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2020年6月17日

11994:政府・中銀が信用リスクを肩代わりする、異例の政策の「功罪」:記事紹介

清澤のコメント:「政府・中銀が信用リスクを肩代わりする」という今回の政策には大きなモラルハザードが伴います。著者はその点は突きません。ソロスのような例外はあっても、投資家は国の政策には歯向かうなというのが鉄則と聞いています。この記事の要点を採録しました。

  --記事の要点--

https://diamond.jp/articles/-/240338  エコノミスト 熊野英生氏の記事です

日銀、企業の資金繰り支援枠を拡大、75兆円から110兆円規模に

 日本銀行は政府と一体になっての企業の資金繰り支援の枠組みを拡大し、コロナ対応の大規模な金融緩和を維持することを決めた。米国をはじめ主要国では政府と中央銀行が一体となって、企業向け貸し出しを増やし、資金繰りを支援する政策が展開されている。政府や中央銀行が信用リスクを肩代わりする異例の政策で、4月以降、株価は急回復してきた。

急回復後、再び急落の株価:実体経済との乖離(かいり)が大きすぎた

 このところの株価の急落は、何を意味するのか。米国では大胆な政策が効いて、ダウンサイド・リスクを封じている。財政出動が、企業の破綻リスクを丸抱えしている側面が色濃く、そのことが株価の底割れを回避できるという安心感を醸成した。しかし株式市場の期待は、冷や水を浴びせられた形だ。日本の株価も実体経済と大きく乖離している。

米政府・FRB一体で貸出支援や社債購入

 3月中旬に米株価が切り返した理由は、経済政策の総動員がある。

 トランプ大統領が緊急事態宣言を出したのは、3月12日のことだ。FRB(米連邦準備制度理事会)は、3月15日にゼロ金利の体制に移行する。その後、トランプ大統領は、1人1200ドルの現金給付を盛り込んだ経済対策を表明、それが議会を通過した。目を引くのは、給与保護プログラム(PPP)という貸出支援策だ。FRBは、呼応するようにメインストリート貸出支援プログラム(MSLP)を創設する。中小企業の社債の購入や金融機関の中小企業向け融資(貸出債権)をFRBが買い取る仕組みだ。民間銀行が負う信用リスクは、FRBに移転され、民間銀行は、次々に貸し出しに応じることができる。

 そして米財務省は特別目的会社に4250億ドルを出資して企業が融資を返済できなかった際の損失を穴埋めする手当てをした。米政府とFRBは株価を大きくリバウンドさせることを狙った。

損失は財政資金で引き受け日本も国債発行90兆円超

 米国の政策をヘリコプター・マネーとか、財政ファイナンスによって株価を押し上げているのだという人は多い。コロナショックの場合、経済活動が止まっただけだから、投資家は暗黙の了解として、感染が収束し経済活動が再開されれば景気が良くなり、国債残高を税収増加によって減らせると漠然と予想をしている。こうした政策の枠組みは、米国だけでなく日本も同じ。財政負担償還の行き先が曖昧で、税収増で国債残高が減らせるかどうかもわからないまま日銀のファイナンスに依存する度合いは強くなっている。国債発行額は当初の新規発行額と併せると2020年度90.2兆円となっている。国民1人10万円の給付金も、日銀が国債購入した資金が原資になっているし、持続化給付金や家賃支援給付金、学生支援給付金も同様。

支援で伸びる銀行貸出、日銀へのバックアップも選択肢

 日本でも、企業に対する積極的な資金繰り支援によって、銀行などの貸出残高は伸びている。売り上げの激減した事業者らに金融機関が実質無利子で融資をする際の利子補給や信用保証協会の信用保証料の肩代わり、日本政策金融公庫などへの出資金である。資金繰り支援は、金融機関が企業などの信用リスクを吸収するためのコスト負担なのだ。日本の資金繰り支援は、米国の財政資金で信用リスクを吸収する政策とよく似ている。

 それと、米国では、FRBのリスクテークを政府が出資金で肩代わりしているのに対して、日本では中央銀行ではなく、政府系金融機関の信用リスクを肩代わりしている違いもある。

 日銀でも中堅・中小企業や個人事業主に対する貸し出しを維持する資金供給オペに加えて、上記の「無利子無担保」融資を行った民間金融機関に対して無利子融資をするバックアップの新制度を始めている。

コロナ後に懸念残る過剰供給能力や不良債権化

 企業が必要とする資金を貸出支援によって大量供給すると、赤字企業であっても延命できる。そうした企業救済をすると、危機が去ったときに、過剰な供給能力が温存されてしまう。そうした過剰供給能力は、次第に不稼働資産となり不良債権化していく。信用リスクを一時的に政府が肩代わりすることはできても、いずれ処理しなくてはいけない貸出債権になっていくことを示している。

 しばらくは株価上昇が続き、大きく調整するということが繰り返されるだろう。

(第一生命経済研究所首席エコノミスト 熊野英生)

Categorised in: 社会・経済