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2006年4月13日

79 眼に症状の出るむち打ち症(鞭打ち症)

むち打ち症:眼に症状が表れる外傷性頸部症候群(むち打ち症、ムチ打ち症)
Post-traumatic Cervical Syndrome(Whiplash Injury)
鞭打ち(図:鞭打ち症が発生する追突事故の状況。図の出典にリンク

今日は眼に症状が現れるむち打ち症を”おばあちゃんに分かる”ように説明してみましょう。(このおばあちゃんは、私の母のことです。)

(ここでこの疾患を取り上げるのは、先日受診されたある鞭打ち症の患者さんに納得いくまでの説明がし切れなかったか?と思ったからです)

ひとつづつ鞭打ち症の症状をなぞってみると、患者さんが訴えている鞭打ち症の眼の症状が少しは理解できるかもしれません。

○ この疾患“むち打ち症“は外傷によって、頸椎に大きな衝撃が加わることによって引き起こされる頸部痛を伴う障害です。

◎ 目に関連する訴えとしてむち打ち症は
・ “眼の疲れ”(眼精疲労)、
・ “眼のぼやけ”(霧視)、
・ ” ごみが入った感じ“ (異物感)
・ ”眼の痛み“(眼痛)、
・ “なみだ目”(流涙)、
・ ”ひとつのものが二重に見える”(複視)、
・ ”まぶしさ、まぶしい(羞明)“、
・ ”ピントが合わない”、(調節障害)“、
・ ”眼が赤い(充血)“、
などを訴えます。

○ これらの症状に患者さんが事故直後に気がつく場合と1~2週間してから気がつくという場合があります。

◎この様な患者さんの目の症状を精密に見ると次のような異常が検出できます。
1、 調節障害:
ピントを近くに近づけるけることが困難な状態です。石原式近点計や赤外線オプトメーター(ごく一部の施設、たとえば港区の梶田眼科http://www.kajiTAGSanka.jp/vtr.htmなどにあります。測定希望の方は、清澤のブログで見たがといって聞いてみてください。)で測定できます。瞳孔の異常は赤外線瞳孔計(これも設置している施設は限られたものですが)で記録できます。

2、 輻輳障害:
近くのものを見るときに左右の眼を内側に寄せますが、この内寄せが上手にできず、目の前の物が二重に見えると訴えます。遠くが見える眼鏡をかけて、鉛筆を眼前30センチくらいから眼に近ずけてゆき、両眼で鉛筆の先が2本に見えてしまう距離を測ります。5センチくらいが正常で、この輻輳麻痺ではこれが延長します。

3、 視力障害:
左右の眼を内側に寄せる輻輳機能が低下しますので、これを補うために眼が近視化することがあります。ほとんどの例で矯正視力は良好です。

4、 斜視:
隠れて前から存在していた外斜視が明らかになることがあるとされています。

5、 視野障害:
片目で見て目の前のどの範囲が見えるかという概念を表す言葉が視野です。多くの場合に視野は正常ですが、(視野を測るうちに段々に狭い範囲しか見えなくなってゆく)らせん状視野や(眼から離れても見える範囲が広がってゆかない)トンネル状視野など心因性の要素の影響した異常な視野がむち打ち症では出ることがあります。

○ このように様々な眼の変化がむち打ち症では測定されることがあります。
しかし実際の臨床の場では、その症状の存在を証明できる客観的なデータが乏しく、たとえば頭部のレントゲンやMRIを撮影してもたいていの場合には異常が見出せません。

◎この疾患はCroweが1928年にWhiplash と言う用語を使ったのに始まりがあるようです。日本では1958年に報告され、戦後の急激な車による追突事故の増加により、むち打ち症の存在が急速に注目され、それに伴う眼の症状も認識されました。むち打ち症は追突事故のほか 転落事故やスポーツ外傷でも見られます。

◎ 眼以外の一般的な症状
画像上では、症状を説明できる所見がないことが多いにもかかわらず、むち打ち症(外傷性頸部症候群)の症状は多様で、損傷部位によってその症状が異なりますが、むち打ち症では眼症状を含む多くの不定愁訴を示します。
むち打ち症の代表的な症状には次のものが含まれます。

1、頸部の筋肉の疼痛およびこれに伴う運動制限 と二次的な筋緊張型頭痛:頭痛、頭重感、肩こりなどの頸部軟部組織に関する症状。筋緊張型頭痛は精神的ストレスや天候、気候によって左右されやすい。

2、疼痛や感覚異常(しびれ感)、腕、手指の筋力の低下 などの神経根に関する症状、

3、めまい、視機能の障害、平衡感覚の障害、手指のふるえ、歩行異常などを含む小脳症状や意識消失などの椎骨動脈に関する症状、

4、上下肢の運動麻痺および感覚障害などの脊髄障害

5、流涙、顔面紅潮、唾液分泌や発汗の異常、眼裂と瞳孔の左右差などの交感神経系症状があり、しばしば精神身体化障害も伴われます。

6、バレー・ルー症候群(むち打ち症の強いもの)では特に目や耳の症状、心臓の動悸、手足のシビレ、発汗、顔面紅潮などの自律神経症状が強く現れます:眼の症状としては目がかすむ、二重に見える、目が疲れるなどを強く訴えます。

◎ 原因
• 乗車している自動車が追突されると、頭の後頭骨と頸椎の接合部、ついで、ほとんど同時に第5-6頸椎の部分を軸として頭部が前後に回転します。そのため、上部頸椎と第5-6頸椎の部分が傷害されます。 まず、頸椎の過伸展が起こり、反動と急制動による過屈曲がそれに続き、頸部の靭帯、筋、椎間板、椎間関節、さらに頸髄や神経根なども損傷されます。

• 頸髄の微少な血流障害や交感神経の過緊張によって複雑な症状が増強されます。 これらの微小な損傷は数週間で自然治癒することが多いですが,一部の症例では年余にわたり持続することがあります。

• 精神的緊張が高まり、不安がつのると、筋肉の緊張がいっそう高まります。筋肉痛は、精神的緊張の高まりや不安を引き起こします。

• 補償問題などが複雑に絡み合うので、詐病(うその病気、仮病)や心因性反応などとの鑑別が必要な場合も多く、逆に実際の症状があるにもかかわらず詐病とされてしまう場合もあります。

◎治療
一般的事項

○加害者や周囲の無理解に対する怒りなど事故に関連した心理的なストレスが存在することが多いのでその軽減に努めます。このため、可能な限り患者との接触を持つように努めます。

○80%の症例は6~9か月以内に症状固定や治癒に持ち込めるとされています。この言葉は患者さんへの大きな励ましになります。

○低髄液圧症候群(外傷に伴って脳脊髄液が漏出し、髄液圧が下がって症状を起こすものしまうもの)が疑われる場合には脳外科に相談する必要があります。

眼症状に対する個別の事項

1)調節障害:
近見用眼鏡の処方が可能ですが、徐々に回復する場合があり、眼鏡度数の変更が必要なことが多いです。調節緊張には0.04-0.025%シクロペントレートを寝る前に使うとよいと言う人がいます。ビタミン剤などの処方も可能です。

2)輻輳不全
輻輳不全には輻輳の練習がよい場合があります。

3)視力障害:
それぞれの症状に応じた眼鏡処方が有効です。

4)眼位異常;
変動しますが、プリズム処方を試みることができます。手術はあわてて予定せず、十分に待ってから適応があれば考えるのがよいとされています。

さて少しは鞭打ち症で困って折られる患者さんのお役に立てたでしょうか?

参考にした文献は
1、 江富朋彦、奥英弘 “交通外傷と調節・輻輳障害、これなら分かる神経眼科 (眼科プラクティス5) 286-287、2005、文光堂
2、 http://www.shiga-med.ac.jp/~koyama/analgesia/pain-trauma.html(滋賀医科大学第一生理ホームページのむち打ち症の項)
です

今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。
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