お問い合わせ

03-5677-3930初診受付

ブログ

2006年2月13日

47 アトピー性皮膚炎に伴う眼の症状

(http://arapaho.nsuok.edu/~fulk/kanski.html)
アトピー白内
アトピー性皮膚炎の患者さんがいろいろな眼の症状を訴えて受診します。日本人のアトピー性皮膚炎の眼症状を扱った眼科臨床医むけの教科書に山本節先生と大野重昭先生が中山書店から1997年に出版した“アトピー性皮膚炎と眼“という本があります。この本は広く日本人のアトピー性皮膚炎と目の症状を論じた分かり易い本ですが、この本によれば日本人のアトピー性皮膚炎は軽いものも含めると1000万人にも及ぶとか。アトピーには様々な眼の合併症がありますが、その中でももっとも代表的なのが白内障と網膜剥離です。

私も、医科歯科大学に在籍していたころ皮膚科の谷口先生と横関先生にステロイド離脱中のアトピー患者さん78人を紹介していただき、私が眼科の検査をした結果をまとめていただいたことがあります。これは、Taniguchi Hら、The Journal of dermatology 26:658-665 ,1999に発表されました。私はアトピーの専門家では有りませんが、このときの結果を元にアトピー性皮膚炎の眼合併症を振返って見ましょう。

この結果では、ステロイド離脱時のアトピー性皮膚炎の患者さんにはアレルギー性結膜炎が最も多く27名(34%)に見られました。

ついで多かったのが白内障で20名、(25.3%)、角膜表面の細かい傷(表層性角膜炎)が10例(12.6%)、そして網膜剥離が9名(11.3%)、剥離を伴わない網膜格子状変性が3名(3.7%)にありました。円錐角膜もアトピー性皮膚炎に伴うものとしてよく知られていますが、これは1例(1.2%)のみでした。

まず白内障は目の中に備わった本来透明なレンズが白く曇る疾患で、多くは老人に見られるものなのですが、このアトピー性皮膚炎では年齢にかかわらず若年から見られます。(借用して上に示した図を参照)

アトピーに伴う白内障年齢分布は14歳から43歳に広がり、その平均年齢は23.2歳と若年でした。性別による差はなく、男性では31%、女性では18.9%が白内障でした。これは、日本や海外の文献でも10-37%です。

左右両眼に混濁のあるものが75%で、片眼のみが曇っていた症例は25%しかありませんでした。

このうちレンズの後ろの膜(水晶体後嚢)の混濁が18眼、レンズの前の膜の混濁は7眼と前後の膜の混濁が多く見られた点が、普通の老人性白内障とは違っていました。

白内症手術後にレンズを取り囲む袋(水晶体嚢)が示す収縮も強く、場合によってはいったん正しい場所に入った人口水晶体が押し出されて偏移を示すこともあるほどです。水晶体の前面に開ける水晶体の前嚢切開は大きく開けるのが肝心で、この袋をしっかり押し開くように腰の強い足を持った人口水晶体を選ぶことが推奨されています。

手術自体は、通常の超音波乳化吸引法で行えますが、患者さんの年齢が若いので水晶体がまだ柔らかく、ほとんど超音波をかけずに吸引をすますことが可能です。

次にこの疾患での重要な合併症である網膜剥離は9例(11.4%)が合併していました。男性では16.7%、女性では5.4%であり、年齢分布は14-30歳でその平均は21.9歳でした。これは国内の諸文献でも0-8%です。この比率は、網膜剥離の自覚症状がない患者さんを対象としたものですから、一般市民における網膜剥離の日本人での発生率である一年間で1万人に1人と比べれば、大変に高い値です。

しかし、大野らの本に述べられたように日本人のアトピーには網膜剥離が特異的に多いと言うことがあるかもしれません。実際、このページに引用しようとインターネットでアトピーと網膜剥離を掛け合わせて、図を探しても、世界中のページからアトピーに伴う網膜剥離の眼底写真画像は得られませんでした。    

私が見た少数例での経験ですが、このうち両眼性の症例が4例で片眼のみの症例は5例でしたから、両眼性の比率も低くはありません。このうち7例(77.8%)は白内障も合併していましたので、眼底のよく見えない白内症の症例では白内障手術を行う際には網膜剥離が眼底に隠れて合併していないことをよく見極めておくことが重要です。

さらにこのアトピーに伴う網膜剥離は網膜鋸状縁での断裂が多く、網膜格子状変性からおきることが多い通常の網膜剥離とは違った特徴を持っています。アトピーの患者さんは、1)あまりの痒さに眼球を叩く傾向があり、そのために発生する外傷性の剥離が多いからこのような特徴をもつのだ言う説や、2)炎症で鋸状縁が弱っているから剥離が多いのだろうなどの緒説があります。

更に、このようなアトピーに伴う眼合併症が最近増えていると言う話もあります。

また、平成4年に私が仙台の東北大学から東京の医科歯科大学に転勤したたとき、それまでほとんど経験していなかったのに、東京ではたくさんのアトピーに伴う網膜剥離に出会って驚いた記憶があります。その後仙台でも増えたのかもしれませんが、地域や気候による頻度の差がアトピーに伴う網膜剥離にはあるのかもしれません。

今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。
管理頁
清澤眼科医院通信最新ページへ(リンク)します

Categorised in: 未分類