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2006年7月18日

125, エイズの眼症状

エイズ(AIDS、HIV)の眼の症状

HIV感染に関する眼の症状についての質問がありましたので説明いたします。

後天性免疫不全症候群はHIV (human immunodeficiency virusヒト免疫不全ウイルス)の感染によりひきおこされる細胞性免疫の不全状態に基づいておきます。

免疫が弱まる結果、日和見感染、悪性腫瘍(バーキットリンパ腫など)、神経系の障害などを合併します。

HIVの感染は、性行為、輸血および血液製剤による感染、汚染した注射針の再使用、母児感染などでもおきます。

HIVによる感染の全過程をまとめてHIV感染と呼んでいます。

HIV感染が成立すると6-8週後には血液中に抗体が出現し、其のときにはじめて血液でのHIV感染の診断が可能になります。

(現在、大学病院では、手術を受けるすべての患者さんに梅毒、BおよびC型肝炎と共にHIV感染の有無を調べています。ですから、大病院で手術準備の採血検査を受け、HIVの感染を告げられなかった人は、少なくとも其のときには感染していなかったことになります。)

血清抗体の陽転する時期に一部の症例では倦怠感や発熱を示しますが、多くの症例では無症状の潜伏期を経過します。

この状態が無症候性キャリアで、其の時期が比較的長く続きます。

其のうち、下痢、持続的なリンパ節の腫脹などが現れ、AIDS関連症候群(エイズ関連症候群)へと進行します。

真性エイズでは、通常は病原性を持たないような弱い病原体に対する重篤な臓器感染(日和見(ひよりみ)感染)、カポジ肉腫などの合併をみるようになり、このような2次的な疾患が患者の死亡原因となります。

感染後、エイズ発病までの平均期間は2から5年とされています。

さてここからが、エイズの眼症状の説明です。

A:眼底病変
○ 白斑:小さな血管が詰まった結果現れる網膜の血液循環の障害ですが、視力の低下などは通常は起こしません。

○ 網膜の出血:点状やしみ状のものなどありますが、これも中央部にかからねば視力は下がりません

○ 網膜の毛細血管瘤:これは糖尿病などに見られるのと同じ小動脈の瘤です。

○ 虚血性黄斑症、虚血性視神経症:網膜の黄斑や視神経に貧血が起きると視力が下がります。其の頻度は高くはありません。

○ 網膜血管炎:HIV 自体の感染による血管の炎症性変化のようです。

○ 特に網膜にはサイトメガロウイルス、クリプトコッカス、結核、梅毒、ヘルペス、カンジダなどの感染がしばしば現れます。

サイトメガロ網膜炎

○ サイトメガロウイルス網膜炎:エイズの網膜変化で最も頻度の高いもので、網膜の白斑に出血が伴う特有な像を呈します。この変化をもつ患者の生命予後は良くないとされ、アシクロビルを使っている患者でも7ヶ月、未治療群では平均2月であるということです。

○ トキソプラズマ網脈絡膜炎

○ 真菌性眼内炎:カンジダやクリプトコッカスが眼内に増生することがあります。

B:外眼、前眼部病変:外眼部にもヘルペスやカンジダ、伝染性軟属腫(水いぼ)などが現れます。

カポジ
○ カポジ肉腫:全身の皮下と同様に眼の周りにも現れる深紅色の結節で、病理検査では紡錘型の細胞浸潤と豊富な血管進入が見られます。(水痘ウイルスとカポジにリンク)

○ バーキットリンパ腫

○ 眼部帯状ヘルペス:アシクロビルで治療されますが、通常の帯状ヘルペスよりも若年者に多いとされています。

C:神経眼科的異常

○ サイトメガロやトキソプラズマの感染による脳炎、髄膜炎、腫瘍などによる脳神経麻痺、視野欠損、うっ血乳頭、視神経萎縮など眼に関連した症状を見ることがあり其の頻度は10-15%程度です。

サルペトリエールにおける
パリの大学病院(サルペトリエール病院:図はサルペトリエールにおける大昔のシャルコーの神経学の講義風景)や米国フィラデルフィアの大学病院(ペンシルバニア大学トジェファーソン大学)に比べると、日本では実際に大学病院の眼科の外来に出ていても、このようなHIV感染の患者さんを拝見することはまれでした。まして自分の診療所での外来では一度も拝見していません。

大学で内科医から、“この患者さんはHIV感染者であるが、さて目の症状は出ていないか?“と聞かれると、それなりの所見が見える場合もあります。しかし、何の前触れもない初診患者に何らかの軽い眼症状があっても、見逃しているのかもしれません。

ですから、眼の症状からHIV感染を発見したと言う経験は、私には大学病院時代を含めてまだありません。

さてあなたがHIV感染をすでに診断されていて、あるいはそれを疑うに足りる既往歴がある場合、視力低下や飛蚊症などの眼の症状がHIVに関連したものではないかと心配な場合には、まず通常の眼科を受診なさって、そのように聞いてください。

もし、眼症状がHIV感染に関連するものであることの診断がすでについていて、それが重症なものである場合には、HIV感染症を積極的に受け入れている都立駒込病院などへの紹介状をもらって受診しセカンドオピニオンを求められるのも良かろうかと思います。

ちなみにエイズ治療の拠点病院はエイズ治療拠点病院リストで見ることが出来ます。

太田俊彦、田中稔、AIDS:目の病変、各科臨床医のために、金芳堂 を参考にしました。

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