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2021年5月30日

12902:貴方はズーム疲れを感じてはいないか?

眼科医清澤のコメント:たかが同じ診療所内の打ち合わせを、蜜を避けるためとして、各自が別部屋のPCの前に陣取って議論する。一時、こんな風景が随所に見られた。大学の眼科学の講義や、政府機関の新人講習、そして各種学会の理事会や、学会そのものもオンデマンド化がなされるようになった。最初は物珍しさで参加していたが、実に面倒だ。自分の秘書がいちいち操作してくれないと、大切な講義や理事会に穴を開けてしまうのではないかと気になり始め、結局は高齢を言い訳に役職辞退を申し出ることが多くなった。そこで言いたい。ITリテラシー(例えばズームを使いこなせる能力)を社会の各参加者に要求する社会っておかしくないか?

 zoomなどが参加者に視覚的なものを含めた疲労をもたらすという話がウォールストリートジャーナルに出ていた。「まともに育てたければ、かけ流しのテレビに赤ちゃんの子守をさせてはいけない」という話にもつながりそうである。

 積極的でアグレッシブな若手なら、早い時間からビデオ会議に参加して、スクリーン左上のリーダー的な立ち位置を奪い、会議の主導権を狙うなどという作戦も立てられそうな勢いである。

今日はこの記事を短縮して採録してみよう。「zoom会議の視覚生理学的な論考」(discussion on visual physiology accompanied with zoom meeting)といったメジャーな総説も出てきそうな勢いである。私自身は、「老兵は死なず、ただ消え去るのみ https://www.youtube.com/watch?v=dJNspiSF3XY」の心境なのだが。

  ーーー記事抄出ーーー

「ズーム疲れ」なぜ起きる? 科学で読み解く

大写しの顔、こちらを見つめる目、沈黙する参加者、そして反応のわずかなズレ

ズーム疲れの理由はテクノロジーと社会科学、生物学の相互作用にあるPHOTO: GETTY IMAGES

By Betsy Morris2020 年 5 月 29 日 14:20 JST

 タミー・サン氏は典型的なシリコンバレーのIT起業家だが、最近、柄にもなくローテクなツイートを投稿した。「ズーム疲れのせいで固定回線やダイヤル式電話が恋しい」。企ーー新興企業キャロットの創業者で最高経営責任者(CEO)の同氏はこう書き込んだ。

 「ズーム疲れ」は、オンライン会議が増え過ぎたことによる苦痛だけではない。社会科学者によれば、人間はこれまでに本能的で微調整のきくコミュニケーション方法を身につけたが、それを混乱させるテクノロジーを突然一気に採り入れた結果だという。

 「われわれは目の動き1つでも意味を読み取るように進化してきた。人類はそうしたシグナルを意味ある方法で生み出すことによって生き延びてきた」。スタンフォード大学のバーチャル・ヒューマン・インタラクション研究所の所長ジェレミー・ベイレンソン教授はこう話す。「ズームは人を圧迫するほどの手がかりを与えるが、それらはシンクロ(同調)しない。それが生理学的に大きな打撃となる」

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)以前、ズームは主に企業のオンラインセミナー開催などに使われ、一般的にはほぼ無名だった。今や友人や家族をつなぎ、企業の業務を維持するのに欠かせない手段だ競合するシステムをしのぐ人気を獲得した理由は、ビデオ会議ツールを簡便かつ直感的に使う目的に特化したことだ。

 ではズームとの「愛憎関係」がまん延するのはなぜか? ビデオ会議でいら立つ原因の多くは、対面ほど完ぺきではないという事実に起因するが、それはズームに限ったことではない。

 ベイレンソン教授のチームはビデオ会議が日常化する状況がユーザーに与える影響について大規模な調査を実施した。ズーム疲れの根底にある要因については過去のメディアや人間の行動に関する研究が参考になる。

ズームで会議を行うベイレンソン教授。黄色で囲った3Dカメラは非言語行動を捉えているPHOTO: PHOTO ILLUSTRATION BY STANFORD VIRTUAL HUMAN INTERACTION LAB
3Dカメラが作成したズーム会議参加者の深度マップPHOTO: STANFORD VIRTUAL HUMAN INTERACTION LAB

シンクロしたい衝動

 コミュニケーションは人々の間の会話や身ぶり、動き、タイミングの繊細な相互作用で、科学者はこれをシンクロニー(同調効果)と呼ぶ。この複雑な相互作用は新生児にも見られる。生後1日目から赤ちゃんの動きは世話をする人の話し言葉に同調する

 インディアナ大学でメディア芸術・科学の博士号を最近取得したジンジン・ハン氏の未発表論文によると、対面コミュニケーションの同調効果は、理想的な環境であればビデオでも可能となる。だが同氏もズームが疲弊を招くことに注目し、その理由は人間にはシンクロニーを達成したい衝動があり、意識的に努力するからではないかと考える。これは同氏の次の研究テーマだ。

 リアルタイムで非言語のフィードバックが少なければ、ビデオの向こう側にいる人々が自分の話を理解しているのかどうか判別するのは難しい。「質問した後にしばらく沈黙があると、無人の空間に話しかけたような気分になる」。非営利団体オンス・オブ・プリベンション基金の知識共有責任者キーリー・ソロクティ氏はこう話す。

画面に映る自分

 もう1つのストレスの原因は、ミラー効果だと研究チームは気づいた。つまり被験者に向けられたビデオカメラによって、自分を他人から見えているように見ることになるのだ。「鏡をのぞき込むと、あなた自身の客観的な姿が目に入る」。カリフォルニア大学サンタバーバラ校のエイミー・ゴンザレス助教はこう指摘する。「私の鼻はやや大きいようだ。ひょっとするとしわ取りクリームが必要かもしれない」。ズーム社はミラー画像のオン・オフが可能だと説明している。

 さまざまなサイズで画面に現れる頭部画像は参加者を当惑させる。話し手の顔が大きく映るモードもある。特に大きすぎたり近すぎたりする画像に人は敏感になりやすい。スタンフォード大の研究チームが行った生理学的反応に関する初期段階の調査で、画面が大きいほど(56インチと13インチを比較)、「闘争・逃走」(危険な状況において戦うか逃げるかを二者択一する)反応に関係する交感神経系が活性化すると判明した。より距離が近く、脅威が差し迫ったように感じることが一因と思われる。

 社会的手がかりとなるアイコンタクトも相手を動揺させる場合がある。ある初期段階の調査で、被験者に2フィート(60センチ)~32フィートの距離で互いに見つめ合ってもらい、脳波を測定した。脳の電気的活動は、厳戒態勢や闘争・逃走反応などさまざまな生理学的状態を引き起こす生化学的変化を反映する。この調査では2フィートの距離で相手の目を直接見つめた場合、被験者の脳の活動が最大限に高まることが分かった。

職場の序列に変化も

 ビデオの場合、コミュニケーションの生化学的働きが異なる可能性が高い。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のコラム執筆者である心理学者スーザン・ピンカー氏によれば、対面での会話では、喜びの感情に関係するドーパミンや愛情ホルモンと呼ばれるオキシトシンなどの神経伝達物質が放出されることが分かっている。 メールやソーシャルメディア(SNS)、電話を介したコミュニケーションにおける生化学反応の研究結果から「対面接触の場合、同じ努力でより多くの生化学的成果が得られる」ことが分かったとピンカー氏は話す。社会的シグナルがより多く発せられるためだという。

 一方、ズームが会議のテーブルに取って代わると、職場の序列が乱れる。「ズームでは気づかぬうちにあなたが会議テーブルの権力者の席に着く可能性がある」。バージニア工科大学でヒューマン・センタード・デザイン・プログラムを率いるスティーブ・ハリソン准教授はこう指摘する。「自分の場所をコントロールするすべはない」

 画面の左上の席を占めるのは誰なのか。ズームによるとグリッドには先着順で表示されるという。ハリソン准教授は在宅勤務を続ける企業が増えれば、この事実が職場の力関係を大きく変える可能性があるとの見方を示す。「このメディアを操作する能力がある者は、リーダーシップの概念をゆがめるのではないか?」(抄出終了)

Categorised in: 社会・経済