お問い合わせ

03-5677-3930WEB

ブログ

2018年4月30日

9813:日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実 吉田 裕 (著)::紹介

maxresdefault

 

まだ、そう古い本ではない。アマゾンの読後印象記(https://www.amazon.co.jp/日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実-中公新書-吉田-裕/dp/4121024656)もまだ次々に記載されている。

 

著者は緒言で「戦後歴史学の原点は、悲惨な敗北に終わった無謀な戦争への反省だった。戦後の歴史研究を担った第一世代の研究者が戦争の直接体験者であったために、平和意識がひときは強い反面で、軍事史研究を忌避する傾向も根強かった。その結果、軍事史研究は旧陸海軍幕僚将校グループによる「占有物」だった。 この様な状況に変化が現れるのは1990年代に入ってからである。」という。そして、本書では、歴史学の立場から「戦史」を主題化してみたいという。

 

アマゾンによれば、「310万人に及ぶ犠牲者を出した先の大戦。実はその9割が1944年以降と推算される。本書は「兵士の目線・立ち位置」から、特に敗色濃厚になった時期以降のアジア・太平洋戦争の実態を追う。異常に高率の餓死、30万人を超えた海没死、戦場での自殺・「処置」、特攻、劣悪化していく補充兵、靴に鮫皮まで使用した物資欠乏……。勇猛と語られる日本兵たちが、特異な軍事思想の下、凄惨な体験をせざるを得なかった現実を描く。 」という訳で、明治以来勝ち戦しか知らなかった日本軍が、プライドと責任・面子に押されて、負け方を知らぬままに泥沼に引き込まれ、その結果米軍における10万人程度の人的被害に対し310万という多くの被害を出すに至った経緯を明らかにしている。

機械化されていた米軍に対して軍馬と人力で立ち向かった日本軍の劣位性と、その結果を直視する必要がある。そして、その間、現地においては民間人を含めて総計2000万ともいわれる人命の喪失を誘引・結果したことも忘れてはなるまい。

慰安婦問題は小さな問題ではないが、むしろこの本が問題とする1944年以降の事態に対する首脳部および現地部隊における日本(軍)の行動の稚拙さが、披占領地域における日本への反感を生んだのではないかとも読める。

では此処では医師として、その「第2章 身体から見た戦争 絶望的抗戦期の実態」:の要点を抜き出してみよう。

1、兵士の体格、体力の低下:1930年の日本軍人25万人が1945年には719万人に急増し、それに伴って現役徴収率が増大した。その結果体格知能他の劣る兵士が召集され「昔日の皇軍の面影はさらにない」状況となった。知的障害者はその中で苦悩し、自殺や逃亡者を出した。結核も兵の疲弊に伴い拡大した。歯科の治療は殆ど存在しなかった。

2、遅れる軍の対応:中国でも食料などの給養が悪化し、軍は略奪の手引きを配布するありさまだった。結核の温床として私的制裁と古参兵の存在がある。レントゲン検査は軍関係者に偽の「肺浸潤」の診断を横行させ「両刃の剣」であった。

3、病む兵の心 恐怖・疲労・罪悪感:入隊前の環境として帰還兵の無責任な発言や、配属将校からの教育も問題で有った。入隊後の「教育としての刺突」は犯罪であるばかりでなく新兵に衝撃を与えたという。「戦争神経症」も重大で、「被害脅迫妄想、幻視幻聴、錯視錯聴、注意の鈍麻、錯乱、背寧な恐怖、極度の不安、多弁、多食拒食、自傷」などを来した。1945年の還送戦病患者の22%が精神疾患であった。航空部隊などでは覚醒剤中毒に顧慮せず覚せい剤ヒロポン(メタアンフェタミン)も使用された。「護衛にあたっては、一番疲れが出てくるのは、視力の減退で有り、両眼が充血し、癒すのにも時間がかかった。(パイロット)」という。陸軍使った「戦力増強剤」もヒロポンらしい。

4、被服装備の劣化:制服は厚い絨製から綿製に変わり、急速に粗悪化した。靴の素材も劣化した。無鉄軍靴。孟宗竹による代用飯盒。(以下略)

Categorised in: 社会・経済