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2020年10月7日

12331:「トゥキディデスの罠」アメリカは正気に戻って中国との戦争を回避できるか

2020年10月07日(水)16時35分

清澤のコメント:「トゥキディデスの罠」というのは誠に魅惑的な言い回しです。新興国が覇権国家に追いつきそうになると、両者の戦争確率は高いという意味のようです。トランプ大統領が考える中国共産党政権の転覆追い落としはもう任期中には間に合いそうにありません。米中の第5世代通信機器技術開発競争では、確かにアメリカの完敗のようです。当たり前だろうといわれそうですが、世界は米国と中国の武力衝突を本当に避けたいと思っているのでしょうか?。

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ーーーー日豪印3カ国の本心は11月3日の米大統領選の結果待ちだ。民主党候補のジョー・バイデン前副大統領が大方の予想通り当選すればアメリカの対中外交は「新冷戦」突入を回避しながら、より現実的なアプローチに舵を切ることになる。対中政策も練り直さなければならない。----

歴史が教える「トゥキディデスの罠」とは

米政治学者でハーバード大学ケネディ行政大学院の初代院長であるグレアム・アリソン教授は著書『米中戦争前夜 新旧大国を衝突させる歴史の法則と回避のシナリオ』の中で過去500年を振り返り、新興国が覇権国を脅かした例が16件あり、12件で戦争が起きたと指摘している。

新興国と覇権国の力が逆転しようとする時、2国間の緊張は高まり、戦争が勃発する恐れがある。古代ギリシャの歴史家トゥキディデスが「アテネの台頭とスパルタの不安が戦争を不可避にした」と説いたことからアリソン氏はこのリスクを「トゥキディデスの罠」と名付けた。

戦争が回避されたのは(1)15世紀末、世界帝国と貿易で争った覇権国ポルトガルと新興国スペイン(2)20世紀初めのイギリスとアメリカ(3)1940~80年代のアメリカとソ連(4)1990年代~現在の英仏とドイツ――の四例だけという。

戦争が回避された要因をアリソン氏はこう分析する。
(1)権威あるローマ教皇アレクサンデル6世が「教皇子午線」を引き、ポルトガルとスペインの間で西半球を分割することを調停する。
(2)当時の英首相ソールズベリー侯爵が賢明にもアメリカとの力の逆転を受け入れて譲歩する。
・イギリスは南北戦争(1861~65年)に予防的介入してアメリカのパワーを管理可能なレベルに縮小するという最大のチャンスを逃す。民主主義国では予防的介入は見送られる傾向がある。
・イギリスはアメリカと言語も政治文化も同じという文化的な共通点に救いを見出した。
(3)核の報復能力を持つ国への核攻撃を考える指導者は無数の自国民を死に追いやる恐れがある。核戦争は勝利できない。
・核保有国同士の戦争は正当化できない。
(4)国家より大きなEUにドイツを組み込む。

5G競争とコロナ対策で惨敗したアメリカに勝機はあるか

アリソン氏は同著の中で「新旧逆転に対応する」「中国を弱体化させる」「長期的な平和を交渉する」「米中関係を定義し直す」という4つのオプションを示している。しかし現実的には軍事力の空白が生じれば中国は容赦なくその空白を埋めてくる。

国際コンサルティングファーム、プライスウォーターハウスクーパースの予測では2050年、購買力で見た中国の国内総生産(GDP)は世界全体の20%、インドは15%。アメリカ、EUはそれぞれ12%と9%に過ぎない。中国の戦略は孫子の兵法により「戦わずして勝つ」ことだ。

第5世代移動通信システム(5G)の開発・製造競争でアメリカは中国に圧倒的な差をつけられた。コロナ対策でも中国はウイルスへの知識が皆無に近かったにもかかわらず人口100万人当たりの死者を3人に抑え、カオスに陥ったアメリカ(同650人)と残酷なコントラストをなした。

アメリカは国内格差の解消に取り組み、政治システムの破綻を回避しなければならない。開発・製造力を取り戻し、イノベーションの力によって成長を生み出すことができるのか。そのためには、まずアメリカが「狂気」から覚め、「正気」を取り戻す必要がある。

Categorised in: 社会・経済