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2006年2月23日

52 特発性視神経炎

特発性視神経炎 (清澤源弘、清水恵)
管理頁
乳頭炎

 特発性視神経炎は視神経の炎症性病変ですが、その実態は視神経の繊維を包む髄鞘の細胞が炎症によって脱落するものです。

本質的な差ではありませんが、眼底の視神経乳頭に腫れ(乳頭浮腫)を示すときには乳頭炎(図:乳頭炎)、炎症の場がもっと後方にあってこの浮腫が見えず乳頭が正常に見える場合には球後視神経炎(図:球後視神経炎)
と呼ばれます。
球後視神経炎

発症時に多発硬化症などの全身の基礎疾患の所見が見られなければ、原因が特定されないと言う意味で特発性視神経炎と呼ばれます。

特に急性の発症経緯を示すものでは、手足の麻痺などを引き起こす多発硬化症に移行する可能性が比較的高いので注意が必要です。
 
典型的な視神経炎は15-45歳までの年齢層に発生することが多く、その75%は女性です。

急性の視力低下を主訴に発症し、多くの患者では眼球運動痛も訴えます。視野は従来中心暗点(図:中心暗点)であると言われていましたが、米国の調査では半盲等を含む様々なものが混在していることが分かっています。
視神経炎視野

 患者さんに対する検査としては、視力、眼圧、眼底検査(眼底写真)および視野検査を行って診断を確定した後、MRI検査を勧めます。これは、視神経の病変を直接見ることが期待できることのほかに、別の方法で治療できる蓄膿症や視神経に圧迫を与える腫瘍性の疾患を除外することができるからです。
MSプラーク

また、視神経炎の原因になっていることがしばしばある多発硬化症の脱髄性のプラークを脳の中で探すことができます。(図:多発硬化症のプラーク)MRI では多発硬化症の場合にFLAIR法などで側脳室周囲の白質に白色に見える高信号の脱髄性病変が多数散在している様子を見ることができま、多発硬化症の有力な診断法になっています。
 
 現在行われる治療のもっとも標準的なものはステロイドパルス療法です。

これは大量のステロイドを3日程度連続して点滴で与え、以後漸減してゆくものです。この治療の結果数日遅れて視力の回復が見られることが多いですが、結果が思わしくなく一週間の間隔をおいて、数回のステロイドパルス療法を繰り返す場合もあります。

現在、特定の疾患に対する標準的な治療法を確立するためには、多施設トライアルと言うものが行われます。

このトライアルでは、臨床実験としての研究計画が安全で妥当なものであるかどうかが倫理委員会でまず審査されます。

募集条件に合う患者さんが登録各施設を訪れると、本人の承諾を受けた上で治療トライアルに登録してもらいます。

その各患者さんには比較されるべき治療のうちのどのコースを選ぶのかを籤引で決め、その治療法を改変することなく厳密に行います。(治療法を変えたような場合には脱落として統計計算がなされます。)

一年なり5年の期間がたった後、全部の被検者のカルテが集計センターに集められて厳格な統計処理がなされ、どの治療法が勝っていたかが明らかになされます。

米国ではBeck博士を中心に、日本では若倉雅登先生を中心にして特発性視神経炎の治療トライアルが行われました。

幸い、私はアメリカのトライアルをジェファーソン大学のSavino教示の下への留学期間中に見ることができ、日本のトライアルには東北大学で参加することができました。

米国の多施設トライアルでは、このパルス治療は視力の回復を早めるが、最終視力はこの治療をしても自然経過に比べてよくはならないことが報告されました。

しかし、大量のステロイドが危険だからと言って、中途半端な量のステロイドだけを点滴や経口で与えると、多発硬化症の発生率が増してしまうのでこれはするべきではないというのが、臨床医を驚かせた結果でした。

大量のステロイドをパルス療法として投与する場合には、内科と連携して厳密な合併症を予防する措置を取ることが必要です。

典型的な視神経炎の患者では10年後にも視力が1.0以上を維持する確率は88%と言われていて、比較的その予後はよいものです。しかし、最初から視力の低下が激しかった眼では視力の回復の確率が低くなります。

また、視力の回復は通常6ヶ月以内に確定してしまいます。再発が30%に見られますが、その再発は最初の罹患眼とその反対眼で50%ずつとされていて、この再発を繰り返すたびに視力の回復限界は弱まります。

一部の報告では10年後までに多発硬化症に移行してしまう確率が38%であるとも言われていますので、一度視力が回復したとしても最初の数年は仕事やスポーツなどで無理をしないで、視神経炎の再発や多発硬化症の発症を避けるのがよいと思われます。

参考
1, Beck RW, Savino PJ, et al( Optic Neuritis Study Group) Neurologic impairment 10 years after optic neuritis. Arch Neurol. 2004,61:1386-9.

2,Wakakura M, Kiyosawa M et al: Multicenter clinical trial for evaluating methylprednisolone pulse treatment of idiopathic optic neuritis in Japan. Optic Neuritis Treatment Trial Multicenter Cooperative Research Group (ONMRG).
Jpn J Ophthalmol. 1999;43:133-8.

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関連疾患:虚血性視神経症へ⇒リンク

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