間違われることも多い疾患です。

本態は海綿状洞の壁での脈動静脈のシャント形成による海綿静脈洞圧の上昇です。

海綿静脈洞の壁面で神経が圧迫されれば外転神経麻痺、動眼神経麻痺ないし滑車神経麻痺を示すことがあります。

この高い静脈圧が上眼静脈を伝わって前方に広がれば、さらに種々の直接的な眼球での症状が発現することになります。

◎ carotid-cavernous fistula, 頸動脈海綿静脈洞瘻の鑑別診断としては

1) 複視から外眼筋麻痺などが考えられ、

2) 充血から原発性の結膜炎や上強膜炎、眼圧の上昇から緑内障、眼底の変化から網膜静脈切迫閉塞症が鑑別疾患として挙げられます。

海綿静脈洞部動静脈ろうは頭蓋底の骨折を伴う外傷に続発する高速血流シャントと、原発性の低血流シャントに分けられています。

前者の高速血流シャントには明らかな動静脈ろう(arteriovenous fistula: AVFs)があり、外傷の既往歴のほか、結膜血管の著明な拡大を認め、本人も自覚するほどの拍動性の血管雑音、そして眼球突出も見られるので、診断を誤る危険は少ないです。

しかし、低血流型シャントでは結膜充血は弱く血管雑音も乏しいです。このため典型的な頚動脈海綿静脈洞ろう(carotid cavernous fistula:CCFと略称されることも多い)を想定すると、低血流型シャントではその診断が困難です。

このcarotid-cavernous fistula, 頸動脈海綿静脈洞瘻は、先天性の動静脈奇形(arteriovenous malformations: AVMs)をその基礎に持つといわれているますが、若年者にはその発生がほとんど見られず、高血圧や糖尿病を持つ中高年の女性に多いことから、その症状発現にこれらの基礎疾患が関与している可能性も考えられます。

◎ 赤眼短絡症候群の臨床症状

赤眼短絡症候群の多くは結膜の充血で発症し、それがだんだんに強まって眼科を受診します。
赤眼短絡症候群の眼(この程度の充血だとこの診断が付かないことがしばしばあります)

眼科受診時にすでに何軒かの眼科を受診して、難治な結膜炎などと診断されていることもまれではありません。

一般的にその経過では眼圧上昇、うっ血による網膜静脈の拡張や網膜静脈の蛇行を伴う眼底出血、そして眼筋麻痺などを示します。

そして何もしないのに数ヶ月後にcarotid-cavernous fistula, 頸動脈海綿静脈洞瘻は自然治癒傾向を示すものも多いのです。

しかし、その消退に先立ち上眼静脈の血栓症のために眼窩内の静脈圧が上昇して結膜浮腫や眼球突出などが急激に悪化することがあります。

これが逆説的な悪化(paradoxical worsening)と呼ばれるものです。

またシャントへの動脈血の流入現象が大きければ、眼底には虚血がおこり血管新生緑内障が続発することもあります。

静脈血の血栓化により網膜中心静脈閉塞症などが続発する子ともあります。

またシャントにより渦静脈の停滞がおこり、脈絡膜剥離や脈絡膜上に血腫を発生する事もあります。

◎ 赤眼短絡症候群の臨床症状

結膜の充血はもともと正常な眼にも存在する上強膜血管と、結膜表層の血管の角膜輪部での吻合が拡張したものです。

眼窩深部から顔面の血管系に血液が逆流したときに拡張したものです。

CCF 充血
Medusaこの血管拡張はギリシャ神話に現れる蛇の髪の毛を持つ怪物であるメドゥーサをもじってメドゥーサの首(caput medusae)と呼ばれています。

数ヶ月の時間が経つと、後には輪部から離れた部分での上強膜静脈と結膜静脈の間に直接の吻合が発達するので、輪部に近い球結膜の充血は目立たなくなります。

眼圧は上強膜静脈圧の上昇を反映して20-25mmHgと中等度の上昇を示すことが多いです。

シュレム管の血液角膜と虹彩の間の隅角を見れば房水静脈へ逆流した血液の流入を見ることもあります。(シュレム管と言う通常は血液のないリンパ管の部分に逆流した血液:出典は最初の引用頁)
CT やMRIではしばしば太く腫大した外眼筋と拡張した上眼静脈が見えます。

血管造影
確定診断には脳血管撮影が行われ、これによってシャントへの血液を供給している導入血管が決定されますが、MRIアンギオグイラフィーも侵襲が少ないので通常の脳血管撮影に先立って勧めることの出来る診断法です。
紫

◎ 赤眼短絡症候群の治療方針

眼症状が軽ければ永続的な視覚障害を残さないように、眼圧の上昇、網膜静脈のうっ血、眼筋麻痺などに注意して症状の回復を待ちます。

房水が流出する上強膜静脈の圧が上昇しているので、眼圧降下剤の効果はあまりよくないですが、まずは点眼治療で眼圧の降下を目指します。

通常、眼圧が上昇している期間が短いため、視野が緑内障性の変化を示すにいたることは少ないです。

普通は実際に網膜静脈の閉塞が起こる前に動静脈ろうが自然に消退し、眼症状は寛解を見ることが多いです。

この疾患での眼球運動障害は眼球運動に関連する神経の虚血ないし周りの組織による圧迫によっても起きます。

また外眼筋自体のうっ血や、腫脹自体でも起こることがありますが、複視が3月以上持続することは少ないです。

最近ではカテーテルを上眼静脈経由で海綿静脈洞まで直接入れて、そこから海綿静脈洞に金属の細線を挿入して海綿静脈洞に血栓を発生させ、吻合血管の閉塞を誘発する治療が行われて、比較的良い結果が得られています。

しかしこの手術治療には少ないながらも合併症もあり、また海綿静脈洞部の動静脈ろうは自然消退も多く見られる疾患であり、全例に直ちに行われなければならない治療法ではないと私は考えています。

◎ 参考図書:

(1)Phelps CD, Thompson HS, Ossoinig KC: The diagnosis and prognosis of atypical carotid-cavernous fistula (Red-eyed shunt syndrome) Am J Ophthalmol 1982;93:423-426.

(2) Sergott RC, Grossman RI, Savino PJ, et al: The syndrome of paradoxical worsening of dural-cavernous sinus arteriovenous malformations. Ophthalmology 1987,94:205-212.

以前記載したdural AVM, CCFの解説へリンクhttps://www.kiyosawa.or.jp/wp/archives/50402045.html

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