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2017年10月8日

9256:人の思考を目指して開発が進む脳型コンピューター:記事紹介

清澤のコメント:脳型コンピュータが話題になっています。自ら問題点を見つけてその問題を解決する方法を考案するという能力が人間の脳に存在することは間違いないのですが、現在のコンピュータは情報処理の速さと膨大な計算をこなすことが出来るという別の側面もありそうです。脳型コンピュータ開発を解説した記事「特集:人の思考を目指して開発が進む脳型コンピューター 新しいコンピューターの姿を探ってみた。」(http://cms.blog.livedoor.com/cms/article/add?blog_id=1116335)(2017/03/17)がありましたので、その概要を抄出してみます。
・脳の働きを再現し「認識」などの高度情報処理をこなす
神経細胞が大量に集まった脳電子回路で仕組みを再現できるか
脳型コンピューター実現への複数のアプローチ
人間の脳が「得意」な情報処理を実用化へ低消費電力の汎用的なコンピューターへの夢も広がる
実用化のタイミングはまだ不明、技術進歩がその日を引き寄せる

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SFの世界では、コンピューターが自ら人を見分け、状況を判断して働いている。現実の世界でも、電子回路で人間の脳をつくろうという「脳型コンピューター」の研究開発が進んでいる。脳型コンピューターの発展の状況と、新しいコンピューターの姿。

脳の働きを再現し「認識」などの高度情報処理をこなす

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 コンピューターは、人間の脳をはるかに超える大量の演算を、高速に処理できる性能を備えている。しかし、実際の脳が行うような認識処理の方法は苦手だ。
現在のコンピューターは、メモリー上に蓄えられたプログラムやデータをCPUが読み込み順番に処理をする。逐次処理をするため大量のデータをリアルタイムで処理するのは困難といった問題がある。そこで、従来型のコンピューターと異なる仕組みのコンピューターが研究されている。その中でも近年注目されているのが、脳の仕組みを応用した脳型コンピューター。

神経細胞が大量に集まった脳電子回路で仕組みを再現できるか

人間の脳は、十数cmほどの大きさがあり、その中には1000億以上の神経細胞が含まれている。

神経細胞同士は、軸索と樹状突起が「シナプス」というコネクターでつながる。 脳も電気信号で情報を処理しているならば、電子回路で脳の機能を再現できないか。これが脳型コンピューターのアプローチだ。

代表的な例が、神経細胞同士が電気信号を伝え合う仕組みを電子回路で模した「ニューラルネット」である。ニューラルネットの基本的な考え方として「階層型ニューラルネット」がある。これは、人工の神経細胞を「入力層」「中間層」「出力層」という多段階層で構成する(図)。

ニューラルネット自体の考えは古くからあったが、どうやって「適切な重みづけ」をするかが長年の課題だった。

その課題を解決したのが深層学習(ディープラーニング)という手法だ。深層学習とは、多くの入力を与えることで、コンピューターが自動的に学習するというものだ。

脳型コンピューター実現への複数のアプローチ

脳型コンピューター実現のアプローチは、大きく2通りに分かれる。1つは「脳シミュレーション」、もう1つは「生物にヒントを得た認知アーキテクチャー」だ。 脳シミュレーションは、実際の脳の動作を厳密にシミュレーションすることで、脳のようなシステムを作ることを目的としている。神経細胞の働きを綿密に模倣し、それらを脳と同じように階層化し、コンピューターをつくるというものだ。米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)の「SyNAPSE」プロジェクトが代表的なもので、米IBMやスタンフォード大学、コーネル大学などが参加している。

SyNAPSEでは、神経細胞をつなぐ「シナプス」の機能を模倣しながら微細化を進めるシミュレーションを行っている。

米I B Mは2 0 1 4年8月、SyNAPSE専用のハードウエアを開発し、発表した。従来のようにメモリーの情報をCPUが処理するのではなく、コア同士の電気信号のやり取りによって情報を処理する。

人間の脳が行っているニューロンの結合と同じ原理で動いている。 このチップを用いることで、100万ニューロン、2億5600万シナプスを実時間でシミュレーションできる。

新しく開発したチップでは、400×200ピクセル、30フレーム/秒の動画から、リアルタイムに物体を認識できることが確認できた。

課題も:人間の脳には1000億を超えるニューロンがある。2014年時点の100万ニューロンのハードウエアとは規模に大きな開きがある。また、リアルタイムで認識ができるコンピューターと、自分で学習しながら成長するコンピューターとの融合は、まだ実現できていない。

もう1つのアプローチである「生物にヒントを得た認知アーキテクチャ」は、マクロな視点から脳を見る。人間の知的活動を「知覚」「判断」「行動」などにモデル化し、それらをソフトウエアで再現する試みだ。

人間の知的活動を脳の機能ごとにモジュール化し、それを統合して動かすことで知的活動を実現するコンピューターをつくる。 いずれのアプローチの脳型コンピューターも、従来型のコンピューターとは異なり、認識など、脳が得意とする分野での実用化を目指

人間の脳が「得意」な情報処理を実用化へ低消費電力の汎用的なコンピューターへの夢も広がる

なぜ脳型コンピューターが注目されているのか、どのような発展が期待されているのか。人間の知的活動と人工知能の関係を研究する国立情報学研究所(NII)情報学プリンシプル研究系 准教授の市瀬龍太郎氏に尋ねた。

市瀬普通に「コンピューター」と呼んでいるものの多くは、「ノイマン型コンピューター」というものです。メモリーに取り込んだプログラムをCPUで実行して情報処理を行うもの。プログラムを変えるだけでさまざまな処理ができますが、一方で、プログラムの読み込み速度が性能を左右しますし、プログラムに書きにくい処理は実行が難しいのです。脳型コンピューターは、「非ノイマン型コンピューター」の一種で、脳の仕組みを模倣して処理を行います。人間の脳には1000億以上のニューロンがあり、おのおののニューロンは、シナプスにより1万~10万のニューロンとつながります。視覚や聴覚などの入力によってシナプスに電気信号が流れ、0.01秒程度で電気信号をやりとりします。そして約0.1秒後に、何を見たり聞いたりしたのかということを認識します。人間の脳は少ないエネルギー消費量でこの処理を実行しています。脳型コンピューターは、人間の脳の仕組みを模倣することで、従来型に比べ、ごくわずかな電力で高速な処理が可能になるのではと期待されています。

深層学習が脳型コンピューター発展に火を着けた

市瀬:近年になって脳型コンピューターが注目されるようになった理由は、大きく2つ挙げられます。1つは深層学習による機械学習手法の確立です。人間の子どもがモノや文字を見て学習していくように、コンピューターが自分で学習する。

もう1つは脳に関する知見が蓄えられてきていることでしょう

市瀬脳型コンピューターは、全てのコンピューターを代替するものではないと考えています。Webサーバーやデータベースは、既存のノイマン型コンピューターが得意な領域です。一方で物体を認識するような処理を人間は瞬時にこなしますが、従来型のコンピューターではさまざまなパターンと照合するなど計算量は非常に多く、処理時間も消費電力も多く必要とします。認識関連の分野から脳型コンピューターの利用が始まるだろう。

将来的には「脳」と同様に汎用的な処理を担う可能性も

市瀬:脳型コンピューターがまだ得意でないジャンルもある。思考、物語、常識、組み合わせといったもの。知的活動が全て脳型コンピューターですぐに実用化できるかというと、そう簡単ではない。

脳型コンピューターについても、2014年8月に米IBMが新しいチップを作成するなど、積極的に研究に取り組んでいる。人間の脳は、汎用的な情報処理を少ないエネルギー消費で実現しています。

市瀬:例えば、大脳新皮質の基本単位である「新皮質カラム」を全てシミュレーションするという取り組みがある。

神経細胞の微細な挙動にも目が向けられています。実際の脳のシナプスが情報を伝えるときに使う「イオンチャネル」を、チップ上で再現するという研究も進められている。スタンフォード大学では、イオンチャネルの働きを組み込んだ「Neurogrid」というチップの研究を進め、2014年5月には新しいチップの試作に成功している。

脳科学の分野では、ニューロンの発火する「スパイク」のタイミングと、人と脳における学習との間に関係があるのではないかという議論もある。脳科学との連携でも、大きな成果が得られる可能性があります。

実用化のタイミングはまだ不明、技術進歩がその日を引き寄せる

市瀬:ただし、今の時点で「何年後に脳型コンピューターが実用化する」と予測するのはまだ難しいのが実情です。脳型コンピューターや人工知能に関する研究では、この10年ほどで大きな進展があった。
2007年にマウスほどの脳をスーパーコンピューターでシミュレーションしたときは、実際の脳の動きに比べて10倍の時間がかかっていたが、2014年にはリアルタイムで画像を認識するハードウエアができているほど。

脳型コンピューターは夢物語の中のものではなくて、想像しているよりも速く、私たちの役に立ってくれるかもしれない。


Categorised in: 社会・経済