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2018年1月10日

9505:明治維新という幻想 暴虐の限りを尽くした新政府軍の実像 森田健司著;印象録

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無題明治維新という幻想 暴虐の限りを尽くした新政府軍の実像 森田健司
(歴史新書)

今年の大河ドラマの主人公がが西郷隆盛であるのに、此の所西郷嫌いの本の出版が続いているようです。この本もその一つです。

1月10日に至って、漸くこの本も終わりまで読み終わることが出来ましたので、先日の記事にもう少し書き加えて、この本に対する印象記と致しましょう。
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 勝海舟の眼から見ると「明治」という時代を率いていた政治家たちは、知力も胆力も十分ではなかった。それも、無理はない。幕末に生きていた傑出した人物の相当数は、まったく無意味な戊辰戦争という「私闘」によって落命したからである。加えて、彼が恐れた横井小楠も明治2年に旧攘夷派によって暗殺され、西郷も明治10年、西南戦争で自刃して果てた。残ったのは権力を欲する政治屋ばかりであった。(127ページ)

 幕末に、新政府軍に対して東北諸藩が抵抗したのは薩長が私利を求めた卑劣な勢力であったためである。各藩が義を重んずれば、佐幕につかざるを得なかった、というのがこの本の大きな主張であった。江戸の市民も、彰義隊が上野の山で負け去るまで、幕府軍が盛り返すことを期待していたという。つまり江戸の庶民は幕府の治世に不満を持ってはいなかったのだという。明治政府は、四民平等で民主的な新しい政権が出来たと、明治の初めから国民に大いなるプロパガンダを行い、それは教育制度の集権化とも相俟って一定程度の成功を収めていた。だから、現在の日本に生きる私たちも、『「旧き悪しき」幕藩体制と「正しい」新政府』という大スローガンを信じ込まされるに至った、と言う。(172ページ)

 『戦争によって政権を得るという現象は、古今東西、頻繁に確認のできるものである。しかし、戊辰戦争が異様なのは、話し合いによって解決しようとしていた旧幕府軍を、ありとあらゆる手を尽くして、戦争に誘い出したことだろう。そして、まさに「見せしめ」として、会津藩を血祭りにあげたことにある。』

 そして、巻末に言う、『本書は、「幕末の三舟」などと同じく、榎本武揚や、徳川慶喜も高く評価している。彼らは正しい意味で「指導者層に属する人物」だった。それに対して、新政府の要人たちの多くは知識や語学力はあっても、品性や美学が甚だしく欠如していた。その代表が伊藤博文だが、木戸孝允も大久保利通も、道徳的に高い評価を下すことは困難である。彼らは皆、政治の手腕は有ったとしても、哲学がなかった。西郷隆盛に至っては、悪い意味で「一世代前の人物」だろう。』

 そのあたりが、今年のNHK大河ドラマが超低空飛行で離陸することになった遠因なのかもしれない、と思いつつ、私はこの書を閉じた。
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Categorised in: 社会・経済