お問い合わせ

03-5677-3930初診受付

ブログ

2005年8月30日

9 眼からうろこの眼瞼痙攣(眼瞼けいれん、瞼の痙攣)

昨日、患者の気持ちにページを作ってもらっている田中明さんから眼からうろこの健康読本に一筆書いてくれとの依頼を受けました。そこで、今準備中の”眼科における不定愁訴と不明愁訴”の一節に手を加えて以下の文を書きました。(管理頁

眼からうろこの眼瞼痙攣:(眼瞼けいれん)

清澤源弘1,2、鈴木幸久1(1、清澤眼科医院、2、東京医科歯科大学眼科)

◎ この病気の大変さは私たち清澤・若倉の本の帯に推薦文を寄せてくださった慶応義塾大学名誉教授で著名な物理学者でもある米沢富美子先生の次の言葉に集約されます。
◎ <電柱にぶつかり、階段を踏み外し、遂に白杖のお世話になって仕事を一年休みました。有名な眼科をまわったけど診断が付かず、苦しむこと2年。正しい病名がわかったときには、それだけで苦しみが半減する思いでした。>
◎ 眼瞼痙攣はその名の通り、眼瞼に痙攣がおこる疾患で、眼瞼周囲の筋肉(眼輪筋)の不随意な収縮がおこる局所ジストニアです。
◎ 「まぶたがピクピクする」と痙攣を思わせる訴えであれば、診断は比較的容易ですが、実際の臨床では、瞬きが多くなることから「眼が乾く」などのドライアイを疑わせる訴えや、眼が開けづらいことから「みえにくくなった」など視力低下を疑わせるものがあります。
◎ 眼輪筋の過剰収縮による周囲組織の弛緩がおこると「眼が重い」などの眼瞼下垂や眼瞼皮膚弛緩の訴えとして来院することも多くみられます。
◎ 逆に、「まぶたがピクピクする」との訴えがあったときドライアイなどの眼瞼の痙攣をおこす病態が鑑別疾患として重要です。

◎ 症例を提示しましょう。50歳、女性。3ヶ月前よりまぶしい感じや眼の乾く感じがあり、近医眼科を受診するも異常なしといわれていました。その後、数件の病院を受診し、それぞれ白内障、ドライアイなどと診断され点眼薬を処方されました。
◎ その後も症状は軽快せず、眼が開けていられないような不快感をがありましたが、“心因性ではないか?”とか、“更年期障害ではないか?”と疑われ、抗不安薬や精神安定のサプリメントまで飲んでみましたが、改善されなかったそうです。
◎ 十数軒目に当院眼科を受診して眼瞼痙攣と診断され、ボツリヌスA毒素注射を受けました。
◎ 症状が軽快し、数ヶ月に一度外来で注射を受け、現在は順調に経過観察をされています。

◎ この疾患の鑑別診断をあげてみましょう。眼瞼痙攣の症状には、眼瞼の痙攣のほか、瞬目増加や開瞼困難があります。

◎ 「まぶたがピクピクする」あるいは「まぶたが痙攣する」といった直接的な表現であれば、眼瞼痙攣を鑑別診断にあげることは容易です。
◎ 瞬目過多の表現として「なんとなく違和感がある」、「ごろごろする」、「まぶしい、目が開けていられない」、「眼が乾く」などと訴えることがあります。
◎ 開瞼困難の表現としては「目が重い、まぶたが下がる」、「いつも眠たい」、「みえにくい、視力が落ちた」「ものにぶつかる、視野が狭くなった」などと訴えることもあります。
◎ これらの訴えでは、患者の訴える言葉を掘り下げて、どういう状況をそのように表現しているのかに注意するのが必要です。
◎ 例えば、患者が「目が乾く」と言う場合、「なぜ目が乾くと感じるのですか」と質問することで「まばたきが多く、まぶたが引っ張られる感じがするから」などの答えから、より具体的な症状を引き出すことができます。
◎ 「視野が狭い気がする」との訴えで、より詳しく問診すると「歩いていてひとにぶつかるから(視野が狭いと感じている)」ということで、実は「目が開けづらく、常に目を閉じてしまうから(人にぶつかる)」という意味での回答であれば、十分な問診が行われることで、正しく鑑別診断がしぼられ、必要な検査の優先順位が変わってきますから、精密な視野の検査などの不要な検査を行って診断がつくまでに無駄な時間を過ごす危険を減らすことができます。

◎ 眼瞼痙攣はいまだに発症機序が特定されていないため、その診断にあたってはまず眼瞼に痙攣を起こす刺激を与える疾患の存在を除外する必要があります。
◎ 眼瞼に痙攣を起こす刺激を与える疾患としては、眼瞼炎、点状表層角結膜炎などの眼瞼・角膜の疾患がまずあげられます。
◎ 眼瞼痙攣患者がその診断がつくまでにすでにドライアイと診断されていることが臨床ではよくありますが、この疾患の患者さんの多くでは涙液の異常や角膜の上皮障害がみられず、患者の訴えから安易にドライアイと診断したのではないかと思われる例も度々あります。
◎ その一方で眼瞼痙攣による瞬目異常により、眼表面の健常性が損なわれ、二次的に角結膜上皮障害を合併していることもあります。

◎ さらに、眼瞼痙攣は中枢神経系の異常が考えられているが、末梢の神経異常によって起きる片側顔面痙攣とも鑑別される必要があります。
◎ 顔面痙攣では片側のみの発症が多いですが、眼瞼痙攣では両眼に症状が出ることが多いです。

◎ このほか、薬剤と眼瞼痙攣の関係も注意が必要であす。抗うつ薬、抗不安薬や向精神薬を処方されている患者で眼瞼痙攣がみられ、これらの薬剤の内服中止により眼瞼痙攣が改善されることがあります。

◎ その一方で眼瞼痙攣の治療としてこれらの薬剤が用いられて、これが効果を上げることがあります。
◎ ですからデパスなどの中枢神経に作用する薬剤の内服歴を確認することは大変重要です。若い患者さんではそのような例が多く感じられます。

◎ 今までの話をまとめて見ましょう。眼瞼痙攣は眼輪筋に自分の意思に従わない収縮がおきる疾患で、ジストニアの一つと考えられています。中年女性に多く、慢性進行性の疾患です。
◎ ポジトロン断層法を用いた私たちと東京都老人総合研究所とでの共同研究からも眼瞼痙攣の原因は大脳基底核を中心とした瞬目行動の中枢神経ネットワークの異常が疑われていますが、まだ詳細は解明されていません。
◎ 治療としては、現在ボトックス局所注射療法が第一選択と考えられます。
◎ ボトックス療法は、神経筋接合部でアセチルコリンの放出が抑制されることによって、神経伝達が阻害され、筋弛緩が起きるのを利用したものです。
◎ その効果の持続は3,4ヶ月程度なので、数ヵ月ごとの治療が必要です。

◎ 私たちは最近、眼科医の立場から患者さんにも理解できる本として“眼がしょぼしょぼしたらー眼瞼痙攣?正しい理解と最新の治療法(清澤源弘、若倉雅登 共著、メディカル・パブリケーションズ2005年6月7日、1200円)を上梓しました。

◎ この小冊子が眼瞼痙攣に悩む皆さんの参考になればと願っています。ブックス楽天
http://books.rakuten.co.jp/RBOOKS/3588522/
にも出ていますが、見つからない際は私の医院5677-3930(Fax5677-3929)までご連絡ください。

○最後まで眼を通してくださりありがとうございました。私のブログの最新ページにリンクします。(そこからほかの眼瞼痙攣の記事に行けます。⇒リンク
ボトックス関連の詳細記事は別項目です。眼瞼痙攣とボトックスに関心のある方はどうぞ。眼瞼痙攣特別号75B⇒リンクから。

今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。
管理頁
清澤眼科医院通信最新ページへ(リンク)します

Categorised in: 未分類