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2020年7月3日

12045:COVID‐19蔓延をめぐる私の驚愕と発見:若倉雅登先生記事紹介

清澤のコメント:眼科ケア(眼科医療重視者向け月間雑誌)7月号に掲載された若倉先生の意見です:詳しくは院長先生に頼んで雑誌を購入してもらってお読みください。私は、一クラスの人数を20人にするというご意見には教員の給与等の立場から安易には賛成いたしかねます。しかし、このまま国債を増発すればハイパーインフレは必至です。かといって企業の持続のために国が保証しての貸金を出さなければ、病院と開業を合わせたすべての医療機関は立ち行かないという大きな矛盾も抱えています。確かにそういう側面もあるかもしれませんけれど、「不必要な通院が多い(その証拠に、不要不急の外出抑制で通院患者は減少した)医療制度 」と言ってしまうのは聊か安易かもしれないと思います。今回のことで視野欠損を自覚しにくい緑内障が急に悪化する患者さんは多いのではないかと私は心配しています。

ーーー記事の引用ですーーー

私の提言、苦言、放言

井上眼科病院名誉院長 若倉雅登

第169回 COVID‐19蔓延をめぐる私の驚愕と発見

新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)の蔓延をめぐり、高齢眼科医である私の驚愕と発見を語ることにしよう。

2020年2月初旬に中国武漢市の三十三歳の男性眼科医が、三月初旬には同じ病院の別の眼科医がCOVID ‐19で死亡したことは前々回(本誌22巻5号)のコラムで触れた。このことで、対岸の火事と思っていた私の意識が一変した。武漢市の眼科医は緑内障の女性を治療したようだ。レーザーを使用した治療か、手術室で行う緑内障手術なのか詳細は不明だが、いずれにせよ治療中、患者との距離は近いはずだ。その後、緑内障の女性は新型コロナウイルスによる肺炎になったという。

そうこうするうちに、日本眼科医会から、頻度は1〜3%と低いが結膜炎もあり得るとの情報が流され、もう眼科医だからとのんびりはしていられなくなった。文献を読むと、結膜炎の症状がないか軽微でも、結膜や涙からウイルスが検出される場合もあるらしい。勤務先の眼科病院では感冒症状に関する問診や体温計測を励行し、スリツトランプには遮閉板を設置、医師はマスクや防護眼鏡、フエイスシールドなどを装用することになった。

不要不急の外出を避けることが国や自治体から推奨されたこともあって、予約患者のキヤンセル、延期、転院希望が相次ぎ、五割近く患者数が減る日もある。当院では2006年に外来専用のクリニックを設置し、診察室を増やし、待合室スペースも広くなった。にもかかわらず、時間帯によっては診察や検査待ちの患者や医療従事者の、人と人の接触や密着は完全には避けられない。

日本は島国で経済発展も後発だった上、日本人は小柄だからか、「ウサギ小屋」と椰楡されるほど居住空間、生活空間は狭い。病院、学校、会社などのスペースも小型にできており、感染といつ事態では誠に不利だ。今、原稿を書いている時点では学校や幼稚園は休業中だが、これが解除になったとき、私は孫たちのことが心配だ。学校の教室での児童生徒間の距離が密だからだ。35年前にスコツトランドで見た小学校の一教室の人数は十人余りだった。2020年現在の日本では一クラスの生徒数は25〜35人と設定しているが、多様性や個性を尊重すべき時代、 一人一人の児童生徒の動きや考えを把握するのに一クラス二十人でも多過ぎる。

全国に緊急事態宣言が発出された。不要不急の外出は自粛、日本の経済活動全般が抑制された。災害国日本では、感染症以外にも地震、台風など、予知できない緊急事態がまた起こり得るのは自明だ。感染症を含めた自然災害時のための基本的物資の備蓄や、緊急用の予算は十分に用意されていたとは、今回の国の対応を見ても思えない。急に対応策を考えても、不完全だ。政治に素人の筆者がいうのもなんだが、国民に不要不急の外出を自粛させながら、公共事業や自衛隊装備などの不要不急の支出を延期して、それを回難といえる感染症蔓延の手当てにすべて回すというような抜本的な施策は取らず、いつ返せるのかわからない国債を乱発するばかりの政治である。

ポストコロナの日本は単に今までどおりの経済のV字回復を目指せばよいのだろうか。国民一人一人が幸福に生涯を全うするための根幹である福祉制度はやたらに複雑化し、制限だらけで利用しにくい。また、神経眼科的というか、非眼球性の視覚障害者を認めようとしない制度の硬直化も厄介な問題だった。不必要な通院が多い(その証拠に、不要不急の外出抑制で通院患者は減少した)医療制度も、オンライン診療をもっと積極的に解禁するなど、この際、抜本的見直しが必要だ。

このようにCOVlD‐ 19のおかげで見えてきたものもある。終息にはまだ相当時間がかかるだろうから、この際、戦後日本が経済成長のために犠牲にしてきた物どもを、国民の安全と健康を第一にしてじつくり考え直してみてはどうだろう。数字上の経済成長だけを目指してV字回復するのでなく、身の丈にあつたサイズでよいから、質の高いポストコロナの日本を再構築してもらいたいと思う。

Categorised in: 社会・経済