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2006年4月15日

80 視覚の脳内情報処理(講習会記録)

日本眼科学会専門医制度第44回講習会(リンク)のオルガナイザーをいたしました。
その記録を記載します。

講習会日程:平成18年4月15日(土曜日)18時15分~21時15分

テーマ2が私の担当した『眼科学の基礎シリーズ(29)』です。
視覚の脳内情報処理
 オーガナイザー 清澤 源弘 博士(東京都)
 大阪国際会議場 1001/1002会議室

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第44回講習会プログラム

テーマ1:省略

テーマ2
『眼科学の基礎シリーズ(29)』視覚の脳内情報処理
 オーガナイザー 清澤 源弘 博士(東京都)
テーマ2の演題は、視覚の脳内処理機構ですが、今回はすぐにでも明日からの眼科臨床に役立つお話が聞ける演者を選んで3つの講演をお願いいたしました。

演題:1)色覚の脳内処理機構
  仲泊  聡 講師(慈恵医大)

神奈川リハ病院
中泊先生が診療している神奈川リハ病院の外観(リンク
中泊 聡先生には彼の得意とする“色覚の脳内処理機構”の話をしていただきました。先生は慈恵医科大学の神経眼科のグループの一員で、神奈川リハビリテーション病院をフィールドに視覚に関連した神経心理学的な数々の業績をつんでいらっしゃる先生です。医学に手を染める前に心理学を学ばれたというだけあって、神経心理学の手法をファンクショナルMRIの領域に取り入れています。ファンクショナルMRIという新しい手段にもかかわらず、きわめてオーソドックスで正当なプロトコールで視覚生理学の研究を進めておられます。その内容は1、大脳性色覚異常と色恒常性、2、マカクザルのV4野と色覚の関連、3、人の色覚中枢がV4だという主張、4、人の色覚中枢はV8野だという主張、と発展的に議論を進めてゆき、最後は、全体的な情報処理の流れの中で色の情報も処理されているという結論が導きだされます。この抄録はまるでZekiの本のように流麗です。今回の講演では中枢性色覚障害を理解するのに必要な高いレベル脳のお話が、もっとも分かりやすい形で説明されます。

1.大脳性色覚異常と色恒常性
2.マカクザルの「色覚中枢」はV4野という主張
3.ヒトの「色覚中枢」はV4野という主張
4.ヒトの「色覚中枢 はV8野という主張
5.V4α野とV8野
6.ヒトV4野の特性
7.特定の領野を色覚中枢と呼ぶのは時期尚早か

演題:2)脳血管障害による様々な中枢性視覚症状
  石井 賢二 博士(東京都老人総合研究所ポジトロン医学研究施設)

石井
石井賢二先生が診療助長を務めるポジトロン医学研究施設にリンク(写真出典)

石井健二先生には脳血管障害による様々な中枢性視覚症状の解説をお願いしました。脳血管障害をはじめ様々な脳の器質的障害では多彩な中枢性の視覚症状を呈する症例があります。これらの中枢性の視覚症状を呈する患者は、見えにくいという自覚症状からまず眼科医を受診することが少なくありません。この疾患に対する適切な診療と治療の機会を逃さないために眼科の臨床医が知っておくべき中枢性視覚症状の特徴について石井先生は説明してくださいました。
 石井先生は神経内科ご出身のポジトロン断層法(PET)の専門家で、現在は東京都老人総合研究所のPET検査室の臨床部門の責任者を勤めておられ、同時に東京都老人医療センターの神経内科外来で豊富な中枢性視覚障害の症例を経験しておられます。提示される症例には 1、視路と第一次視覚領の障害に関連する視力と視野の障害、2.脳幹の障害に関連した眼球運動の障害、3、幻覚と錯視に代表される高次視覚中枢の病的な症状、4、アルツハイマー病や脳血管性の認知症などで見られる視覚認知の障害、5、片頭痛やてんかんに伴う特異的な視覚症状などが含まれています。

1.視力と視野の障害
  (1)視路の器質的損傷と視野欠損
  (2)心因性視覚障害との鑑別(リンク)
2.眼球運動障害
  (1)複視
  (2)眼振
  (3)瞳孔運動障害
3.幻視と錯視
4.視覚認知の障害
  (1)空間認知障害
  (2)色覚認知障害
  (3)相貌失認
  (4)動態視障害
  (5)視覚性失読
5.片頭痛やてんかんに伴う視覚症状

演題:3)脳損傷による視覚障害のリハビリテーションの実際
  平山 和美 助手(東北大・高次リハビリテーション科)

本平山先生の翻訳した本。リンク

平山和美先生には脳損傷による視覚障害に対する、リハビリテーションの方法をお話願いました。手足の麻痺などの症状を示す脳障害の場合と同様に中枢性視覚障害にもそれに適したリハビリの方法があるのです。平山先生は福島県立医科大学神経内科および東北大学高次リハビリテーション科で一筋にこの研鑽を積まれ、マックス・プランク精神医学研究所Josef Zihl教授の『Rehabilitation of visual disorders after brain injury脳損傷による視覚障害のリハビリテーション』 を監訳された先生です。脳損傷による視覚障害のリハビリの主な目的は、意図的探索行動で患者の行動を改善しようとするものです。脳血管障害では20%が同名性視野障害を合併し,その60%が探索障害を示します。視野の自然回復を待つだけではなく,意図的に探索行動をさせることによってその患者の行動の改善をはかるというのは、今までの眼科医療にはなかったアプローチであると考え、私は今回の講演をお願いいたしました。このほかの訓練にはコントラスト感度の障害,中枢性の色覚障害,視空間知覚の障害,視覚性失認,中心暗点を対象として、それらの自然回復を促すリハビリテーションの方法があります。

1.訓練
  (1)同名性視野障害に伴う探索障害の、衝動性眼球運動を用いた代償訓練
  (2)(1)に大脳性色覚障害を伴う例での、正常な色コントラスト感度を利用した探索訓練
2.環境整備
   パターン・オン・パターンが知覚できない視覚型アルツハイマー病例と、環境整備
3.補助具
   黄色いメガネによる、視覚型アルツハイマー病例のコントラスト感度の改善

黄色い眼鏡がアルツハイマー病のコントラスト感度を良くするというお話は特に新鮮に感じられました。
今後、この演題の内容を雑誌;神経眼科の特集記事か、または単行本にまとめていただき対ものと考えています。ご期待ください。


今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。(清澤 源弘)(清澤眼科、清沢眼科、きよさわがんか)

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